[2007年文献] 総コレステロール値160 mg/dL未満および260 mg/dL以上で全死亡リスクが増加

欧米ではこれまで,高コレステロール血症と全死亡リスク増加との関連が明らかにされているが,アジア人において同様の関連を示した研究はない。そこで,血清総コレステロール値と死亡との関連について,日本全国から無作為に抽出した一般住民を対象に追跡17.3年にわたる前向きコホート研究における検討を行った。その結果,日本人では血清総コレステロール高値(260 mg/dL以上)および低値(160 mg/dL未満)の人で全死亡リスクが増加していた。死因別にみると,高値と冠動脈疾患死亡リスク,低値と肝疾患死亡リスクとの関連がみとめられた。総コレステロール値低値の人における全死亡リスクの増加には,肝疾患(肝癌・肝硬変・肝炎など)との関連が影響している可能性が示唆された。

Okamura T, et al.; NIPPON DATA80 Research Group. The relationship between serum total cholesterol and all-cause or cause-specific mortality in a 17.3-year study of a Japanese cohort. Atherosclerosis. 2007; 190: 216-23.pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,冠動脈疾患/脳卒中の既往のある280人,ベースライン時の情報が得られない180人,追跡が不可能だった870人を除いた9216人(男性4035人,女性5181人)を平均17.3年間追跡(~1999年)(159293人・年)。
平均年齢は男性49.7歳,女性50.1歳。

ベースライン時の血清総コレステロール値により,性別ごとに以下の7つのカテゴリー(複数の臨床基準値に基づき,カットオフ値を設定)に分けて解析した。血清総コレステロール値160~179 mg/dLの参加者がもっとも多かったため,このカテゴリー集団を「対照」とした。
 160 mg/dL未満(男性851人,女性952人)
 160~179 mg/dL(1000人,1183人)
 180~199 mg/dL(937人,1142人)
 200~219 mg/dL(648人,925人)
 220~240 mg/dL(354人,528人)
 240~259 mg/dL(167人,275人)
 260 mg/dL以上(78人,176人)
結 果
◇ 対象背景
血清総コレステロール値の平均は188.6 mg/dL(男性186.0 mg/dL,女性190.7 mg/dL)。

男女ともに,血清総コレステロール値がもっとも高いカテゴリー(260 mg/dL以上)では,アルブミン値,BMI,および高血圧の割合がもっとも高かった。女性では,コレステロール値が高くなるほど年齢および糖尿病の割合が高くなった。男性では,コレステロール値がもっとも低いカテゴリー(160 mg/dL未満)で喫煙率がもっとも高かった。

追跡期間における死亡は1841人で,そのうち心血管疾患死亡は666人(36%),癌死亡は558人(30%),非心血管疾患死亡/非癌死亡は617人(34%)。

◇ 血清総コレステロール値と全死亡
男女ともに,血清総コレステロール値がもっとも低いカテゴリーと高いカテゴリーで全死亡リスクが高かった。血清総コレステロール値のカテゴリーごとの全死亡の多変量調整HR(95%信頼区間)は以下のとおり。
・ 男性
   160 mg/dL未満:1.21(1.01-1.45)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:1.18(0.98-1.42)
   200~219 mg/dL:1.25(1.01-1.55)
   220~240 mg/dL:1.08(0.83-1.41)
   240~259 mg/dL:1.02(0.71-1.47)
   260 mg/dL以上:1.44(0.90-2.31)
・ 女性
   160 mg/dL未満:1.26(0.99-1.60)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:0.98(0.79-1.21)
   200~219 mg/dL:0.92(0.74-1.21)
   220~240 mg/dL:0.92(0.74-1.14)
   240~259 mg/dL:0.88(0.68-1.12)
   260 mg/dL以上:1.24(0.90-1.71)

全死亡リスクについて,全追跡期間の肝疾患死亡を除外した解析,および追跡5年以内の全死亡を除外した解析を行ったところ,血清総コレステロール値のもっとも低いカテゴリーにおける有意な全死亡リスクが消失した(肝疾患死亡を除外: HR 1.10[95%CI 0.95-1.28],5年以内の死亡を除外: HR 1.05[95%CI 0.89-1.24])。

