わが国の公衆衛生施策の礎となる国内14コホートのメタ解析研究
対象 国内の17の前向きコホート研究の参加者(40~89歳)
EPOCH-JAPAN地図
場所 国内の17の前向きコホート研究
(1)地域 / 職域コホート
端野・壮瞥町研究,CIRCS(秋田および大阪),岩手県北地域コホート,大迫研究,大崎研究,茨城県健康研究,富山職域(YKK勤務者)コホート,小矢部研究,愛知職域コホート,滋賀県国民健康保険コホート,吹田研究,被ばく者コホート,久山町研究
(2)全国規模のコホート研究
JACC,NIPPON DATA80,NIPPON DATA90,JMSコホート

研究組入れ基準は以下のとおり。
  • 健診のデータを収集する前向きコホート研究
  • 10年前後の追跡データを有する
  • 対象者数1000人以上
登録数 24万3069人
開始年 2005年
(各コホートのベースライン健診実施年: 1977~2006年)
参考 厚生労働科学研究補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)平成17~19年度・平成20~22年度・平成23~25年度総合研究報告書,平成26~28年度総括研究報告書
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=200722008A
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201021011B
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201222034A
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201412006A
J Epidemiol. 2014; 24: 96-101.pubmed
動脈硬化予防. 2012; 11: 25-31.
月刊健康づくり. 2013; 422(6): 11.
 EPOCH-JAPAN(Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan)は,国内の17の前向き観察コホート研究の約24万人の個人データを統合した,大規模メタ解析研究。日本人の総死亡・心血管疾患死亡に関連する要因について,性・年齢層別の詳細な解析により定量的に評価し,健診や保健指導をはじめとしたわが国の公衆衛生施策の基盤となるエビデンスを得ることをおもな目的として2005年に開始。その後も新たなコホートの参加を得ながら,現在の規模に達した。

 高齢化やライフスタイルの欧米化とともに増加する生活習慣病への対策として,厚生労働省は,個別疾患の早期発見・治療を目指す従来の健診・保健指導から,内臓脂肪型肥満に着目し,早期介入や行動変容を促す健診・保健指導へと公衆衛生施策をシフトさせ,2008年より特定健診・特定保健指導を開始させた。これらの健診制度改革のなかで科学的根拠(エビデンス)がより重要視されるようになり,健診で測定する項目についてもデータの集積が課題となっている。そこで,厚生労働科学研究の一つである循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「疾病予防サービスに係わるエビデンス構築のための大規模コホート共同研究」(2005~2007年度)の一部として,国内のコホート研究の個人データを収集し,統合して解析するプロジェクトであるEPOCH-JAPANがスタートした。

 参加しているのは,北は北海道から南は九州まで,わが国を代表する17のコホート研究。総死亡をエンドポイントとした場合の対象者数は17コホート約24万人,心血管疾患をエンドポイントとした場合は16コホート約14万人と,国内最大級の規模を誇り,危険因子とエンドポイントとの関連を性・年齢層ごとに詳細に解析することができる。さらに,複数の危険因子をあわせもつ場合の影響や,人口寄与度割合(PAF)の検討も行われている。なお,個人データに基づく本邦の大規模メタ解析研究としては,2001年開始のJALSが先行している(JALSへ)。JALSでは心血管疾患の発症および死亡をエンドポイントとしている点や,民間基金の助成で実施されている点,またJALSの統合研究では前向きに標準化を行っている点などがEPOCH-JAPANとは異なっている。

 EPOCH-JAPANは,厚生労働行政への貢献という大きな目的を担っており,とくに2013年から施行されている健康日本21(二次)では,EPOCH-JAPANのデータに基づいて,国としての循環器疾患の低減目標値が定められた(参考資料)。また,血圧レベル別の心血管疾患死亡リスクとPAFを年齢層ごとに検討した2012年の報告では,75歳以上の高齢者であっても,至適血圧に比して正常高値血圧から心血管疾患死亡リスクが有意に高くなることが示され(抄録へ),公衆衛生上の重要な知見として,日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2014』にも引用された。

 現在,研究班のとりまとめを慶應大学,データ管理を滋賀医科大学が行っており,各コホートとの緊密な連携のもとに研究が継続されている。

滋賀医科大学アジア疫学研究センター
EPOCH-JAPANのデータの管理・統合を行っている
滋賀医科大学アジア疫学研究センターの入口。
文部科学省がわが国の疫学研究の拠点として設立した,
はじめての施設である。



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