[2012年文献] 高齢者におけるADL障害の頻度は約2割で,もっとも多い原因疾患は認知症

高齢の一般住民を対象としたコホート研究の断面解析により,日常生活動作(ADL)障害の頻度とその原因疾患について検討を行った。その結果,ADL障害の頻度が20.1%であることや,ADL障害(とくに全介助)の原因として認知症がもっとも多いことが示された。男性や,65~74歳の比較的若い年齢層のADL障害の原因としては,脳卒中が多くみられた。急速に高齢化が進む日本において,高齢者のADL障害のリスクを減らし,健康寿命を長くしていくためには,認知症や脳卒中の予防手段を確立することが重要と考えられた。

Yoshida D, et al. Prevalence and causes of functional disability in an elderly general population of Japanese: the hisayama study. J Epidemiol. 2012; 22: 222-9.pubmed

コホート
2005年10月~2006年8月に高齢者調査*に参加した1566人のうち,日常生活動作(activity of daily living: ADL)に関するデータに不備のある16人を除いた65歳以上の1550人(男性601人,女性949人)(断面解析)。
高齢者調査*: 久山町研究の通常の健診に加え,高齢者の機能的障害や認知症の実態把握を目的として1985年から開始された包括的な調査。調査対象は,病院に入院中の人や施設に入所中の人も含む。

ADLの調査には自己記入式質問票により調査したBarthel Indexを用い,10項目(食事,入浴,着衣,身だしなみ,排尿のコントロール,排便のコントロール,トイレ動作,ベッドから車いすへの移動,平地での歩行,階段の昇降)について2~4段階で採点した点数を足し合わせ,既存の報告をもとに95点以下をADL障害と定義した(いずれにも問題がない場合は100点)。
さらにADL障害のレベルとして,95点(10項目中1項目に障害)を軽度ADL障害,25~90点を中程度~重度ADL障害,20点以下(10項目中8項目以上に障害,ほぼ寝たきり)を全介助とした。

ADL障害の原因については,高齢者調査および住民健診の結果,病院受診時のカルテや神経学的検査結果,画像所見などの臨床記録などをもとに調査時のADLレベルを決定したと考えられる疾患を原因疾患とし,以下の4つのいずれかに分類した。
  ・認知症(脳血管性認知症,アルツハイマー病,その他の認知症)
  ・脳卒中(脳梗塞,脳出血)
  ・整形外科的疾患(骨折,関節炎,関節リウマチ,その他)
  ・その他の疾患

認知症の診断には,神経心理学的検査(長谷川式認知症スケールおよびMini-Mental State Examination)の結果を用い,両方の検査で30点中21点未満であった人(395人[25.2%])には精密検査を行った。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は76歳で女性の割合は61%。
ADL障害を有する人の割合は20.1%(男性85人,女性226人)であった。このうち軽度のADL障害は25.4%,中程度~重度のADL障害は49.8%,全介助は24.8%であった。
ADL障害を有する人では,有さない人にくらべて年齢が高く,女性が多く,非就業や一人暮らしが多く,施設入所者も多かった。

年齢層ごとにADL障害の割合をみると,65~69歳で4.9%,70~74歳で9.7%,75~79歳で16.0%,80~84歳で29.3%,85歳以上で62.3%と,年齢とともに顕著に増加していた。また,ADL障害の割合は女性のほうが男性よりも有意に高く(P<0.001),とくに85歳以上で差が大きかった。

◇ ADL障害の原因疾患
ADL障害の原因疾患をみると,認知症が32.5%,脳卒中が13.5%,整形外科的疾患が26.0%,その他の疾患が28.0%であった。

これを男女別にみると,男性ではそれぞれ23.5%,24.7%,12.9%,38.9%と脳卒中がもっとも多く,女性では35.8%,9.3%,31.0%,23.9%と認知症および整形外科的疾患が多かった。
年齢層ごとにみると,65~74歳ではそれぞれ14.3%,25.0%,23.2%,37.5%と脳卒中がもっとも多く,75歳以上では36.5%,11.0%,26.7%,25.8%と認知症がもっとも多かった。
ADL障害のレベル別にみると,男女とも全介助では認知症が60%以上ともっとも多く,中程度~重度のADL障害の男性では脳卒中,女性では整形外科的疾患がもっとも多かった。

◇ ADL障害を有する人の居住場所
ADL障害を有する人の居住形態について,ADL障害のレベル別にみたところ,軽度ADL障害の人では91.1%が自宅に居住,6.3%が病院に入院中,2.6%が介護施設に入所中であり,中程度~重度のADL障害の人ではそれぞれ72.3%,17.4%,10.3%であった。一方,全介助の人では,自宅に居住しているのは5.2%のみで,54.6%が病院に入院中,40.2%が介護施設に入所中であった。


◇ 結論
高齢の一般住民を対象としたコホート研究の断面解析により,日常生活動作(ADL)障害の頻度とその原因疾患について検討を行った。その結果,ADL障害の頻度が20.1%であることや,ADL障害(とくに全介助)の原因として認知症がもっとも多いことが示された。男性や,65~74歳の比較的若い年齢層のADL障害の原因としては,脳卒中が多くみられた。急速に高齢化が進む日本において,高齢者のADL障害のリスクを減らし,健康寿命を長くしていくためには,認知症や脳卒中の予防手段を確立することが重要と考えられた。


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