3.長期研究を可能にしたもの

長期研究を可能にしたもの1)
 

初代ディレクターのThomas Dawber は,フラミンガム研究は参加者が主役であると考え,医師やスタッフにはよく「参加者に感謝し,彼らの時間をわずかでも無駄にしてはならない」と話していた。フラミンガム研究が成功をおさめた理由のひとつには,このDawberによる医師教育の徹底ぶりがあったと第3代ディレクターのWilliam Castelliは語る。「Dr. Dawberは口癖のように私たち言い続けました。『医師は,参加者が時間とエネルギーを提供してくれることに感謝して,それに報いなければいけない。そうすれば,医師がしようとしていることを参加者にわかりやすく伝えることができる』と。」

また,フラミンガム研究が高い追跡率を維持している理由として「コーディネーター」の存在がある。現在5人いるコーディネーターは全員女性である2)。彼女たちは参加者と常に連絡を取り合い,確固たる信頼関係を築いてきた。オリジナルコホートのコーディネーター,Linda Clarkさんは「参加者のみなさんは私たち研究スタッフのことを家族のように思ってくれている」という。コーディネーター歴20年以上のMarian Bellwoodさんも「いってみれば私は参加者と共に人生を歩んできたようなものです」と語った。

なお参加者は定期検診によって早期に病気が発見されるという利点もあり,「参加者が恩恵を受けるということは,私たちも研究成果という恩恵を受けることになる」と第2代ディレクターのWilliam Kannelは言う。実際,最初の研究成果がもたらされてから参加者の意識に微妙な変化があり,参加者は自分の利益のみではなく,「人類の利益というより大きな目的に貢献する利他主義者と自らを認識するようになった」と第4代ディレクターのDaniel Levyはみている。参加者の研究に対する理解は,参加者が長期にわたって研究に協力的に関わっていくうえで重要なことであった。


REFERENCES
1) 嶋康晃. 世界の心臓を救った町―フラミンガム研究の55年. ライフサイエンス出版. 2004
2) http://www.framinghamheartstudy.org/participants/newsletters/winter2005.pdf

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