[2012年文献] 心電図の時計回り回転は心血管疾患死亡リスクと正の関連,反時計回り回転は負の関連

心臓の長軸回りの回転(時計回り回転,反時計回り回転)と心血管疾患死亡リスクとの関連について,一般住民を対象とした追跡研究による検討を行った。その結果,男性,および男女をあわせた解析において,他の心血管危険因子および心電図異常などとは独立に,時計回り回転は心血管疾患死亡リスクと有意な正の関連,反時計回り回転は負の関連を示した。発見から100年以上にわたって大きな関心の対象とならなかった時計回り回転および反時計回り回転であるが,これらが心血管疾患死亡リスクにおよぼす影響のメカニズムを検討する必要がある。

Nakamura Y, et al. Prognostic Values of Clockwise and Counter-Clockwise Rotation for Cardiovascular Mortality in Japanese (24 Year Follow-up of NIPPON DATA80). Circulation. 2012; 125: 1226-1233. pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうちベースライン時のデータに不備がある124人,冠動脈疾患または脳卒中既往のある164人,追跡が不可能だった1105人,異常な心電図所見(中等度~重度の異常Q波,3度房室ブロック,Wolff-Parkinson-White症候群,完全左脚ブロック)のある86人を除いた9067人(男性3958人,女性5109人)を,2004年まで24年間追跡した(191484人・年)。

心電図所見による心臓長軸回りの回転の定義は以下のとおり。
・時計回り回転(clockwise rotation): V3より右に移行帯があるもの
・反時計回り回転(counterclockwise rotation): V4より左に移行帯があるもの
・正常回転(normal rotation): V3でS波高>R波高かつV4でS波高<R波高のもの
結 果
◇ 対象背景
男性では,56.0%が正常回転,8.2%が時計回り回転,35.8%が反時計回り回転であった。
時計回り回転の人では,正常回転にくらべて年齢,冠動脈疾患死亡率,心不全死亡率,心血管疾患死亡率,全死亡率が高く,BMIが低かった。
反時計回り回転の人では,正常回転にくらべてBMIが高く,喫煙率,心血管疾患死亡率,全死亡率が低かった。

女性では,48.4%が正常回転,5.8%が時計回り回転,45.8%が反時計回り回転であった。
時計回り回転の人では,正常回転にくらべて年齢,総コレステロール値,血糖値,高血圧の割合,心不全死亡率,心血管疾患死亡率,全死亡率が高かった。
反時計回り回転の人では,正常回転にくらべてBMIが高く,年齢,高血圧の割合,脳卒中死亡率,心血管疾患死亡率,全死亡率が低かった。

◇ 心臓長軸回りの回転とその他の心電図所見
男性では,時計回り回転の人で,正常回転にくらべてQ波の軽度異常,左軸偏位,軽度の右軸偏位,陰性T波,心房細動の割合が高く,R波増高の割合が低かった。反時計回り回転の人で,正常回転にくらべてQ波の軽度異常,軽度の右軸偏位,ST下降,脚ブロック(左脚ブロックを除く),心房細動の割合が低かった。
女性では,時計回り回転の人で,正常回転にくらべて左軸偏位,軽度の右軸偏位,ST下降,陰性T波,心房細動,洞性頻脈,低電位の割合が高く,反時計回り回転の人では,正常回転にくらべて軽度の右軸偏位,脚ブロック(左脚ブロックを除く),低電位の割合が低かった。

◇ 心臓長軸回りの回転と年齢およびBMI
男女とも,年齢が高くなるほど,時計回り回転の割合が有意に増加した(男女ともP for trend<0.001)。女性では,年齢とともに反時計回り回転の割合が低下していた(P for trend=0.001)。
男女とも,BMIが23~25 kg/m2のグループで時計回り回転の割合がもっとも低く,反時計回り回転の割合がもっとも高かった。

◇ 心臓長軸回りの回転と心血管疾患死亡リスク
時計回り回転は,男性において心血管疾患死亡と有意な正の関連,および男女をあわせた解析において,心不全死亡,心血管疾患死亡,全死亡のリスクと有意な正の関連を示した。正常回転に比した多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
   冠動脈疾患死亡: 1.38(0.84-2.27) (P=0.198)
   心不全死亡: 1.79(1.13-2.83) (P=0.013)
   脳卒中死亡: 1.06(0.75-1.49) (P=0.749)
   心血管疾患死亡: 1.28(1.02-1.59) (P=0.030)
   全死亡: 1.15(1.00-1.32) (P=0.045)

反時計回り回転は,男性において心血管疾患死亡と有意な負の関連,および男女をあわせた解析において,脳卒中死亡,心血管疾患死亡のリスクと有意な負の関連を示した。
正常回転に比した多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
   冠動脈疾患死亡: 0.83(0.60-1.15) (P=0.269)
   心不全死亡: 0.98(0.70-1.37) (P=0.911)
   脳卒中死亡: 0.77(0.62-0.96) (P=0.017)
   心血管疾患死亡: 0.81(0.70-0.94) (P=0.006)
   全死亡: 0.93(0.85-1.01) (P=0.090)

これらの結果は,年齢層(60歳未満/以上)ごと,軸偏位(左軸/右軸偏位),喫煙の有無ごとにみても同様であった。


◇ 結論
心臓の長軸回りの回転(時計回り回転,反時計回り回転)と心血管疾患死亡リスクとの関連について,一般住民を対象とした追跡研究による検討を行った。その結果,男性,および男女をあわせた解析において,他の心血管危険因子および心電図異常などとは独立に,時計回り回転は心血管疾患死亡リスクと有意な正の関連,反時計回り回転は負の関連を示した。発見から100年以上にわたって大きな関心の対象とならなかった時計回り回転および反時計回り回転であるが,これらが心血管疾患死亡リスクにおよぼす影響のメカニズムを検討する必要がある。


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