[2008年文献] QT間隔は上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)と相関

QT間隔と上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)との関連について,心血管疾患を有さない地域住民を対象に検討したはじめての研究である。断面解析の結果より,男女とも,baPWVはQT間隔と有意に相関することが示された。この関連は古典的な危険因子による調整を行っても変わらなかったことから,無症候性動脈硬化とQT間隔との独立した関連が示唆される。

Maebuchi D, et al. Arterial stiffness and QT interval prolongation in a general population: the Hisayama study. Hypertens Res. 2008; 31: 1339-45.pubmed

コホート
2002年および2003年に健診を受診した40歳以上の久山町住民3,328人(対象年齢人口の77.6 %)のうち,上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)または心電図データがない242人,末梢動脈疾患疑い(足関節上腕血圧比[ABI]0.9未満)の54人,心房細動または心室内伝導障害(QRS間隔>120 ms)の189人,心拍数が1分あたり100超の30人,空腹時に採血しなかった22人,QT間隔に影響する薬剤を服用していた16人,心血管疾患既往を有する111人,および参加を拒否した30人を除いた2,666人(断面解析)。
男性1,089人,女性1,577人。

baPWV(cm/s)により,全体を以下のように四分位に分けて解析を行った。
   男性: 1,369以下,1,370~1,560,1,561~1,840,1,841以上
   女性: 1,269以下,1,270~1,493,1,494~1,821,1,822以上

心電図から測定したQT間隔は,Bazettの式を用いて心拍数による補正を行い,QTcとして解析を行った。
結 果
◇ 対象背景
QTc(補正QT間隔)の平均は,男性401.7 ms,女性411.7 ms。

上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)が高いグループでは,年齢が高く,高血圧,脂質異常症,糖尿病,肥満,アルコール摂取量が多い傾向がみとめられた。一方,喫煙率はbaPWVと負の関連を示した。

◇ baPWVとQTcの関連
baPWVの四分位間でQTcを比較した結果,男女とも,年齢調整したQTcはbaPWVレベルと直線的に相関した。
各四分位におけるQTc(ms)は以下のとおり。
   男性: 396.7,401.4,403.2,405.6 (P for trend<0.0001)
   女性: 405.7,409.9,413.8,417.8 (P for trend<0.0001)
この結果は,多変量調整を行っても同様だった(P for trend<0.0001)。

◇ 層別化解析の結果
baPWVとQTcとの関連に性差がみられなかったことから,男女をまとめたうえで,高血圧,脂質異常症,糖尿病,肥満,心電図異常,アルコール摂取,喫煙に関して層別化解析を行った。
その結果,いずれの項目についても,baPWVとQTcとの関連に異質性はみとめられず,有意な相互作用もみとめられなかった(P for interaction>0.05)。
さらに,心血管疾患危険因子(高血圧,脂質異常症,糖尿病,肥満,心電図異常,アルコール摂取,喫煙)の保有数(0~1個,2~3個,4~7個)ごとにbaPWVとQTcとの関連を検討した結果,いずれのグループにおいても有意な相関関係がみとめられた。


◇ 結論
QT間隔と上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)との関連について,心血管疾患を有さない地域住民を対象に検討したはじめての研究である。断面解析の結果より,男女とも,baPWVはQT間隔と有意に相関することが示された。この関連は古典的な危険因子による調整を行っても変わらなかったことから,無症候性動脈硬化とQT間隔との独立した関連が示唆される。


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