医療費増加の要因を探る国民健康保険加入者のコホート研究
場所 滋賀県北西部の5町1村,および南部の2町
(1989年当時)
滋賀国保コホート研究地図
開始年 1989年
対象 町村の健診を受診した40~69歳の国民健康保険加入者
登録数 4535人(男性1939人,女性2596人)
調査項目 血圧,身長,体重,飲酒習慣,喫煙習慣,服薬状況,既往歴,総コレステロール,尿蛋白(試験紙法)
参考 日内誌. 2007; 96: 101-5.
日衛誌. 2012; 67: 38-43.
北陸公衛誌. 2010; 37: 1-6.
日循予防誌. 2016; 51: 10-8.
 滋賀国保コホート研究は,国民健康保険(以下,国保)の加入者を対象に,医療費をアウトカムとして10年間追跡を行ったユニークかつ先駆的な前向きコホート研究。医療費増加の要因を明らかにすることを目的として,1989年に開始された。

 わが国の医療費は,高齢化や疾病構造の変化に伴って1970年代から急増し,現在も増加の一途をたどっている。とくに,傷病別にみると20%以上ともっとも大きい割合を占めているのが循環器疾患。高血圧などの危険因子をもつ人は,もたない人にくらべて,その危険因子の診療のために医療費がかかるだけでなく,「その危険因子をもっているために発症しやすい循環器疾患などの重篤な疾患」の診療のために,長期的には医療費がさらに高額になると考えられる。しかし,具体的にどれくらいの差が生じるのかは検証されていなかった。

 そこで,循環器疾患の危険因子の保有状況と,将来の医療費との関連を検討するために1989年に開始されたのが滋賀国保コホート研究である。医療費(個人負担分+保険者負担分)は国保のレセプトデータ*1から求めたが,研究で把握できる医療費は国保加入期間に依存するため,解析には加入期間1か月あたりの医療費*2を用いた。これを,医療保険証番号をキーとして健診データと結合させることによって,医療費をアウトカムとしたコホート研究が可能となった。

 これまでに,肥満(抄録へ),高血圧(抄録へ),糖尿病(抄録へ),および蛋白尿(抄録へ)のいずれも,医療費の増加と関連することが報告されている。また,高血圧と喫煙(抄録へ),高血圧と糖尿病の組み合わせ(抄録へ)をはじめ,複数の危険因子を合併していると医療費はさらに高くなることも示された(抄録へ)。

 2007年の国民医療費は34兆円を超え,1人あたりに換算すると年間26万7200円。わが国の医療は国民皆保険制度という社会資源のうえに成り立っているという意識が国民にも医療者にもより強く求められる状況といえるが,目指すべきは医療費の単なる削減ではなく,健康寿命の延伸と,そのための医療費の適正化であることを忘れてはならない。滋賀国保コホート研究や大崎研究(研究紹介へ),より大規模な最近の検討(pubmedpubmedpubmed)などによる医療費のエビデンスに基づいて,今後ますます,ポピュレーションアプローチをはじめとした適切な予防対策や,費用対効果を考慮した治療,さらには国民1人1人が医療費にも関心をもちながら健康づくりに取り組む姿勢が大切になる。

*1 医科レセプトのみ(当時の対象地域で医療費全体に占める割合の少なかった保険調剤,歯科,訪問看護,柔道整復レセプトは含まれていない)。

*2 算術平均値(調整なし),および,医療費に影響を及ぼすような交絡因子の調整を行った幾何平均値(集団の医療費は右裾に広がるような非正規分布を示すことから,自然対数変換後の医療費を用い,共分散分析によって交絡要因を調整したものを最終的に逆対数変換したもので,実際の医療費のスケールとは異なる)の両方を算出している。解析の都合上,追跡期間中に医療費が発生しなかった16人については1円とみなした。



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