[2007年文献] 前高血圧でも腎動脈硬化のリスクが上昇

最終健診時の血圧と,剖検例での腎動脈硬化との関連を検討した。その結果,腎動脈硬化のリスクは,高血圧だけでなく,前高血圧の人においても有意に上昇していた。標的臓器障害の有無にかかわらず,前高血圧の人は高リスク者と考えるべきである。

Ninomiya T, et al. Prehypertension increases the risk for renal arteriosclerosis in autopsies: the Hisayama Study. J Am Soc Nephrol. 2007; 18: 2135-42.pubmed

コホート
最終健診時の血圧と1962~1994年に死亡し剖検された40歳以上の1394人(剖検率80 %)から,6回の健診(1961年,1967年,1974年,1978年,1983年,1988年)のいずれも受診しなかった226人,腎臓組織が保存されていなかった98人,腎臓組織が小さすぎる/または変性していた33人,九州大学病院以外で剖検を受けた80人,死亡からさかのぼって7年以内の健診データがない118人,降圧薬を服用していた187人を除いた652人(男性362人,女性290人)。
最終健診受診から死亡までの期間の平均は3.6年。

パラフィン包埋した腎臓組織から切片を作製して染色し,腎動脈の硬化,腎動脈の硝子変性,および糸球体硬化の進展度を評価した(それぞれのカットオフ値: wall-lumen ratio<3.37,腎動脈硝子変性指数>1.44,糸球体硬化指数>17.0)。

米国合同委員会第7次報告(JNC-7)の基準にしたがい,健診受診時の血圧レベルを以下のように分類した。
   正常血圧: 収縮期血圧(SBP)<120 mmHgおよび拡張期血圧(DBP)<80 mmHg
   前高血圧: SBP 120~139 mmHgまたはDBP 80~89 mmHg
   ステージ1高血圧: SBP 140~159 mmHgまたはDBP 90~99 mmHg
   ステージ2高血圧: SBP≧160 mmhgまたはDBP≧100 mmHg
結 果
◇ 血圧レベルごとのベースライン時背景(最終健診時)
・ 死亡時年齢: ステージ1高血圧者およびステージ2高血圧者では,正常血圧者よりも有意に高かった。
・ 糸球体濾過量(GFR): ステージ2高血圧者で,正常血圧者よりも有意に低かった。
・ 蛋白尿: ステージ2高血圧者で,正常血圧者よりも有意に高かった。
・ 心血管疾患既往の割合: ステージ2高血圧者において,正常血圧者よりも有意に高かった。
・ 心電図異常の割合: 血圧レベルと直線的に相関し,前高血圧者,ステージ1高血圧者,ステージ2高血圧者のいずれにおいても正常血圧者に対して有意に高かった。
・ 総コレステロール: 前高血圧者,ステージ1高血圧者,ステージ2高血圧者のいずれにおいても,正常血圧者より有意に高かった。
・ 喫煙率: ステージ2高血圧者で,正常血圧者よりも有意に低かった。
・ 血清クレアチニン,耐糖能異常,BMI,飲酒率: いずれも血圧レベルによる有意差なし。

◇ 血圧と腎動脈硬化の進展
・ 腎動脈硬化
腎動脈硬化のリスク(多変量調整)は,高血圧(ステージ1,ステージ2)だけでなく,前高血圧においても有意に高くなっていた(いずれもP<0.01 vs. 正常血圧)。

・ 腎動脈硝子変性
腎動脈硝子変性のリスク(多変量調整)は,高血圧(ステージ2)だけでなく,前高血圧においても有意に高くなっていた(前高血圧: P<0.05,ステージ2高血圧: P<0.01 vs. 正常血圧)。ステージ1高血圧では,正常血圧との有意差はなかった。

・ 糸球体硬化
糸球体硬化の進展度については,ステージ2高血圧においてのみ,正常血圧に対する有意な増加がみられた。

前高血圧の人をさらに以下の2つのカテゴリーに分けて解析を行った。
   前高血圧(1): SBP 120~129 mmHgまたはDBP 80~84 mmHg
   前高血圧(2): SBP 130~139 mmHgまたはDBP 85~89 mmHg
その結果,いずれのカテゴリーにおいても,腎動脈硬化のリスク(多変量調整)は有意に上昇した(いずれもP<0.01,vs. 正常血圧)。

また,標的臓器障害の有無ごとに血圧レベルと腎動脈硬化との関連を検討した結果,標的臓器障害の有無にかかわらず,前高血圧,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧の腎動脈硬化のリスク(多変量調整)は有意に上昇した。

◇ 結論
最終健診時の血圧と,剖検例での腎動脈硬化との関連を検討した。その結果,腎動脈硬化のリスクは,高血圧だけでなく,前高血圧の人においても有意に上昇していた。標的臓器障害の有無にかかわらず,前高血圧の人は高リスク者と考えるべきである。


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