[2014年文献] 1988~2002年にかけ,糖尿病は男性14.6%→20.8%,女性9.1%→11.2%と有意に増加

地域一般住民を対象に,75 g経口耐糖能試験により診断した耐糖能異常や糖尿病有病率,ならびにその危険因子の保有状況について,1988~2002年の14年間にわたる長期的な推移を調べた。その結果,糖尿病の有病率(年齢調整)は男性で1.4倍(14.6%→20.8%),女性で1.2倍(9.1%→11.2%)といずれも有意に増加していた。耐糖能異常(IGT)と空腹時血糖異常(IFG)をあわせた前糖尿病についても,男性で1.3倍(26.2%→35.3%),女性で1.1倍(22.5%→25.1%)といずれも有意な増加がみられた。高齢の男性では,この間に肥満や腹部肥満が増加する一方で運動習慣をもつ人が少なくなっており,これらが糖尿病や前糖尿病の増加に影響している可能性がある。

Mukai N, et al. Trends in the prevalence of type 2 diabetes and prediabetes in community-dwelling Japanese subjects: The Hisayama Study. J Diabetes Investig. 2014; 5: 162-9.pubmed

コホート
1988年と2002年に実施された,久山町住民を対象とした糖尿病有病率の断面調査。

・1988年
健診への参加に同意した40~79歳の2587人(参加率80.2%)のうち,75 g経口糖負荷試験(OGTT)前に朝食をとっていた82人,インスリン治療中の10人,糖負荷中に嘔気または倦怠感を訴えた15人を除く2480人がOGTTを完了。ここに,インスリン治療中の糖尿病患者10人(主治医により確定診断済)を加えた2490人(男性1077人,女性1413人)を解析対象とした。

・2002年
健診への参加に同意した40~79歳の3000人(参加率77.0%)のうち,検査前に朝食をとっていた46人,インスリン治療中の32人,OGTTに同意しなかった100人を除いた2822人がOGTTを完了。ここに,インスリン治療中の糖尿病患者30人(1型糖尿病を除く)を加えた2852人(男性1257人,女性1595人)を解析対象とした。

耐糖能については,OGTT(前夜から12時間以上の絶食のうえ,午前8時~10時30分のあいだに実施)の結果に基づき,以下のWHOの基準に従って診断した。
  正常耐糖能(NGT): 空腹時血糖値110 mg/dL未満,かつ負荷後2時間血糖値140 mg/dL未満
  空腹時血糖異常(IFG): 空腹時血糖値110 mg/dL以上126 mg/dL未満,かつ負荷後2時間血糖値140 mg/dL未満
  耐糖能異常(IGT): 空腹時血糖値126 mg/dL未満,かつ負荷後2時間血糖値140 mg/dL以上200 mg/dL未満
  糖尿病: 空腹時血糖値126 mg/dL以上かつ/または負荷後2時間血糖値200 mg/dL以上または糖尿病薬服用
結 果
◇ 対象背景
1988年から2002年にかけて,有意な増加がみられたのは,年齢,空腹時血糖値,負荷後2時間血糖値,BMI(男性のみ),肥満の割合(男性のみ),腹囲(男性のみ),腹部肥満の割合(男性のみ),HDL-C,拡張期血圧(男性のみ),および現在飲酒率。
一方,1988年から2002年にかけて有意な低下がみられたのは,腹部肥満の割合(女性のみ),総コレステロール(女性のみ),トリグリセリド(女性のみ),収縮期血圧(女性のみ),および現在喫煙率(男性のみ)。
高血圧や運動習慣(週3回以上)の割合については,男女とも有意な変化はみられなかった。

◇ 1988年から2002年にかけての有病率(年齢調整)の推移
・男性
  糖尿病: 14.6%→20.8%と有意に増加した(P<0.001)。
  耐糖能異常(IGT): 18.3%→20.2%と増加していたが,有意差はみられず。
  空腹時血糖異常(IFG): 7.9%→15.1%と有意に増加した(P<0.001)。
  前糖尿病(IGT+IFG): 26.2%→35.3%と有意に増加した(P<0.001)。

・女性
  糖尿病: 9.1%→11.2%と有意に増加した(P=0.002)。
  IGT: 17.9%→18.8%と増加していたが,有意差はみられず。
  IFG: 4.6%→6.3%と有意に増加した(P=0.049)。
  前糖尿病(IGT+IFG): 22.5%→25.1%と有意に増加した(P=0.04)。

◇ 年齢層ごとにみた糖尿病有病率の推移
・男性
以下のように,とくに高齢者における増加率が大きかった。
また,1988年時には50~59歳に有病率のピークがあったのに対し,2002年時には年齢が高くなるほど有病率が高くなる有意な傾向がみとめられた(P for trend<0.001)。
  40~49歳: 8.1%→12.1%
  50~59歳: 21.9%→22.1%
  60~69歳: 16.6%→29.3%(P<0.001)
  70~79歳: 13.9%→32.0%(P<0.001)

・女性
以下のように,70歳代でのみ有意な増加がみとめられた。
また,1988年時には60~69歳に有病率のピークがあったのに対し,2002年時には年齢が高くなるほど有病率が高くなる有意な傾向がみとめられた(P for trend<0.001)。
  40~49歳: 4.1%→5.4%
  50~59歳: 10.1%→11.5%
  60~69歳: 15.3%→16.4%
  70~79歳: 12.7%→21.0%(P<0.05)

◇ 糖尿病に関連する因子の変化
性および年齢層(40~49歳/50~59歳/60~69歳/70~79歳)ごとに,1988~2002年にかけての,糖尿病に関連する因子の値や保有率の変化をみた結果は以下のとおり。

・BMI
男性では,40歳代を除くすべての年齢層で有意な増加がみられた。
女性では,40歳代では有意に低下し,70歳代では有意に増加していた。

・肥満の割合
男性では,60歳代と70歳代で有意な増加がみられた。
女性では,40歳代では有意に低下し,70歳代では有意に増加していた。

・腹囲
男性では,60歳代と70歳代で有意な増加がみられた。
女性では,40歳代と50歳代では有意に低下し,70歳代では有意に増加していた。

・腹部肥満の割合
男性では,70歳代でのみ有意な増加がみられた。
女性では,40歳代と50歳代では有意に低下し,70歳代では有意に増加していた。

・週3回以上の運動習慣の割合
男性では,70歳代でのみ有意に低下していた。
女性では,年齢層を問わず有意な変化はみられなかった。


◇ 結論
地域一般住民を対象に,75 g経口耐糖能試験により診断した耐糖能異常や糖尿病有病率,ならびにその危険因子の保有状況について,1988~2002年の14年間にわたる長期的な推移を調べた。その結果,糖尿病の有病率(年齢調整)は男性で1.4倍(14.6%→20.8%),女性で1.2倍(9.1%→11.2%)といずれも有意に増加していた。耐糖能異常(IGT)と空腹時血糖異常(IFG)をあわせた前糖尿病についても,男性で1.3倍(26.2%→35.3%),女性で1.1倍(22.5%→25.1%)といずれも有意な増加がみられた。高齢の男性では,この間に肥満や腹部肥満が増加する一方で運動習慣をもつ人が少なくなっており,これらが糖尿病や前糖尿病の増加に影響している可能性がある。


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