[2011年文献] 中年期の血圧は,老年期の血圧とは独立して脳血管性認知症リスクと関連

日本人一般住民において,中年期および老年期の血圧値とその後の認知症発症リスクとの関連について検討した。その結果,中年期の高血圧および老年期の高血圧はともに脳血管性認知症発症の有意な危険因子であったが,アルツハイマー病との関連は認められなかった。また,中年期の高血圧は,老年期の血圧値とは独立して,全認知症および脳血管性認知症発症リスクと強く関連していた。これらの結果から,中年期における早期の血圧コントロールにより,その後の認知症を予防できる可能性が示唆された。

Ninomiya T, et al. Midlife and Late-Life Blood Pressure and Dementia in Japanese Elderly: The Hisayama Study. Hypertension. 2011; 58: 22-8.pubmed

コホート
【老年期コホート】
1988年の健診を受診した65~79歳の682人のうち,認知症のある12人,追跡開始時までに死亡した2人を除いた668人(男性266人,女性402人)。2005年11月まで17年間追跡した結果を解析し,老年期の血圧と認知症発症リスクとの関連を検討した。

【中年期コホート】
老年期コホートのうち,1973~1974年(15年前)の健診も受診していた534人(男性210人,女性324人)。2005年11月まで17年間追跡した結果を解析し,中年期の血圧値と認知症発症リスクとの関連を検討した。

血圧のカテゴリーごとの解析には,JNC7の血圧分類(正常血圧/前高血圧/ステージ1高血圧/ステージ2高血圧)を用いた。
結 果
◇ 対象背景
【老年期コホート】
平均年齢は72歳。血圧が高いほど年齢,降圧薬服用率,および糖尿病の割合が高くなっていた。総コレステロール値,女性の割合,教育レベル,および喫煙状況については,血圧値との関連はみとめられなかった。

【中年期コホート】
平均年齢は57歳。血圧が高いほど年齢,総コレステロール,BMIおよび降圧薬服用率が高くなっていた。

追跡期間中に認知症を発症したのは232人。うち,アルツハイマー病は123人,脳血管性認知症は76人であった。

◇ 老年期の血圧と認知症発症リスク(老年期コホート)
老年期の血圧カテゴリーごとの全認知症,脳血管性認知症,アルツハイマー病発症の多変量調整*ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,脳血管性認知症発症リスクについてのみ,血圧値との有意な関連がみとめられた(*調整を行った因子: 年齢,性別,教育レベル,降圧薬の服用,糖尿病,慢性腎臓病,総コレステロール,BMI,脳卒中の既往,喫煙習慣,飲酒,血清ホモシステイン値)。

・全認知症(P for trend=0.29)
   正常血圧:1.0(対照)
   前高血圧:0.89(0.57-1.39),P=0.60
   ステージ1高血圧:1.12(0.71-1.79),P=0.62
   ステージ2高血圧:1.16(0.68-1.98),P=0.59
    
・脳血管性認知症(P for trend=0.003)
   正常血圧:1.0(対照)
   前高血圧:3.20(0.71-14.36),P=0.13
   ステージ1高血圧:4.72(1.05-21.28),P=0.04
   ステージ2高血圧:7.26(1.54-34.17),P=0.01

・アルツハイマー病(P for trend=0.55)
   正常血圧:1.0(対照)
   前高血圧:0.74(0.42-1.27),P=0.27
   ステージ1高血圧:0.93(0.52-1.65),P=0.80
   ステージ2高血圧:0.67(0.33-1.37),P=0.27

◇ 中年期の血圧と認知症発症リスク(中年期コホート)
中年期の血圧カテゴリーごとの全認知症,脳血管性認知症,アルツハイマー病発症の多変量調整*ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,全認知症と脳血管性認知症発症リスクについて,血圧値との有意な関連がみとめられた(*調整を行った因子: 1988年時の年齢,性別,教育レベル,降圧薬の服用,糖尿病,慢性腎臓病,総コレステロール,BMI,脳卒中の既往,喫煙習慣,飲酒)。

・全認知症(P for trend<0.001)
   正常血圧:1.00(対照)
   前高血圧:0.92(0.60-1.41),P=0.71
   ステージ1高血圧:1.73(1.12-2.65),P=0.01
   ステージ2高血圧:1.95(1.18-3.24),P=0.01

・脳血管性認知症(P for trend<0.001)
   正常血圧:1.00(対照)
   前高血圧:2.38(0.77-7.30),P=0.13
   ステージ1高血圧:5.96(2.00-17.77),P=0.001
   ステージ2高血圧:10.07(3.25-31.25),P<0.001

・アルツハイマー病(P for trend=0.45)
   正常血圧:1.00(対照)
   前高血圧:0.77(0.45-1.31),P=0.34
   ステージ1高血圧:1.26(0.72-2.21),P=0.42
   ステージ2高血圧:1.05(0.50-2.22),P=0.89

◇ 中年期から老年期にかけての血圧変化と認知症発症リスク
中年期,老年期とも非高血圧であった人にくらべ,中年期から老年期にかけて非高血圧→高血圧となった人では,多変量調整後の脳血管性認知症発症リスクが3.32倍と有意に高くなっていた。また,中年期に高血圧であった人では,老年期の血圧にかかわらず,脳血管性認知症発症リスクが約5倍と有意に高くなっていた。
全認知症についても,ハザード比の値は脳血管性認知症より小さいものの,同様に中年期に高血圧であった人のリスクが有意に高くなっていた。
血圧上昇とアルツハイマー病発症リスクとの関連はみとめられなかった。


◇ 結論
日本人一般住民において,中年期および老年期の血圧値とその後の認知症発症リスクとの関連について検討した。その結果,中年期の高血圧および老年期の高血圧はともに脳血管性認知症発症の有意な危険因子であったが,アルツハイマー病との関連は認められなかった。また,中年期の高血圧は,老年期の血圧値とは独立して,全認知症および脳血管性認知症発症リスクと強く関連していた。これらの結果から,中年期における早期の血圧コントロールにより,その後の認知症を予防できる可能性が示唆された。


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