◇ 血清総コレステロール値と心血管疾患死亡
男女ともに,血清総コレステロール値がもっとも高いカテゴリーにおいて,全心血管疾患死亡リスクおよび冠動脈疾患死亡リスクがもっとも高かった。血清総コレステロール値と脳卒中死亡との関連はみとめられなかった。
血清総コレステロール値のカテゴリーごとの全心血管疾患死亡および冠動脈疾患死亡の多変量調整ハザード比(HR)*(95%信頼区間)は以下のとおり。
*年齢,血清アルブミン,BMI,高血圧,糖尿病,喫煙カテゴリー,飲酒カテゴリーにより調整

全心血管疾患死亡
・ 男性
   160 mg/dL未満:1.15(0.84-1.58)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:1.24(0.90-1.71)
   200~219 mg/dL:1.51(1.05-2.17)
   220~240 mg/dL:1.19(0.77-1.85)
   240~259 mg/dL:1.44(0.83-2.48)
   260 mg/dL以上:1.68(0.77-3.69)
・ 女性
   160 mg/dL未満:1.21(0.81-1.79)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:1.00(0.71-1.42)
   200~219 mg/dL:0.91(0.64-1.30)
   220~240 mg/dL:1.03(0.70-1.52)
   240~259 mg/dL:0.95(0.58-1.57)
   260 mg/dL以上:1.84(1.15-2.93)

冠動脈疾患死亡
・ 男性
   160 mg/dL未満:1.07(0.46-2.51)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:1.21(0.54-2.71)
   200~219 mg/dL:2.11(0.92-4.84)
   220~240 mg/dL:2.17(0.89-5.25)
   240~259 mg/dL:3.74(1.44-9.76)
   260 mg/dL以上:3.77(1.02-13.9)
・ 女性
   160 mg/dL未満:0.94(0.36-2.45)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:0.73(0.31-1.71)
   200~219 mg/dL:0.92(0.41-2.08)
   220~240 mg/dL:1.14(0.48-2.70)
   240~259 mg/dL:0.74(0.20-2.68)
   260 mg/dL以上:3.33(1.35-8.18)

◇ 血清総コレステロール値と肝疾患死亡
男女ともに,血清総コレステロール値がもっとも低いカテゴリーにおける肝疾患死亡リスクは対照よりも有意に高かった。血清総コレステロール値のカテゴリーごとの肝疾患死亡の多変量調整HR(95%信頼区間)は以下のとおり(-: 死亡例がいなかったため算出できず)。
・ 男性
   160 mg/dL未満:2.74(1.36-5.52)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:1.07(0.45-2.52)
   200~219 mg/dL:0.59(0.16-2.15)
   220~240 mg/dL:0.59(0.13-2.68)
   240~259 mg/dL:-
   260 mg/dL以上:-
・ 女性
   160 mg/dL未満:3.13(1.04-9.42)
   160~179 mg/dL:1(対照)
   180~199 mg/dL:0.90(0.26-3.12)
   200~219 mg/dL:0.35(0.07-1.83)
   220~240 mg/dL:1.07(0.28-4.10)
   240~259 mg/dL:1.25(0.24-6.61)
   260 mg/dL以上:-

◇ 血清総コレステロール値と癌死亡,非癌死亡/非心血管疾患死亡
男女ともに血清総コレステロール値と癌死亡,および非癌死亡/非心血管疾患死亡との有意な関連は認められなかった。

◇ 結論
欧米ではこれまで,高コレステロール血症と全死亡リスク増加との関連が明らかにされているが,アジア人において同様の関連を示した研究はない。そこで,血清総コレステロール値と死亡との関連について,日本全国から無作為に抽出した一般住民を対象に追跡17.3年にわたる前向きコホート研究における検討を行った。その結果,日本人では血清総コレステロール高値(260 mg/dL以上)および低値(160 mg/dL未満)の人で全死亡リスクが増加していた。死因別にみると,高値と冠動脈疾患死亡リスク,低値と肝疾患死亡リスクとの関連がみとめられた。総コレステロール値低値の人における全死亡リスクの増加には,肝疾患(肝癌・肝硬変・肝炎など)との関連が影響している可能性が示唆された。


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