揚げものの摂取と冠動脈疾患リスク

Guallar-Castillón P, et al. Consumption of fried foods and risk of coronary heart disease: Spanish cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study. BMJ. 2012; 344: e363. pubmed

背景・目的
揚げものは欧米では一般的な調理法の一つであり,食品を揚げることにより,食品のエネルギー密度が変わる(水分が減少し,脂肪分を吸収する),加熱で油が酸化や水素添加などを受けて不飽和脂肪酸がトランス脂肪に変性する,その変性した油を食品が吸収する,食品の歯ごたえが変わっておいしくなるといった変化がある。これまでに,揚げものの摂取量が種々の心血管危険因子と関連することが断面研究などによって示されてきたが,心血管疾患との関連については報告が少ない。そこで,揚げものの摂取量と冠動脈疾患発症・死亡リスクとの関連について,前向きコホート研究による検討を行った。
コホート
EPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)のスペインコホート。
1992~1996年にかけて登録されたスペインの5地域(北部: アストゥリアス,ギプスコア,ナバラ,地中海沿岸: グラナダ,ムルシア)の29~69歳の一般住民41438人(うち男性15632人)のうち,冠動脈疾患既往のある193人,食事量が極端に多いまたは少ない167人,ベースラインデータに不備のある321人を除いた40757人を2004年12月31日まで追跡。追跡期間の中央値は11年,各地域における参加率は55~60%。

食生活については,質問票を用いた聞き取り調査を実施。揚げもの(fried food*)の摂取に関して,用いた油の種類,調理法ごとの油の吸収量なども考慮したうえで1日あたりの摂取量(g)を算出し,四分位ごとに対象者を以下のカテゴリーに分類した。(* いわゆる揚げもの[deep-fried food]のほかに,フライパンで焼いた・炒めたもの[pan-fried food]も含まれる)

・男性
  Q1: 0~112 g,Q2: 113~176 g,Q3: 177~246 g,Q4: 247~817 g
・女性
  Q2: 0~59 g,Q2: 60~103 g,Q3: 104~154 g,Q4: 155~657 g
結果
◇ 対象背景
揚げものの摂取量の平均は138 g/日,食事全体に占める揚げものの割合は約7%であった。対象者の67%が揚げものの際にオリーブオイルを使用し,それ以外の対象者はヒマワリ油またはその他の植物油を用いていた。

揚げものの摂取量のカテゴリー(Q1,Q2,Q3,Q4)ごとのおもな対象背景は以下のとおり。
  揚げものの摂取量(g): 47.0,105.7,158.4,249.6
  年齢(歳): 50.4,49.5,48.9,48.3
  BMI(kg/m2): 28.5,28.3,28.1,28.1
  大学卒業者の割合(%): 13.3,12.8,10.8,9.0
  喫煙率(%): 22.5,22.5,23.7,24.2
  肉体労働者の割合(%): 6.2,8.5,10.3,12.3
  重度の肉体労働者の割合(%): 2.2,1.9,2.1,2.5
  自宅での身体活動量(METs h/週): 68.6,69.8,70.0,68.1
  余暇の身体活動量(MetS h/週): 28.7,28.2,28.6,28.4
  糖尿病(%): 7.5,5.1,3.9,3.2
  高血圧(%)23.7,20.9,18.4,17.4
  高脂血症(%): 24.8,20.5,18.5,16.7
  総摂取エネルギー(kcal/日)1920.1,2133.0,2294.8,2566.6
  エタノール換算アルコール摂取量(g/日): 11.5,14.5,17.0,20.4
  野菜の摂取量(g/日): 255.0,241.1,232.3,237.4
  果物の摂取量(g/日): 336.6,322.0,315.3,311.2
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◇ 揚げものの摂取と冠動脈疾患(CHD)リスク
追跡期間中にCHD(確定診断)を発症したのは606人で,うち心筋梗塞が466人,血行再建を要する狭心症が140人であった。なお,CHDの疑いも含めると,発症者は712人だった。
また,追跡期間中の全死亡は1135人であった。
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揚げものの摂取量のカテゴリー(Q1,Q2,Q3,Q4)ごとのCHD発症のハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,いずれのモデルにおいても,摂取量とCHD発症リスクとの有意な関連はみとめられなかった。

(1)モデル1
(年齢,性別,地域,総摂取エネルギーで調整)
  Q1: 1(対照),Q2: 1.05(0.84-1.33),Q3: 0.97(0.76-1.24),Q4: 0.94(0.72-1.23)[P for trend=0.52]
  揚げものの摂取量100 g増加あたりのハザード比: 0.95(0.86-1.06)

(2)モデル2
(モデル1に加え,エタノール換算アルコール摂取量,教育歴,喫煙状況,仕事における身体活動状況,自宅での身体活動量,余暇の身体活動量,糖尿病既往,高脂血症既往,癌既往,経口避妊薬服用*,閉経状況*,ホルモン補充療法状況*,果物の摂取量,ナッツ類の摂取量,乳製品の摂取量,野菜の摂取量**,肉の摂取量**,魚の摂取量**により調整[*女性のみ,**揚げものを除く])
  Q1: 1(対照),Q2: 1.15(0.91-1.46),Q3: 1.08(0.84-1.39),Q4: 1.11(0.84-1.46)[P for trend=0.60]
  揚げものの摂取量100 g増加あたりのハザード比: 1.01(0.91-1.12)

(3)モデル3
(モデル2に加え,BMI,腹囲,高血圧既往により調整)
  Q1: 1(対照),Q2: 1.15(0.91-1.45),Q3: 1.07(0.83-1.38),Q4: 1.08(0.82-1.43)[P for trend=0.74]
  揚げものの摂取量100 g増加あたりのハザード比: 1.00(0.90-1.11)
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以上の結果は,揚げものの内訳としての食品(魚,肉,いも類,卵)ごとに検討しても,結果は同様であった。
また,揚げものの摂取量と全死亡リスクについても,有意な関連はみとめられなかった。


◇ 結論
揚げものの摂取量と冠動脈疾患(CHD)発症・死亡リスクとの関連について,スペインの一般住民を対象とした前向きコホート研究による検討を行った。その結果,揚げものの摂取量とCHD発症リスク,および全死亡リスクとの有意な関連はみとめられなかった。ただし,スペインでの揚げものの調理および摂取に関しては以下のような特徴があるため,今回の結果は同様の特性を有する地中海諸国に限って適用可能と考えられる。

・調理によって酸化しにくいオリーブオイルをおもに用いている
・揚げものの摂取には,ファーストフードに多いフライもの(deep-fried food)だけでなく,フライパンで焼く・いためるもの(pan-fried food)も含まれる
・家庭での調理の際は,油を再利用することは多くない
・塩分を多く含むフライドスナックの摂取は少ない

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