[2008年文献] 随時(非空腹時)血糖値は,冠動脈疾患死亡および心血管疾患死亡リスクと関連

随時血糖値(casual blood glucose: CBG)と冠動脈疾患死亡,心血管疾患死亡および全死因死亡リスクとの関連について,全国から無作為に抽出した一般住民を対象とした前向きコホート研究における検討を行った。その結果,食後から採血までの経過時間にかかわらず,CBGは冠動脈疾患死亡および全心血管疾患死亡リスクとの有意な関連を示した。正常域の範囲内で検討しても,CBGが高いほど冠動脈疾患死亡および全心血管疾患死亡リスクが高くなっていた。以上の結果から,空腹時採血を徹底するのが難しい健診などの場では,空腹時血糖値や経口ブドウ糖負荷試験のかわりにCBGを用いることが可能と考えられた。

Kadowaki S, et al.; for the NIPPON DATA Research Group. Relationship of elevated casual blood glucose level with coronary heart disease, cardiovascular disease and all-cause mortality in a representative sample of the Japanese population. NIPPON DATA80. Diabetologia. 2008; 51: 575-582.pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,冠動脈疾患既往のある45人,脳卒中既往のある108人,ベースライン時のデータに不備がある41人,追跡が不可能だった908人を除いた9444人(男性4134人,女性5310人)を平均17.3年間追跡した。
平均年齢は男性50.4歳,女性50.8歳。

ベースライン時の随時(非空腹時)血糖値により,全体を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を行った。
   正常低値: 94 mg/dL未満 (男性1915人,女性2526人)
   正常高値: 94 mg/dL以上140 mg/dL未満 (1814人,2467人)
   境界域: 140 mg/dL以上200 mg/dL未満 (187人,175人)
   高値: 200 mg/dL以上または糖尿病既往あり (218人,142人)
結 果
◇ 対象背景
平均随時血糖値(casual blood glucose: CBG)は,男性102.1 mg/dL,女性100.6 mg/dLであった。
男女とも,CBGが高いカテゴリーほど年齢が高く,高血圧の割合が高かった。女性では,CBGが高いカテゴリーほど肥満の割合および総コレステロールが高かった。

年齢層ごとの糖尿病有病率は,30代1.0%,40代2.4%,50代5.0%,60代7.2%,70代7.3%,80代4.8%であった。糖尿病とCBGが境界域の人をあわせた割合は,それぞれ3.1%,5.4%,9.7%,13.0%,12.8%,11.6%であった。

◇ CBGと心血管疾患死亡および全死因死亡リスク
追跡期間中の死亡は1911人で,うち冠動脈疾患(CHD)死亡は137人(男性68人,女性69人),全心疾患死亡は336人(164人,172人),全心血管疾患死亡は692人(345人,347人)であった。

・ 食後経過時間とCHD死亡リスク
採血時に最後の食事から何時間経過していたか(食後1時間/2時間/3~4時間/5時間以上)によって,境界域または高値の人と,正常低値または正常高値の人のCHD死亡リスクを比較した。
その結果,食後1時間ではCHDリスクに有意差はみとめられなかったが,食後2時間,3~4時間,5時間以上では,いずれも有意差がみとめられた。

・ CBGカテゴリーによる心血管疾患死亡および全死因死亡リスク
CBGカテゴリー(正常低値,正常高値,境界域,高値)ごとの心血管疾患死亡および全死因死亡のハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ以下のとおりで,いずれについても,CBGが高くなるほどリスクが増加する傾向がみとめられた。

 CHD死亡: 1(対照),1.24(0.83-1.86),2.43(1.29-4.58),2.62(1.46-4.67)
 全心疾患死亡: 1,1.06(0.83-1.36),1.78(1.17-2.70),2.07(1.41-3.06)
 全心血管疾患死亡: 1,1.22(1.03-1.45),1.46(1.06-2.01),1.82(1.37-2.43)
 全死因死亡: 1,1.07(0.96-1.18),1.13(0.92-1.38),1.63(1.37-1.93)
 
・ 正常域内のCBGと心血管疾患死亡リスク
CBGを連続変数として扱い,正常域(正常低値または正常高値)の範囲内でCHD死亡および全心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した結果,CBGが18 mg/dL上昇するごとに,全心血管疾患死亡リスクは1.12倍(95%信頼区間1.02-1.22)と有意に増加した。CHD死亡についても同様の傾向がみられたが,有意なリスク増加はみられなかった。

CBGが正常域(正常低値または正常高値)の人を五分位に分け,全心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した結果,CBGが高いほどリスクが高いという有意な傾向がみとめられた(P for trend<0.01)。

◇ CBG高値の人口寄与度割合(PAF)
CBG異常(境界域+高値)のPAFは,CHD死亡では12.0%,全心疾患死亡では8.8%,全心血管疾患死亡では4.9%,全死因死亡では3.5%であった。
これをCBG高値についてのみみると,PAFはそれぞれ7.0%,5.2%,3.3%,3.1%で,CBG境界域についてのみみると,それぞれ5.0%,3.6%,1.5%,0.4%であった。


◇ 結論
随時血糖値(casual blood glucose: CBG)と冠動脈疾患死亡,心血管疾患死亡および全死因死亡リスクとの関連について,全国から無作為に抽出した一般住民を対象とした前向きコホート研究における検討を行った。その結果,食後から採血までの経過時間にかかわらず,CBGは冠動脈疾患死亡および全心血管疾患死亡リスクとの有意な関連を示した。正常域の範囲内で検討しても,CBGが高いほど冠動脈疾患死亡および全心血管疾患死亡リスクが高くなっていた。以上の結果から,空腹時採血を徹底するのが難しい健診などの場では,空腹時血糖値や経口ブドウ糖負荷試験のかわりにCBGを用いることが可能と考えられた。


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