[2007年文献] 白血球数の正常域内での増加は,女性の心血管疾患死亡の独立した予測因子

日本全国から無作為に抽出した一般住民を対象としたコホート研究において,白血球数と全死亡および心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。9.6年間の追跡の結果,正常域内での白血球数は全死亡リスクと有意に相関しており,とくに女性ではCVD死亡リスクとも相関傾向がみられた。また,白血球数と死亡リスクとの関連は,喫煙未経験者およびBMI 25 kg/m2未満の人でより明瞭であった。全死亡およびCVD死亡の予測因子としての白血球数について,より詳細な研究が期待される。

Tamakoshi K, et al.; NIPPON DATA90 Research Group. White blood cell count and risk of all-cause and cardiovascular mortality in nationwide sample of Japanese--results from the NIPPON DATA90. Circ J. 2007; 71: 479-85.pubmed

コホート
NIPPON DATA90
無作為抽出された国内300地区に住み,1990年の第4次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の8384人のうち,脳卒中既往のある159人,冠動脈疾患既往のある230人,身長,体重,生活習慣などのデータが不足していた113人,追跡不可能だった182人,白血球数を含む血液検査データが不足していた550人,白血球数が4000 / mm3未満で白血球減少症が疑われる217人,白血球数が1万 / mm3超で炎症状態にあると考えられる306人の計1628人(除外基準の重複あり)を除いた6756人(男性2773人,女性3983人)を平均9.6年間追跡。64788人・年(男性26245人・年,女性38543人・年)。
平均年齢は52.3歳(男性53.0歳,女性51.9歳)。
ベースライン時に血液検査,身体計測,血圧測定などのほか,自己記入質問票により,食事を含む生活習慣の調査が行われた。
白血球数(/mm3)により,全体を以下の6カテゴリーに分けて検討を行った。
4000-4900,5000-5900,6000-6900,7000-7900,8000-8900,9000-10000
結 果
死亡は576人(男性307人,女性269人)。
うち28%(161人)が心血管疾患(CVD)による死亡だった。

白血球数の平均値は,男性(6821 /mm3)のほうが女性(6330 /mm3)よりも有意に高かった(P<0.001)。
男女ともに白血球数と有意な相関を示したのは,BMI(P<0.001),拡張期血圧(P<0.05),総コレステロール(P<0.001),喫煙率(P<0.001),ヘモグロビンA1c(P<0.05)で,有意な負の相関を示したのは年齢(P<0.001),HDL-C(P<0.001)。

全死亡の相対リスク(多変量補正後)は,以下のように白血球数との有意な相関(P=0.02)を示した。男女別に解析を行うと,女性では有意な相関(P=0.03)が見られたが,男性では有意な相関はなかった。
[4000-4900] 1.00(対照),[5000-5900] 1.06,[6000-6900] 1.08,[7000-7900] 1.12,[8000-8900] 1.32,[9000-10000] 1.61

CVD死亡の相対リスク(多変量補正後)は,白血球数との相関傾向が見られたが有意ではなかった。
男女別に解析を行うと,男性では有意な関連はなかった。女性では白血球数によるCVD死亡の相対リスクは以下のように相関傾向を示し,有意性はボーダーライン上(P=0.08)だった。
[4000-4900] 1.00(対照),[5000-5900] 1.02,[6000-6900] 1.12,[7000-7900] 0.88,[8000-8900] 2.04,[9000-10000] 2.66
また,白血球数の少ない1~4番目のカテゴリー(4000-7900 /mm3),白血球数の多い5~6番目のカテゴリー(8000-10000 /mm3)をまとめて比較したところ,白血球数8000-10000 /mm3の女性では,CVD死亡の相対リスクが2.18(95%信頼区間 1.23-3.88,vs. 4000-7900 /mm3)と有意に高くなった。
男性では有意な相関はなかった。

喫煙状態(喫煙未経験者,禁煙者,喫煙者)別に解析を行うと,喫煙未経験者において,白血球数と全死亡リスクは相関傾向を示し,有意性はボーダーライン上(P=0.07)だった。
喫煙未経験者のCVD死亡,および禁煙者と喫煙者の全死亡・CVD死亡リスクでは有意な相関はなかった。しかし,喫煙未経験者の白血球数4000-4900 /mm3のカテゴリーに対し,9000-10000 /mm3のカテゴリーではCVD死の相対リスクが3.20(1.25-8.24,P<0.05)と有意に高くなった。

BMI(25 kg/m2未満,25 kg/m2以上)により解析を行うと,BMI 25 kg/m2未満の人において,全死亡およびCVD死亡リスクは白血球数と相関傾向を示し,有意性はボーダーライン上(それぞれP=0.08,P=0.09)だった。
BMI 25 kg/m2以上の人では,有意な相関はなかった。

◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した一般住民を対象としたコホート研究において,白血球数と全死亡および心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。9.6年間の追跡の結果,正常域内での白血球数は全死亡リスクと有意に相関しており,とくに女性ではCVD死亡リスクとも相関傾向がみられた。また,白血球数と死亡リスクとの関連は,喫煙未経験者およびBMI 25 kg/m2未満の人でより明瞭であった。全死亡およびCVD死亡の予測因子としての白血球数について,より詳細な研究が期待される。


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