[2007年文献] γ-GTPおよびALT(肝機能因子)は,糖尿病の独立した危険因子。

肝機能の指標になる酵素と糖尿病新規発症リスクとの関連について,日本人一般住民における9年間の追跡研究による検討を行った。その結果,γ-GTPおよびALTは糖尿病の危険因子であることがわかった。この関連は飲酒量,インスリン抵抗性,炎症マーカーなどとは独立したものであった。また,γ-GTPおよびALTの糖尿病新規発症リスク予測能は,既知の危険因子(空腹時インスリン,ウエスト/ヒップ比,高感度CRP)よりも優っていた。2型糖尿病の発症機序における肝臓の役割は,予想以上に大きい可能性がある。

Doi Y, et al. Liver enzymes as a predictor for incident diabetes in a Japanese population: the Hisayama study. Obesity (Silver Spring). 2007; 15: 1841-50.pubmed

コホート
40~79歳の2587人のうち,採血が行われなかった1人,採血を食後に行った75人,糖尿病既往のある233人,追跡開始前に死亡した4人を除いた2274人を,1988年のベースライン健診から平均9年間追跡。
追跡率は79.3 %。
平均年齢は男性58歳,女性58歳。

糖尿病の診断にはADA(米国糖尿病学会)基準を用いた。糖尿病治療薬の服用を開始した場合も糖尿病とした。

γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP),アラニンアミノ基転移酵素(ALT),アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)の血中濃度により,それぞれ全体を四分位に分けて解析を行った。
結 果
糖尿病を発症したのは135人(男性71人,女性64人)。
男性で女性よりも高い値を示したのは,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP),アラニンアミノ基転移酵素(ALT),アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST),空腹時血糖,ヘモグロビンA1c,ウエスト/ヒップ比,トリグリセリド,高感度CRP,収縮期血圧,拡張期血圧,高血圧,飲酒,喫煙,身体活動の習慣。
女性で男性よりも高い値を示したのは,空腹時インスリン,総コレステロール,HDL-C。
糖尿病家族歴,BMIには男女差はみられなかった。

男女ともに,γ-GTPとALTは糖尿病発症リスクと有意に相関していた。ASTでは,男性においてのみ,もっとも高い四分位における糖尿病発症リスクの有意な上昇がみられた(vs. もっとも低い四分位)が,女性ではそのような関連はみられなかった。

γ-GTPと糖尿病,およびALTと糖尿病との関連は,空腹時インスリン,BMI,ウエスト/ヒップ比,高感度CRP,飲酒量のいずれで補正を行っても変わらなかった。
ASTと糖尿病との関連は,BMIがもっとも高い三分位,ウエスト/ヒップ比がもっとも高い三分位,および飲酒量が中程度の三分位ではみとめられなかった。

γ-GTP,ALTおよびその他の危険因子についてthe receiver operating characteristic curve(ROC)曲線下面積を計算し,糖尿病新規発症リスク予測能を比較した。
その結果,γ-GTPおよびALTのROC曲線下面積は,AST,空腹時インスリン,ウエスト/ヒップ比,高感度CRPのいずれに比べても有意に大きかった。ただし,BMIとの有意な差はみられなかった。


◇ 結論
肝機能の指標になる酵素と糖尿病新規発症リスクとの関連について,日本人一般住民における9年間の追跡研究による検討を行った。その結果,γ-GTPおよびALTは糖尿病の危険因子であることがわかった。この関連は飲酒量,インスリン抵抗性,炎症マーカーなどとは独立したものであった。また,γ-GTPおよびALTの糖尿病新規発症リスク予測能は,既知の危険因子(空腹時インスリン,ウエスト/ヒップ比,高感度CRP)よりも優っていた。2型糖尿病の発症機序における肝臓の役割は,予想以上に大きい可能性がある。


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