[2013年文献] この50年間で,虚血性心疾患や大動脈解離・大動脈瘤による突然死が増加

日本人一般住民を対象としたコホート研究における約50年間(1962~2009年)の剖検のデータを用いて,突然死(急性症状発現から24時間以内)の頻度および死因の経時的な推移を調査した。その結果,剖検例における突然死の割合に変化はみられなかった。死因をみると,脳卒中による突然死は有意に減少しているのに対して,心疾患(とくに虚血性心疾患)による突然死,および大動脈解離・大動脈瘤による突然死は有意に増加していた。また,急性症状発現から1時間以内の突然死に限った解析でも,心疾患による突然死の有意な増加傾向がみとめられた。以上の結果は,現代の日本人において,欧米化した生活習慣などの影響から動脈硬化性疾患による突然死のリスクが高まっていることを示唆している。

Nagata M, et al. Temporal trends in sudden unexpected death in a general population: The Hisayama Study. Am Heart J. 2013; 165: 932-938.e1.pubmed

コホート
久山町研究の第1~4集団の健診(1961年,1974年,1988年,2002年)を受診し,1962年1月~2009年12月の期間に外的要因(外傷,中毒,自殺)を除く原因によって死亡した20歳以上の2464人のうち,剖検を受けた1934人(剖検率78.5%)。

突然死(sudden unexpected death)の定義は,日常生活に制限がなく,入院もしていなかった人における,急性症状の発現から24時間以内の死亡とした。

剖検所見をもとに,突然死の原因を以下の4つのカテゴリーに分類した。
脳卒中,心疾患,大動脈解離・大動脈瘤,その他
結 果
◇ 対象背景
剖検された1934人のうち,突然死は204人であった。
原因の内訳は以下のとおり。
 ・脳卒中68人(うち脳内出血44人,くも膜下出血20人,脳梗塞4人)
 ・心疾患100人(うち虚血性心疾患59人,原因不明の心停止23人,高血圧性心疾患10人,弁膜疾患4人,心アミロイドーシス2人,拡張型心筋症1人,心室細動1人)
 ・大動脈解離・大動脈瘤24人(うち大動脈解離15人,大動脈瘤破裂9人)
 ・その他12人(うち慢性閉塞性肺疾患2人,気管支喘息2人,肺塞栓1人,肺出血1人,気管支肺炎1人,脳ヘルニア1人,食道静脈瘤破裂1人,子宮外妊娠による破裂1人)

突然死した人では,非突然死の人に比して死亡時年齢が低く,男性の割合が高かった。また,非突然死にくらべて死因としての脳卒中,心疾患および大動脈解離・大動脈瘤の割合が高く,その他の割合が低かった。

◇ 突然死,およびその内訳の推移
1962~1973年,1974~1985年,1986~1997年,1998~2009年の4つの期間における死亡時の平均年齢をみると,非突然死では継続して有意に上昇しているのに対し,突然死では1962~1973年から1974~1985年にかけて有意に上昇したのちは変化していない。

剖検された1934人における突然死の割合(性・年齢調整),およびその内訳の推移は以下のとおりで(それぞれ1962~1973年,1974~1985年,1986~1997年,1998~2009年の値,*P<0.05 vs. 1962~1973年),突然死の割合に大きな変化はみられなかったが,内訳をみると,脳卒中による突然死は有意に減少している一方で,心疾患および大動脈解離・大動脈瘤による突然死は有意に増加していた。

  突然死: 13.1%,13.4%,15.0%,14.6%(P for trend=0.80)
   脳卒中: 8.0%,5.0%,2.3%*,2.1%*(P for trend<0.001)
    脳内出血: 5.6%,2.7%*,1.4%*,1.4%*(P for trend<0.001)
    くも膜下出血: 1.9%,1.8%,0.9%,0.7%(P for trend=0.11)
    脳梗塞: 0.5%,0.5%,0%,0%(P for trend=0.08)
   心疾患: 4.0%,6.2%,8.6%*,9.7%*(P for trend=0.02)
    虚血性心疾患: 2.1%,4.5%,3.7%,6.6%*(P for trend=0.10)
    非虚血性心疾患: 1.9%,1.7%,4.9%*,3.1%(P for trend=0.08)
   大動脈解離・大動脈瘤: 0.2%,1.2%,2.9%*,2.8%*(P for trend=0.01)
   その他: 0.9%,1.0%,1.2%,0%(P for trend=0.25)

◇ 急性症状の発現から1時間以内の死亡
突然死の定義を急性症状の発現から1時間以内の死亡とした場合についても解析を行った。剖検された1934人における1時間以内の突然死の割合(性・年齢調整),およびその内訳の推移は以下のとおりで(それぞれ1962~1973年,1974~1985年,1986~1997年,1998~2009年の値,*P<0.05 vs. 1962~1973年),心疾患(とくに虚血性心疾患)による1時間以内の突然死には有意な増加傾向がみられたが,脳卒中による1時間以内の突然死の割合は変わらなかった。

  1時間以内の突然死: 2.5%,5.0%,9.2%*,7.6%*(P for trend=0.004)
   脳卒中: 0.2%,1.0%,0.6%,0.7%(P for trend=0.57)
   心疾患: 1.6%,3.2%,6.3%*,5.2%*(P for trend=0.01)
    虚血性心疾患: 0.7%,2.2%,2.9%,4.2%*(P for trend=0.02)
    非虚血性心疾患: 0.9%,1.0%,3.4%*,1.0%(P for trend=0.29)
   大動脈解離・大動脈瘤: 0.2%,0.5%,1.7%,1.7%(P for trend=0.06)
   その他: 0.5%,0.3%,0.6%,0%(P for trend=0.39)


◇ 結論
日本人一般住民を対象としたコホート研究における約50年間(1962~2009年)の剖検のデータを用いて,突然死(急性症状発現から24時間以内)の頻度および死因の経時的な推移を調査した。その結果,剖検例における突然死の割合に変化はみられなかった。死因をみると,脳卒中による突然死は有意に減少しているのに対して,心疾患(とくに虚血性心疾患)による突然死,および大動脈解離・大動脈瘤による突然死は有意に増加していた。また,急性症状発現から1時間以内の突然死に限った解析でも,心疾患による突然死の有意な増加傾向がみとめられた。以上の結果は,現代の日本人において,欧米化した生活習慣などの影響から動脈硬化性疾患による突然死のリスクが高まっていることを示唆している。


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