[2006年文献] HDL-C値は全死亡リスクと逆相関する

日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血清HDL-C値は全死亡リスクと逆相関するという仮説を検証した。9.6年間の追跡の結果,HDL-C値は全死亡リスクと有意な逆相関を示した。減量,禁煙,運動,魚の摂取など,HDL-C値が高くなるような生活習慣の改善が有益であることが示唆される。

Okamura T, et al.; NIPPON DATA90 Research Group. The inverse relationship between serum high-density lipoprotein cholesterol level and all-cause mortality in a 9.6-year follow-up study in the Japanese general population. Atherosclerosis. 2006; 184: 143-50.pubmed

コホート
NIPPON DATA90
無作為抽出された国内300地区に住み,1990年の第4次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の8384人のうち,冠動脈疾患または脳卒中既往のある165人,脂質降下薬を服用していた252人,ベースライン時データに不備があった637人,追跡不可能だった155人を除いた7175人(男性3014人,女性4161人)を平均9.6年間追跡。
追跡人・年は68678人・年(男性28419人・年,女性40259人・年)。
平均年齢は男性52.8歳,女性51.8歳。
平均血清HDL-C値は男性50.3 mg/dL,女性57.2 mg/dL。
ベースライン時のHDL-C値と有意な相関を示したのは,総コレステロール,飲酒。
有意な逆相関を示したのは年齢(女性のみ),BMI,非HDL-C値,トリグリセリド,高血圧有病率(女性のみ),糖尿病有病率,喫煙。
結 果
死亡は636人(男性352人,女性284人)。
心血管疾患による死亡は174人(27 %),癌による死亡は243人(38 %),その他が219人(35 %)だった。
心血管疾患死亡の内訳は,冠動脈疾患死が25人,心不全が50人,脳卒中が70人(脳梗塞42人,脳出血12人,その他16人)。

◇全死亡とHDL-C
全体,および女性のHDL-C値は全死亡リスクと有意な逆相関を示した(それぞれP=0.02,0.04)。
男性では有意性がボーダーライン上だった(P=0.05)。
HDL-C値がもっとも低いカテゴリー(35 mg/dL未満)では,もっとも高いカテゴリー(70 mg/dL以上)
に比し,全死亡のハザード比が1.62(95%信頼区間1.10-2.37)と有意に上昇した。

◇全心血管死亡とHDL-C
全体,および女性のHDL-C値は心血管疾患死亡リスクと逆相関傾向を示し,有意性はボーダーライン上だった(いずれもP=0.07)。
HDL-C値がもっとも低いカテゴリー(35 mg/dL未満)では,もっとも高いカテゴリー(70 mg/dL以上)
に比し,心血管疾患死亡のハザード比が2.70(1.28-5.68)と有意に上昇した。

◇脳卒中,冠動脈疾患,心不全とHDL-C
男女別では死亡数が少ないため,男女を合わせて解析を行った結果,HDL-C値は脳卒中死亡リスクと有意な逆相関を示した。(P=0.04)。
また,HDL-C値は心不全死亡リスクとも逆相関傾向を示した(P=0.06)。

◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血清HDL-C値は全死亡リスクと逆相関するという仮説を検証した。9.6年間の追跡の結果,HDL-C値は全死亡リスクと有意な逆相関を示した。減量,禁煙,運動,魚の摂取など,HDL-C値が高くなるような生活習慣の改善が有益であることが示唆される。


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