[2007年文献] 自己申告による高血圧既往は,心血管疾患死亡の有意な予測因子である

自己申告高血圧既往と心血管疾患(CVD)およびCVDの各病型による死亡リスクとの関連を示したはじめての報告。全国から無作為に抽出した30~59歳の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,「問診での自己申告高血圧既往はCVD死亡リスクを予測する」という仮説を検証した。19年間の追跡の結果,自己申告高血圧既往はCVD死亡の有意な予測因子であった。また,自己申告高血圧既往はあるが高血圧と診断されなかった人(偽陽性)においても,CVD死亡のリスクが有意に上昇した。自己申告による高血圧既往情報の収集は,実際の血圧測定よりもはるかに簡便であることから,継続的な血圧測定が難しい場合などには活用に値する方法であるといえる。

Higashiyama A, et al.; NIPPON DATA80 Research Group. Does self-reported history of hypertension predict cardiovascular death? Comparison with blood pressure measurement in a 19-year prospective study. J Hypertens. 2007; 25: 959-64.pubmed

コホート
NIPPON DATA80
無作為抽出された国内300地区に住み,1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の10546人のうち,心血管疾患既往がなく,60歳未満の6427人(男性2862人,女性3565人,117738人・年)を19年間追跡。
60歳以上の者については,降圧薬服用率が24.2%と高く,高血圧の割合がかなり高いと考えられたため除外した。なお,60歳未満の降圧薬服用率は5.3%。
平均年齢は44.4歳。
ベースライン時に,問診による高血圧既往(自己申告高血圧既往)の有無を調査するとともに,血圧測定を行った。測定した収縮期血圧が160 mmHg以上または拡張期血圧が95 mmHg以上である,もしくは降圧薬を服用している人を高血圧として診断し,これらに該当しない人を正常血圧と診断した(1980年当時の診断基準による)。
結 果
ベースライン時に高血圧既往があると自己申告したのは879人。男性は403人(14%),女性は476人(13%)だった。うち,実際に高血圧と診断されたのは611人(真の陽性),正常血圧と診断されたのは268人(偽陽性)。
ベースライン時に高血圧既往がないと自己申告したのは5548人。うち,実際に正常血圧と診断されたのは5104人(真の陰性),高血圧と診断されたのは444人(偽陰性)。
自己申告高血圧既往の検出感度は男性52%,女性65%,特異度*は男女とも95%となった。  *特異度: 真の陰性/(偽陽性+真の陰性)

自己申告高血圧既往のある人で,ない人よりも有意に高い値を示したのは,男女とも年齢,収縮期血圧,拡張期血圧,血清総コレステロール,BMI,糖尿病既往率(P<0.05)。
喫煙率,飲酒率では有意差は見られなかった。

死亡は524人。心血管疾患(CVD)死は132人で,うち脳卒中死が60人,冠動脈疾患死が30人だった。
自己申告高血圧既往のある人の各死亡のハザード比(多変量補正後)は以下のようになった(*P<0.05 vs. 自己申告高血圧既往のない人)。
[CVD死] 2.49* (95%信頼区間 1.72-3.61),[脳卒中死] 3.22* (1.88-5.53),[脳梗塞死]3.50* (1.56-7.87),[脳出血死]3.20* (1.13-9.06),[冠動脈疾患死]1.53 (0.67-3.47)

また,自己申告高血圧既往と実際の測定による高血圧の有無をあわせ,全体を真の陽性,偽陽性,偽陰性,真の陰性の4カテゴリーに分けて解析を行った結果,CVD死のハザード比(多変量補正後)は以下のようになった。
[真の陽性] 3.42(95%信頼区間 2.24-5.20), [偽陽性] 2.10(1.04-4.26), [偽陰性]2.78(1.66-4.67), [真の陰性] 1.00(対照) 

この論文は,自己申告高血圧既往とCVDおよびCVDの各病型による死亡リスクとの関連を示した初の報告である。
以上のように,自己申告高血圧既往はCVD死の有意な予測因子であった。また,自己申告高血圧既往はあるが高血圧と診断されなかった人(偽陽性)においても,CVD死のリスクが有意に上昇した。自己申告による高血圧既往情報の収集は,実際の血圧測定よりもはるかに簡便であることから,継続的な血圧測定が難しい場合などには活用に値する方法であるといえる。


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