[2015年文献] ACE遺伝子多型DD型をもつ人では,高脂血症と冠動脈疾患発症リスクとの関連が強い

日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型と冠動脈疾患(CHD)発症リスクとの関連を検討するとともに,遺伝子型によって既知の心血管危険因子とCHD発症リスクとの関連が異なるかどうかを検討した。19年間の追跡の結果,ACE遺伝子多型はCHD発症リスクとは関連していなかった。ただし,既知の心血管危険因子のうち,高脂血症とCHD発症リスクとの関連は,IIまたはID型に比してDD型で強いことが示された。この結果から,CHD予防のために,DD型をもつ人ではとくに高脂血症の管理が重要であると考えられる。

Kondo H, et al. Angiotensin I-converting enzyme gene polymorphism enhances the effect of hypercholesterolemia on the risk of coronary heart disease in a general Japanese population: the hisayama study. J Atheroscler Thromb. 2015; 22: 390-403.pubmed

コホート
1988年の健診を受診した40歳以上の2742人(参加率80.9%)のうち,冠動脈疾患(CHD)および脳卒卒中既往のある102人,および健診期間中に死亡した6人を除く2634人を,2007年11月まで19年間追跡。健診時の血液検査または死亡後の剖検でアンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子型が決定できている2125人(男性866人,女性1259人)を解析対象とした。

ACE遺伝子の16番目のイントロンに存在する287塩基対のAlu反復配列の挿入(insertion: I)または欠失(deletion: D)により,以下のように対象者の遺伝子型(II/ID/DD)による3つのカテゴリーを設定した。
  II: 918人(43.2%),ID: 927人(43.6%),DD: 280人(13.2%)

CHDの定義は,急性心筋梗塞,無症候性心筋梗塞,または発症後1時間以内の心突然死,冠動脈バイパス術・冠動脈形成術後の冠動脈疾患のいずれかとした。
結 果
◇ 対象背景
アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子型(II/ID/DD)のあいだでおもな対象背景を比較したところ,Dアリルをもつ人で定期的な身体活動の割合が高い(P for trend=0.03)ことを除き,有意な差はみとめられなかった。

追跡期間中に初めて冠動脈疾患(CHD)を発症したのは161人(男性98人,女性63人)。

◇ ACE遺伝子多型とCHD発症リスク
CHD発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,遺伝子型による有意な差はみられなかった(年齢,性,高血圧,糖尿病,高脂血症,肥満,心電図異常,喫煙,アルコール摂取,定期的な身体活動で調整)。
  II: 1.00(対照)
  ID: 0.85(0.60-1.20),P=0.36
  DD: 1.18(0.75-1.85),P=0.47

この結果は,II+ID vs. DD,II vs. ID+DD,およびI vs. Dの比較を行っても同様であった。

◇ 既知の心血管危険因子とCHDとの関連に対するACE遺伝子多型の影響
ACE遺伝子のサブグループ(II+ID/DD)のあいだで,既知の心血管危険因子とCHD発症リスクとの関連の強さを比較した。
その結果,高脂血症についてのみ有意な相互作用がみとめられ(P for interaction=0.03),高脂血症の人のCHD発症の多変量調整ハザード比はII+IDでは1.53(95%信頼区間1.06-2.20)であるのに対し,DDでは4.02(1.79-9.02)であった。
IアリルとDアリルとの比較でも同様の結果が得られたが(高脂血症についてのみ,P for interaction=0.006と有意),II とII+IDとの比較ではいずれの危険因子についても有意な相互作用はみられなかった。

CHDの累積発症率を,「II/ID+高脂血症なし(対照)」「II/ID+高脂血症あり」「DD+高脂血症なし」「DD+高脂血症あり」のあいだで比較したところ,「DD+高脂血症あり」で有意に累積発症率が高かった(P<0.05)。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型と冠動脈疾患(CHD)発症リスクとの関連を検討するとともに,遺伝子型によって既知の心血管危険因子とCHD発症リスクとの関連が異なるかどうかを検討した。19年間の追跡の結果,ACE遺伝子多型はCHD発症リスクとは関連していなかった。ただし,既知の心血管危険因子のうち,高脂血症とCHD発症リスクとの関連は,IIまたはID型に比してDD型で強いことが示された。この結果から,CHD予防のために,DD型をもつ人ではとくに高脂血症の管理が重要であると考えられる。


▲このページの一番上へ

--- epi-c.jp 収載疫学 ---
Topics
【epi-c研究一覧】 CIRCS | EPOCH-JAPAN | Funagata Diabetes Study(舟形スタディ) | HIPOP-OHP | Hisayama Study(久山町研究)| Iwate KENCO Study(岩手県北地域コホート研究) | JACC | JALS | JMSコホート研究 | JPHC | NIPPON DATA | Ohasama Study(大迫研究) | Ohsaki Study(大崎研究) | Osaka Health Survey(大阪ヘルスサーベイ) | 大阪職域コホート研究 | SESSA | Shibata Study(新発田研究) | 滋賀国保コホート研究 | Suita Study(吹田研究) | Takahata Study(高畠研究) | Tanno Sobetsu Study(端野・壮瞥町研究) | Toyama Study(富山スタディ) | HAAS(ホノルルアジア老化研究) | Honolulu Heart Program(ホノルル心臓調査) | Japanese-Brazilian Diabetes Study(日系ブラジル人糖尿病研究) | NI-HON-SAN Study
【登録研究】 OACIS | OKIDS | 高島循環器疾患発症登録研究
【国際共同研究】 APCSC | ERA JUMP | INTERSALT | INTERMAP | INTERLIPID | REACH Registry | Seven Countries Study
【循環器臨床疫学のパイオニア】 Framingham Heart Study(フラミンガム心臓研究),動画編
【最新の疫学】 Worldwide文献ニュース | 学会報告
………………………………………………………………………………………
copyright Life Science Publishing Co., Ltd. All Rights Reserved.