[1994年文献] 高インスリン血症,高血圧,トリグリセリド,BMIおよびウエスト/ヒップ比は,耐糖能異常の有意な危険因子

日本人一般住民を対象としたコホート研究における断面解析により,耐糖能異常および糖尿病の危険因子の検討を行った。その結果,耐糖能異常の有意な危険因子は,年齢・性別に関わらず,空腹時+食後2時間の血中インスリン値の合計(合計インスリン),収縮期・拡張期血圧,トリグリセリド,BMIおよびウエスト/ヒップ比であり,糖尿病の有意な危険因子は,年齢・性別に関わらず,合計インスリン,収縮期血圧,トリグリセリドおよびウエスト/ヒップ比であった。これらの結果は,インスリン抵抗性が,耐糖能異常の一次欠陥(primary defect)であることを示唆するものである。

Ohmura T, et al: The association of the insulin resistance syndrome with impaired glucose tolerance and NIDDM in the Japanese general population: the Hisayama study.Diabetologia 1994; 37: 897-904.pubmed

コホート
1988年40-79歳の2587例中,糖負荷試験が行えなかった82例,糖負荷試験を完了できなかった15例,インスリン療法を受けていた10例を除く2480例。
結 果
年齢・性別に関わらず,耐糖能異常群で正常群に比べ有意に高い値を示したのは,空腹時血中インスリン,食後2時間の血中インスリン,空腹時+食後2時間の血中インスリン合計(以下,「合計インスリン」と表記),トリグリセリド,収縮期・拡張期血圧(P<0.05)。
耐糖能異常群のうち,40-59歳ではウエスト/ヒップ比,60-79歳ではBMIが,正常群に比べ有意に高い値を示した(P<0.01)。
年齢・性別に関わらず,糖尿病群で正常群に比べ有意に高い値を示したのは,空腹時血中インスリン,食後2時間血中インスリン,合計インスリン,ウエスト/ヒップ比,収縮期血圧(P<0.05)。
糖尿病群のうち,40-59歳ではBMI,拡張期血圧および糖尿病家族歴,60-79歳では肩甲骨下角部/上腕三等筋部皮脂厚比が,正常群に比べ有意に高い値を示した(P<0.05)。

偏相関分析によると,正常群において年齢・性別に関わらず合計インスリンと有意な正の相関を示したのは,トリグリセリド,BMI,ウエスト/ヒップ比,収縮期・拡張期血圧で,有意な逆相関を示したのはHDL-C(P<0.05)。
この結果は,トリグリセリド高値,血圧,肥満およびHDLコレステロール低値が,いずれもインスリン抵抗性に影響することを示唆するものである。

耐糖能異常群と糖尿病群に加え,正常群を合計インスリン値三分位ごとにさらに正常1~3群に分け,インスリン,脂質,肥満,血圧について,計5群間で値を比較した。
正常2・3群の血中インスリン量は,正常1群に比べ,ともに有意に高かった(P<0.05)。特に正常3群では,年齢・性別に関わらず,インスリン量が耐糖能異常群・糖尿病群とほぼ同じレベル。
トリグリセリド,ウエスト/ヒップ比,BMI,収縮期・拡張期血圧については,年齢・性別に関わらず,正常3群の値が正常1・2群より高く,むしろ耐糖能異常群・糖尿病群に近い傾向があった。
この結果は,高インスリン状態,およびインスリン抵抗性の指標となるトリグリセリド高値,肥満および高血圧などがあれば,耐糖能が正常な範囲にあってもインスリン抵抗性の状態に近いことを示唆するもの。
糖尿病群の男性では,HDL-Cが正常3群より高く,正常1・2群に近い傾向があった。

合計インスリン,収縮期・拡張期血圧,トリグリセリド,BMIおよびウエスト/ヒップ比は,年齢・性別に関わらず,耐糖能異常の有意な危険因子(P<0.05)。
HDL-C低値は,40-59歳の男性および60-79歳の女性において,耐糖能異常の有意な危険因子(P<0.05)。
一方,総コレステロール,肩甲骨下角部/上腕三等筋部皮脂厚比,糖尿病家族歴,飲酒は糖尿病と有意な相関なし。
合計インスリン,収縮期血圧,トリグリセリドおよびウエスト/ヒップ比は,年齢・性別に関わらず糖尿病の有意な危険因子(P<0.05)。
拡張期血圧,総コレステロール,BMI,肩甲骨下角部/上腕三等筋部皮脂厚比,糖尿病家族歴および飲酒も,一部の年齢・性別を除き,糖尿病の有意な危険因子(P<0.05)。
HDL-C低値は,40-59歳の女性でのみ,糖尿病と有意な相関を示した(P<0.05)。


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