[2013年文献] HbA1c値は心血管疾患発症リスクと関連

HbA1c値と心血管疾患発症リスクとの関連,ならびに,他の危険因子にHbA1cを加えることで心血管疾患発症リスクの識別能が改善するかどうかについて,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究(7年間追跡)による検討を行った。その結果,HbA1c値の上昇は,糖尿病の診断基準に満たない段階から心血管疾患,とくに冠動脈疾患および虚血性脳卒中発症リスクと有意に関連することが示された。また,主要な危険因子からなる多変量モデルにHbA1c値を加えることで,心血管疾患発症リスク予測能は有意に改善した。

Ikeda F, et al. Haemoglobin A1c even within non-diabetic level is a predictor of cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama Study. Cardiovasc Diabetol. 2013; 12: 164.pubmed

コホート
2002年の健診を受診した40~79歳の3000人(参加率77.0%)のうち,脳卒中または冠動脈疾患既往のある146人,およびHbA1c値を測定していない3人を除いた2851人(男性1223人,女性1628人)を,2009年まで7年間追跡した。

糖尿病治療を受けていた人は133人。
HbA1c(NGSP値)により,糖尿病治療を受けていない人を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を行った。
  ≦5.0%(955人),5.1~5.4%(923人),5.5~6.4%(736人),≧6.5%(104人)

多変量モデルの心血管疾患発症リスク予測能については,C統計量,純再分類改善度(net reclassification improvement: NRI),統合識別改善度(integrated discrimination improvement: IDI)を用いて評価を行った。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は58.8歳。
HbA1c値が高いカテゴリーほど高い値を示していたのは,年齢,血圧,BMI,総コレステロール値,高血圧の割合で,HbA1c値が高いカテゴリーほど低い値を示していたのはHDL-C,喫煙率,飲酒率。
平均HbA1c値は,糖尿病治療を受けていない人では5.3%,治療を受けている人では7.3%であった。

◇ HbA1c値と心血管疾患発症リスク
追跡期間中に心血管疾患(CVD)をはじめて発症したのは119人(男性75人,女性44人)。
冠動脈疾患は48人(37人,11人)で,この内訳をみると,急性心筋梗塞が29人,無症候性心筋梗塞が4人,発症から1時間以内の心臓突然死が3人,血行再建術が12人であった。
脳卒中については,虚血性脳卒中が46人(24人,22人),出血性脳卒中が29人(17人,12人)であった。

HbA1c値が高いカテゴリーほど,CVD発症の多変量調整ハザード比は増加しており,HbA1c値5.5~6.4%,および≧6.5%において,それぞれ≦5.0%に比した有意なリスク増加がみとめられた。( 年齢,性別,高血圧,心電図異常,BMI,総コレステロール,HDL-C,喫煙,飲酒,身体活動により調整)

HbA1c値のカテゴリーとCVDおよび各病型の発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり(それぞれ≦5.0%,5.1~5.4%,5.5~6.4%,≧6.5%の値)(*P<0.05,**P<0.01)。
 CVD: 1.00,1.60(0.90-2.85),2.26(1.29-3.95)**,4.43(2.09-9.37)**
  冠動脈疾患: 1.00,1.15(0.45-2.93),2.11(0.90-4.95),3.55(1.11-11.3)*
  虚血性脳卒中: 1.00,2.57(0.91-7.29),3.57(1.27-10.0)*,9.65(2.81-33.1)**
  出血性脳卒中: 1.00,1.42(0.48-4.14),1.87(0.66-5.25),2.41(0.46-12.5)

◇ CVDの絶対リスク予測におけるHbA1c値のインパクト
CVD発症の絶対リスクを評価するためのベーシックモデル(年齢,性別,高血圧,心電図異常,BMI,総コレステロール,HDL-C,喫煙,飲酒,身体活動を含む)にHbA1c値を加えるかどうかによって,C統計量により評価した識別能(discrimination)が改善するかどうかを検討した。その結果,上記の変数のみのモデルのC統計量は0.762であったが,HbA1c値(連続変数)を含めることにより,0.789と有意に増加した(P=0.006)。
また,ベーシックモデルにHbA1c値を加えることによる純再分類改善度(NRI)は0.105(P=0.004),統合識別改善度(IDI)も0.021(P=0.004)と,いずれも有意な改善を示していた。

サブグループ解析として,75 g経口糖負荷試験を受けた2415人を対象に,HbA1c値と空腹時血糖値または負荷後2時間血糖値のCVD発症リスク予測能を比較した結果,有意な差はみとめられなかった。


◇ 結論
HbA1c値と心血管疾患発症リスクとの関連,ならびに,他の危険因子にHbA1cを加えることで心血管疾患発症リスクの識別能が改善するかどうかについて,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究(7年間追跡)による検討を行った。その結果,HbA1c値の上昇は,糖尿病の診断基準に満たない段階から心血管疾患,とくに冠動脈疾患および虚血性脳卒中発症リスクと有意に関連することが示された。また,主要な危険因子からなる多変量モデルにHbA1c値を加えることで,心血管疾患発症リスク予測能は有意に改善した。


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