[2013年文献] 男性では,メタボリックシンドロームと抑うつ状態が関連

メタボリックシンドロームと抑うつ状態との関連について,日本人一般住民コホートにおける断面解析により検討した結果,男性ではメタボリックシンドロームが抑うつ状態と有意に関連することが示された。このことから,メタボリックシンドロームの男性に対して抑うつ症状のスクリーニングを行うことにより,わが国における精神疾患による負担を軽減できる可能性がある。

Sekita A, et al. Elevated depressive symptoms in metabolic syndrome in a general population of Japanese men: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2013; 13: 862.pubmed

コホート
2007~2008年の健診を受診した40歳以上の3376人(参加率78.0%)のうち,メタボリックシンドローム(MetS)または抑うつ症状に関するデータに不備のある236人を除外した3113人(断面解析)。

国際糖尿病連盟(IDF)など国際6学会による2009年の共同声明*に基づき,以下の5つの基準のうち3つ以上を満たす場合にMetSと診断した。
  腹部肥満: 腹囲が男性≧90 cm,女性≧80 cm
  血圧高値: 血圧≧130 / 85 mmHgまたは降圧薬服用
  高トリグリセリド血症: トリグリセリド値≧150 mg/dL
  低HDL-C血症: HDL-C値が男性<40 mg/dL,女性<50 mg/dL
  血糖高値: 空腹時血糖値≧100 mg/dLまたは治療中

*国際糖尿病連盟(IDF)の疫学・予防委員会,米国国立心肺血液研究所(NHLBI),米国心臓協会(AHA),世界心臓連合(WHF),国際動脈硬化学会,国際肥満学会の6学会が2009年に発表した暫定的な共同声明(Circulation. 2009; 120: 1640-5. PMID: 19805654)。腹部肥満を必須項目としていたIDFの2006年の診断基準とは異なり,腹囲を血圧や血糖値など他の項目と同列に扱っている。

抑うつ症状の評価にはCES-D(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)による自己評価尺度(20項目)を用い,16点以上または抗うつ薬服用の場合に「抑うつ状態」とした。
結 果
◇ 対象背景
男性のメタボリックシンドローム(MetS)は388人,非MetSは965人で,女性ではそれぞれ499人,1261人であった。
男女ともMetSの人は,非MetSの人にくらべて腹囲,収縮期・拡張期血圧値,総コレステロール値,トリグリセリド値,空腹時血糖値,降圧薬服用率および糖尿病治療薬の服用率が高く,HDL-C値が低かった。またMetSの女性は,非MetSの女性にくらべて年齢が高く,飲酒率が低かった。

◇ MetSと抑うつ状態
抑うつ状態の割合は,男性4.3%(58人),女性6.3%(111人)であった。

MetSの人における抑うつ状態の多変量調整オッズ比(vs. 非MetS)は,男性で1.82(95%信頼区間1.05-3.15,P=0.03)と有意に高くなっていたが,女性では有意な増加はみとめられなかった(多変量調整オッズ比0.67,0.42-1.08,P=0.10)。

◇ MetS構成因子の保有数と抑うつ状態
男性では,MetS構成因子を4つ以上もつ人において,0~1つの人に比した抑うつ状態の多変量調整オッズ比が2.47(95%信頼区間1.22-4.96)と有意に増加しており,構成因子の数が多くなるほどオッズ比が高くなる有意な傾向もみとめられたが(P for trend=0.01),女性ではMetS構成因子の数と抑うつ状態のオッズ比との有意な関連はみとめられなかった。

◇ MetSの各構成因子と抑うつ状態
MetSの5つの構成因子と抑うつ状態との関連をみると,男性では低HDL-C血症の人,ならびに空腹時血糖高値の人において,抑うつ状態のオッズ比が有意に高くなっていた(低HDL-C血症: 多変量調整オッズ比2.44 vs. 低HDL-C血症なし,95%信頼区間1.04-5.69,空腹時血糖高値: 1.93 vs. 正常,1.07-3.49)。
一方,女性では,いずれの構成因子についても抑うつ状態との有意な関連はみられなかった。

◇ 結論
メタボリックシンドロームと抑うつ状態との関連について,日本人一般住民コホートにおける断面解析により検討した結果,男性ではメタボリックシンドロームが抑うつ状態と有意に関連することが示された。このことから,メタボリックシンドロームの男性に対して抑うつ症状のスクリーニングを行うことにより,わが国における精神疾患による負担を軽減できる可能性がある。


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