[2005年文献] 初期の加齢黄斑変性の5年発症率は8.5%で,危険因子は年齢と喫煙

日本人一般住民において,加齢黄斑変性(ARM: age-related maculopathy)の5年間の発症率および危険因子を検討したはじめての報告である。ARMは,高齢者の失明に至る原因の一つである。初期ARMの5年発症率は8.5%,後期ARMは0.8%で,年齢および喫煙が危険因子となることが示された。

Miyazaki M, et al. The 5-year incidence and risk factors for age-related maculopathy in a general Japanese population: the Hisayama study. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005; 46: 1907-10.pubmed

コホート
1998年に眼科検診を受けた50歳以上の1482人(男性596人,女性886人)を2003年まで5年間追跡。追跡検診を受診したのは961人。

加齢黄斑変性(ARM: age-related maculopathy)の診断は,眼底検査により行った。
血管新生型の加齢黄斑変性(neovascular age-related macular degeneration)または地図状萎縮(geographic atrophy)がみられたものを後期のARMとし,drusen所見または網膜色素上皮異常がみられたが後期ARMではないものを初期ARMとした。
結 果
◇ 対象背景
追跡検診を受診した961人の対象背景は以下のとおり。
平均年齢64歳,男性の割合40%,初期加齢黄斑変性(ARM: age-related maculopathy)17.3%,後期ARM 1.0%,高血圧46.7%,糖尿病11.9%,高脂血症52.2%,喫煙率32.9%,飲酒率39.3%,BMI 23.2 kg/m2,白血球数5,700 / mm3

◇ ARMの発症率
・ 初期ARM
ベースライン時に初期ARMまたは後期ARMを有していた人を除外して検討。
5年間で初期ARMを発症したのは67人(8.5%)。
男性の初期ARM発症率は女性よりもやや高かったが,有意差はみられなかった。

・ 後期ARM
ベースライン時に後期ARMを有していた人を除外して検討。
5年間で後期ARMを発症したのは8人(0.8%)。
男性の後期ARM発症率は女性よりも有意に高かった(オッズ比2.62,95%信頼区間1.18-5.82)。
地図状萎縮(GA: geographic atrophy)および血管新生型の加齢黄斑変性(neovascular age-related macular degeneration)の発症率も,男性で女性にくらべ有意に高かった。

◇ ARMの危険因子
多変量ロジスティック回帰分析より,年齢および喫煙習慣がARMの危険因子であることが示された。多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。
   年齢: 1.04 (1.01-1.07,P<0.05)
   喫煙習慣: 2.22 (1.14-4.33,P<0.05)


◇ 結論
日本人一般住民において,加齢黄斑変性(ARM: age-related maculopathy)の5年間の発症率および危険因子を検討したはじめての報告である。ARMは,高齢者の失明に至る原因の一つである。初期ARMの5年発症率は8.5%,後期ARMは0.8%で,年齢および喫煙が危険因子となることが示された。


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