[2012年文献] 日本人における空腹時血糖およびHbA1cの糖尿病診断のためのカットオフ値は,米国糖尿病学会の基準とほぼ同じ

米国糖尿病学会による糖尿病診断のためのカットオフ値(空腹時血糖100 mg/dL,HbA1c 5.7%)および耐糖能異常診断のための負荷後2時間血糖のカットオフ値(140 mg/dL)がアジア人にも適当かどうか検討するため,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究(平均追跡期間11.8年)において,それぞれのカットオフ値を算出した。その結果,糖尿病診断のための最適なカットオフ値は空腹時血糖101 mg/dLおよびHbA1c 5.5%で,米国の基準と大きな差はなかった。また,このカットオフ値はBMIに関わらず同等であった。一方,耐糖能異常診断のための負荷後2時間血糖の最適なカットオフ値は124 mg/dLと,米国の基準よりも低く,BMIが高いほどカットオフ値が高くなっていた。以上の結果から,日本人における糖尿病リスク予測のためには,負荷後2時間血糖値よりも空腹時血糖値およびHbA1c値を用いたほうがよいと考えられる。

Mukai N, et al. Cut-off values of fasting and post-load plasma glucose and HbA(1c) for predicting Type 2 diabetes in community-dwelling Japanese subjects: the Hisayama Study. Diabet Med. 2012; 29: 99-106.pubmed

コホート
久山町研究の1988年の健診を受診し,75 g経口糖負荷試験を受けた40~79歳の2480人のうち,糖尿病の297人,追跡開始前に死亡した2人を除いた2181人(男性911人,女性1270人)を2002年11月まで追跡し,追跡健診を受診した1982人(807人,1175人)を解析対象とした。
平均追跡期間は11.8年。

米国糖尿病学会の基準に従い,糖尿病の診断基準は空腹時血糖≧126 mg/dL,負荷後2時間血糖≧200 mg/dL,かつ/または糖尿病薬服用とした。
結 果
◇ 対象背景
年齢57歳,男性40.7%,空腹時血糖99 mg/dL,負荷後2時間血糖118 mg/dL,HbA1c 5.4%,空腹時血糖高値(≧100 mg/dL)43.8%,糖尿病家族歴7.5%,HOMA-β 57.8,BMI 22.9 kg/m2,血圧131 / 78 mmHg,高血圧36.7%,飲酒率30.0%,喫煙率23.0%,定期的な身体活動10.6%。

追跡期間中に糖尿病を発症したのは295人(男性149人,女性146人)。

◇ 糖尿病診断のための空腹時血糖のカットオフ値
空腹時血糖値の十分位による解析を行った結果,値の低いほうから5つ目(97~98 mg/dL)のカテゴリーから糖尿病発症の多変量調整ハザード比が有意に増加した(年齢,性,糖尿病家族歴,空腹時インスリン,BMI,HDL-C,トリグリセリド,高血圧,飲酒,喫煙および定期的な身体活動で調整)。

受信者動作特性(receiver operating characteristic: ROC)解析による最適なカットオフ値は101 mg/dLであった(ROC曲線下面積72.2%,感度67.5%,特異度65.6%)。

BMIの四分位(<20.8,20.8~22.7,22.8~24.8,≧24.9 kg/m2)ごとにカットオフ値を算出した結果,それぞれ101,101,103,101 mg/dLと,BMIによる違いはほとんどみられなかった。

◇ 糖尿病診断のための負荷後2時間血糖のカットオフ値
負荷後2時間血糖値の十分位による解析を行った結果,値の低いほうから7つ目(124~131 mg/dL)のカテゴリーから糖尿病発症の多変量調整ハザード比が有意に増加した。

ROC解析による最適なカットオフ値は124 mg/dLであった(ROC曲線下面積67.8%,感度65.1%,特異度64.2%)。

BMIの四分位ごとにカットオフ値を算出した結果,それぞれ120,123,131,136 mg/dLと,BMIが大きいほどカットオフ値が高くなる傾向がみられた。

◇ 糖尿病診断のためのHbA1cのカットオフ値
HbA1c値の十分位による解析を行った結果,値の低いほうから5つ目のカテゴリー(5.3~5.4%)から糖尿病発症の多変量調整ハザード比が有意に増加した。

ROC解析による最適なカットオフ値は5.5%であった(ROC曲線下面積64.7%,感度66.1%,特異度57.4%)。

BMIの四分位ごとにカットオフ値を算出した結果,5.5%,5.6%,5.5%,5.5%と,BMIによる違いはほとんどみられなかった。


◇ 結論
米国糖尿病学会による糖尿病診断のためのカットオフ値(空腹時血糖100 mg/dL,HbA1c 5.7%)および耐糖能異常診断のための負荷後2時間血糖のカットオフ値(140 mg/dL)がアジア人にも適当かどうか検討するため,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究(平均追跡期間11.8年)において,それぞれのカットオフ値を算出した。その結果,糖尿病診断のための最適なカットオフ値は空腹時血糖101 mg/dLおよびHbA1c 5.5%で,米国の基準と大きな差はなかった。また,このカットオフ値はBMIに関わらず同等であった。一方,耐糖能異常診断のための負荷後2時間血糖の最適なカットオフ値は124 mg/dLと,米国の基準よりも低く,BMIが高いほどカットオフ値が高くなっていた。以上の結果から,日本人における糖尿病リスク予測のためには,負荷後2時間血糖値よりも空腹時血糖値およびHbA1c値を用いたほうがよいと考えられる。


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