[2014年文献] non-HDL-C高値は,冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の危険因子

肥満やインスリン抵抗性が欧米にくらべて少ない日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,non-HDL-C値と冠動脈疾患,ならびに脳卒中と各病型の発症リスクとの関連を検討した。24年間の追跡の結果,non-HDL-C値が高いほど,冠動脈疾患発症リスクおよびアテローム血栓性脳梗塞発症リスクが有意に高いこと,ならびに心原性脳塞栓発症リスクが有意に低いことが示された。また,non-HDL-C値が高い人では,LDL-C値の高低にかかわらず,虚血性心疾患の発症リスクが有意に高くなっていた。

Imamura T, et al. Non-high-density lipoprotein cholesterol and the development of coronary heart disease and stroke subtypes in a general Japanese population: The Hisayama Study. Atherosclerosis. 2014; 233: 343-348.pubmed

コホート
1983年の健診を受診した40歳以上の2551人のうち,追跡開始前に死亡した3人および脳卒中または心筋梗塞既往のある96人を除外した2452人(男性1046人,女性1406人)を,2007年10月まで24年間追跡。

ベースラインのnon-HDL-C値の四分位により,対象者を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を行った。
  Q1(<121 mg/dL): 601人,Q2(122~145 mg/dL): 620人,Q3(146~173 mg/dL): 623人,Q4(≧174 mg/dL): 608人
結 果
◇ 対象背景
non-HDL-C値が高いカテゴリーほど有意に高い値を示していたのは,年齢,総コレステロール値,トリグリセリド値,糖尿病の割合,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,および高血圧の割合で,non-HDL-C値が高いカテゴリーほど有意に低い値を示していたのは,男性の割合,HDL-C値,現在飲酒率,および現在喫煙率であった。

◇ non-HDL-C値と冠動脈疾患(CHD)および脳卒中発症率
CHD発症率(年齢・性により調整)は,non-HDL-C値が高いカテゴリーほど有意に高くなっていた(P for trend<0.001)。
脳卒中発症率(年齢・性により調整)については,non-HDL-C値との有意な関連はみられず,虚血性脳卒中と出血性脳卒中のそれぞれについても結果は同様であった。ただし,虚血性脳卒中のうちラクナ梗塞についてはnon-HDL-C値と有意な正の関連(P for trend=0.01),心原性脳塞栓については有意な負の関連がみとめられた(P for trend=0.007)。

◇ non-HDL-C値とCHDおよび脳卒中発症リスク
non-HDL-CのカテゴリーごとのCHD,脳卒中および各病型の発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,CHDおよびアテローム血栓性脳梗塞について,non-HDL-C値が高いほど有意にリスクが高くなっていた。心原性脳塞栓の発症リスクは,non-HDL-C値が高いほど有意に低下した。
年齢,性,糖尿病,BMI,収縮期血圧,心電図異常,現在飲酒,現在喫煙および習慣的な運動により調整)

CHD: [Q1]1.00,[Q2]1.64(1.00-2.71),[Q3]1.79(1.09-2.95),[Q4]1.96(1.19-3.24),P for trend=0.01
全脳卒中: 1.00,0.84(0.60-1.17),0.90(0.65-1.24),1.08(0.78-1.50),P for trend=0.47
 虚血性脳卒中: 1.00,0.83(0.56-1.23),0.84(0.57-1.24),1.05(0.71-1.54),P for trend=0.68
  アテローム血栓性脳梗塞: 1.00,1.36(0.59-3.12),1.37(0.59-3.18),2.33(1.04-5.23),P for trend=0.04
  ラクナ梗塞: 1.00,0.99(0.51-1.93),1.10(0.58-2.10),1.61(0.87-2.98),P for trend=0.07
  心原性脳塞栓: 1.00,0.52(0.27-0.996),0.49(0.25-0.94),0.29(0.13-0.64),P for trend=0.002
 出血性脳卒中: 1.00,0.90(0.49-1.66),1.07(0.59-1.93),1.21(0.66-2.21),P for trend=0.43

non-HDL-C値とCHD発症リスクとの関連を男女別に検討すると,女性では多変量調整後も有意な正の関連がみとめられたが(P for trend=0.03),男性では多変量調整により有意な関連が消失した(P for trend=0.15)。non-HDL-C値と虚血性脳卒中各病型の発症リスクとの関連については,症例数が少ないため男女別の検討は行うことができなかった。

◇ non-HDL-CとLDL-Cの組み合わせと虚血性心血管疾患リスク
対象者のうち空腹時採血が行われた2350人において,LDL-C値(高値: 140 mg/dL以上,低値: 140 mg/dL未満)ならびにnon-HDL-C値(高値: 170 mg/dL以上,低値: 170 mg/dL未満)の2つを組み合わせた4群間で虚血性心血管疾患(CHD+心原性脳塞栓を除く虚血性脳卒中)発症の多変量調整ハザード比を比較した結果は以下のとおりで,LDL-Cとnon-HDL-Cのいずれかが高値の場合は有意にリスクが増加していた。
  LDL-C低値+non-HDL-C低値: 1(対照)
  LDL-C低値+non-HDL-C高値: 2.09(1.06-4.11),P=0.03
  LDL-C高値+non-HDL-C低値: 1.61(1.08-2.40),P=0.02
  LDL-C高値+non-HDL-C高値: 1.47(1.13-1.90),P=0.004


◇ 結論
肥満やインスリン抵抗性が欧米にくらべて少ない日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,non-HDL-C値と冠動脈疾患,ならびに脳卒中と各病型の発症リスクとの関連を検討した。24年間の追跡の結果,non-HDL-C値が高いほど,冠動脈疾患発症リスクおよびアテローム血栓性脳梗塞発症リスクが有意に高いこと,ならびに心原性脳塞栓発症リスクが有意に低いことが示された。また,non-HDL-C値が高い人では,LDL-C値の高低にかかわらず,虚血性心疾患の発症リスクが有意に高くなっていた。


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