[2008年文献] 腹部肥満者の高血圧リスクは非腹部肥満者の2.33倍

日本人地域住民を対象として腹部肥満と高血圧発症との関連を検討した結果,腹部肥満者の高血圧発症リスクは,非腹部肥満者の2.33倍であることが示された。またベースラインの腹囲が大きいほど高血圧発症率が高くなることから,腹囲に注意する必要性が示唆された。

Ohnishi H, et al. Incidence of hypertension in individuals with abdominal obesity in a rural Japanese population: the Tanno and Sobetsu study. Hypertens Res. 2008; 31: 1385-90.pubmed

コホート
1994年のベースライン健診時および2002年の追跡健診の両方を受診した30歳以上の712人から,血圧および腹囲のデータに不備がある14人,ベースライン時に高血圧がみとめられた140人,降圧薬治療中だった146人,および冠動脈疾患または脳血管疾患のための薬物治療を受けていた16人を除いた396人(追跡8年間)。

腹部肥満の基準は,腹囲が男性≧85 cm,女性≧90 cmとし,全体を腹部肥満(AO: abdominal obesity)群,および非AO群の2つに分けて解析を行った。
結 果
◇ 対象背景
腹部肥満(AO: abdominal obesity)群は84人,非AO群は312人だった。
両群の対象背景は以下のとおり(すべて群間差のP<0.05)。
   年齢: AO群59.5歳,非AO群57.2歳
   男性/女性: 75人/9人,112人/200人
   BMI: 25.5 kg/m2,22.4 kg/m2
   血圧: 126.3 / 77.4 mmHg,121.3 / 73.5 mmHg
   総コレステロール: 193.8 mg/dL,188.4 mg/dL
   トリグリセリド: 159.8 mg/dL,110.1 mg/dL
   HDL-C: 48.6 mg/dL,58.1 mg/dL
   空腹時血糖: 105.1 mg/dL,92.1 mg/dL

◇ 腹部肥満と高血圧発症率
ベースライン時の腹囲によって男女をそれぞれ以下の4カテゴリーに分け,追跡期間中の高血圧発症率を比較した。
   男性: 70~79 cm(75人),80~89 cm(73人),90~99 cm(35人),100 cm以上(4人)
   女性: 60~69 cm(60人),70~79 cm(104人),80~89 cm(36人),90 cm以上(9人)
その結果,男女とも,腹囲と高血圧発症率は有意な相関を示した(それぞれP for trend=0.04,P for trend=0.0001)。

◇ 腹部肥満状況の変化と高血圧発症率
ベースライン時から追跡時までの腹部肥満状況の変化により,全体を非AO→非AO(233人),非AO→AO(79人),AO→非AO(15人),AO→AO(69人)の4カテゴリーに分けて追跡時の高血圧発症率を比較した。
・ ベースライン時の非AO群
追跡時にAOとなった人における高血圧発症率(45.6 %)は,追跡時も非AOのままだった人(31.8 %)にくらべ有意に高かった(P=0.019)。
・ ベースライン時のAO群
追跡時もAOだった人における高血圧発症率(58.0 %)は,追跡時に非AOとなった人(26.7 %)にくらべ有意に高かった(P=0.027)。

◇ 腹部肥満者において高血圧発症に関与する因子
多重ロジスティック回帰分析によると,高血圧の発症リスクと有意に関連していた因子は以下のとおり。
   年齢(+1歳): 相対危険度1.05 (95 %信頼区間1.02-1.08,P=0.001)
   ベースライン時の正常高値血圧(≧130 / 85 mmHg,vs. 正常血圧): 6.33 (3.84-10.43,P<0.0001)
   ベースライン時の腹部肥満(vs. なし): 2.33 (1.17-4.63,P=0.016)
   ベースライン時からの腹囲の変化(+1 cm): 1.06 (1.02-1.10,P=0.003)


◇ 結論
日本人地域住民を対象として腹部肥満と高血圧発症との関連を検討した結果,腹部肥満者の高血圧発症リスクは,非腹部肥満者の2.33倍であることが示された。またベースラインの腹囲が大きいほど高血圧発症率が高くなることから,腹囲に注意する必要性が示唆された。


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