[2007年文献] メタボリックシンドロームは,心血管疾患,冠動脈疾患および脳卒中の有意な危険因子である

この研究は,改変NCEP-ATP III基準によるメタボリックシンドロームと心血管疾患との関連について,一般住民を対象として長期にわたり検討した初めての研究である。日本人一般住民において,改変NCEP-ATP III基準によるメタボリックシンドロームは,心血管疾患,冠動脈疾患および脳卒中を有意に予測することが示された。メタボリックシンドローム,およびメタボリックシンドローム構成因子に関する早期の予防・管理の必要性が示唆される。

Ninomiya T, et al. Impact of metabolic syndrome on the development of cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama study. Stroke. 2007; 38: 2063-9.pubmed

コホート
1988年の健診を受診した40歳以上の2736人のうち,冠動脈疾患または脳卒中既往のある102人,採血を実施しなかった1人,食後に採血を行った120人,腹囲データのない61人を除いた2452人(男性1050人,女性1402人)を2002年まで14年間追跡。
追跡期間中に死亡した479人のうち362人について剖検が行われた(剖検率75.6 %)。

メタボリックシンドロームの診断には,改変NCEP-ATP III基準を用いた(腹囲のみInternational Obesity Task Forceの基準を採用)。以下のメタボリックシンドローム因子を3つ以上もつ場合にメタボリックシンドロームとした。
(1) 腹部肥満: 腹囲が男性90 cm超,女性80 cm超
(2) 血圧高値: 130 / 85 mmHg以上,または降圧薬服用
(3) 高トリグリセリド血症: 150 mg/dL以上
(4) 低HDL-C血症: 男性40 mg/dL未満,女性50 mg/dL未満
(5) 血糖高値: 空腹時血糖110 mg/dL以上,インスリン治療,または血糖降下薬服用
結 果
ベースライン時のメタボリックシンドローム(MetS)の有病率は25.9 %。
MetSをもつ人で,もたない人に比べて有意に高い値を示したのは,年齢(女性のみ),収縮期血圧,拡張期血圧,降圧薬服用率,高血圧,蛋白尿,腹囲,BMI,空腹時血糖,糖尿病,総コレステロール(女性のみ),トリグリセリド,飲酒(男性のみ)で,有意に低い値を示したのはHDL-C。

◇ MetSの有無と心血管疾患(CVD)発症率
CVD(動脈疾患または脳卒中)を初発したのは307人(男性158人,女性149人)。うち冠動脈疾患は125人(78人,47人),脳卒中は209人(94人,115人)だった。
・ CVD: MetSをもつ人のCVD発症率(/1000人・年)は,もたない人に比べて有意に高かった(男性21.8 vs. 11.6,女性12.9 vs. 6.5,いずれもP<0.01)。
・ 冠動脈疾患: MetSをもつ人の冠動脈疾患発症率(/1000人・年)は,もたない人に比べて有意に高かった(男性9.2 vs. 5.7,女性5.1 vs. 1.5,いずれもP<0.01)。
・ 脳卒中: MetSをもつ人の脳卒中発症率(/1000人・年)は,男性においてのみ,もたない人に比べて有意に高かった(14.1 vs. 6.4,P<0.01)。女性では有意差なし。病型別に検討した結果,MetSをもつ人の脳梗塞発症率(/1000人・年)は,もたない人に比べて有意に高かった(男性9.0 vs. 4.8,P=0.03,女性 6.2 vs. 3.4,P=0.01)。一方,MetSをもつ人の脳出血発症率は,男性においてのみ,もたない人に比べて有意に高かった(5.1 vs. 1.6,P=0.01)。

◇ CVDの危険因子としてのMetS
・ CVD: 男女とも,MetSはCVDの有意な危険因子だった。
・ 冠動脈疾患: 男女とも,MetSは冠動脈疾患の有意な因子だった。
・ 脳卒中: 男女とも,MetSは脳卒中の有意な危険因子だった。病型別に検討した結果,脳梗塞の有意な危険因子となったのは女性のMetSのみで,男性では有意性がボーダーライン上だった。一方,脳出血の有意な危険因子となったのは男性のMetSのみで,女性では有意な関連なし。
(いずれもCox比例ハザードモデルにより年齢,蛋白尿,心電図異常,総コレステロール,喫煙,飲酒,身体活動で調整後)

◇ MetS因子の保有数とCVDの累積発症率
MetS因子を3つ以上もつ人におけるCVD,冠動脈疾患および脳卒中の累積発症率は,MetS因子を1つももたない人に比べ,いずれも有意に高くなった。
また,CVD,冠動脈疾患および脳卒中の累積発症率は,いずれもMetS因子の保有数との関連を示した。

◇ 高血圧および糖尿病を考慮に入れた解析
・ MetSと高血圧
高血圧者のみでみると,種々の因子による補正後も,MetSをもつ人はもたない人にくらべてCVDリスクが有意に高くなった。
・ MetSと糖尿病
糖尿病患者のみでみると,種々の因子による補正後も,MetSをもつ人はもたない人にくらべてCVDリスクが有意に高くなった。
・ MetSと高血圧および糖尿病
種々の因子に加え,糖尿病および高血圧を考慮に入れた多変量解析を行った上でも,MetSはCVDの有意かつ独立した危険因子であった(ハザード比1.38,95 %信頼区間1.07-1.78,P=0.01)。

◇ その他のCVDの危険因子
その他に,CVDとの有意な関連がみとめられた因子は以下のとおりであった。
   年齢(+10歳): ハザード比2.00(95%信頼区間1.79-2.26,P<0.01)
   性別(男性): 1.45(1.07-1.97,P=0.02)
   高血圧: 1.64(1.26-2.12,P<0.01)
   糖尿病: 1.55(1.14-2.13,P<0.01)
   喫煙: 1.69(1.28-2.23,P<0.01)
   定期的な運動: 0.58(0.39-0.87,P<0.01)
   蛋白尿: 1.64(1.13-2.38,P<0.01)


この研究は,改変NCEP-ATP III基準によるメタボリックシンドロームと心血管疾患との関連について,一般住民を対象として長期にわたり検討した初めての研究である。日本人一般住民において,改変NCEP-ATP III基準によるメタボリックシンドロームは,心血管疾患,冠動脈疾患および脳卒中を有意に予測することが示された。メタボリックシンドローム,およびメタボリックシンドローム構成因子に関する早期の予防・管理の必要性が示唆される。


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