[2014年文献] 長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど,心血管疾患死亡リスクが低い

日本人における長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LCn3FA)と心血管疾患との関連について,摂取頻度ではなく摂取量を用いて検討した,はじめての報告である。平均21.0年間の追跡の結果,LCn3FAの摂取量と心血管疾患死亡リスクは有意な負の関連を示していた(既知の心血管危険因子や,ナトリウムを含む種々の栄養素で調整)。この結果を年齢層ごとにみると,30~59歳では有意な負の関連がみられたが,60歳以上では有意な関連はみられなかった。

Miyagawa N, et al.; NIPPON DATA80 Research Group. Long-chain n-3 polyunsaturated fatty acids intake and cardiovascular disease mortality risk in Japanese: A 24-year follow-up of NIPPON DATA80. Atherosclerosis. 2014; 232: 384-9.pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,1日の総摂取エネルギーが500 kcal未満または5000 kcal以上の139人,追跡不可能となった1104人,心血管疾患既往のある350人,データに不備のある124人を除いた9190人(男性4028人,女性5162人)を対象とし,同年(1980年)に実施された国民栄養調査の結果を用いた解析を行った。
追跡期間は2004年11月までの24年間(平均21.0年間)。

1980年の国民栄養調査において世帯単位で実施された秤量法食事記録(平均的な食事をとった連続3日間について実施)の結果をもとに,1995年の国民栄養調査での性別・年齢層ごとの平均摂取量データを用いて,種々の栄養素の個人の摂取量を推算。このうちエイコサペンタエン酸(EPA)の摂取量とドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量の和を長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(long chain n-3 polyunsaturated fatty acid: LCn3FA)の摂取量とした。
LCn3FAの摂取量(総摂取エネルギーに占める割合:[%])の四分位によって,対象者を以下のカテゴリーに分類した。
 [男性]Q1: 0~0.23%,Q2: 0.24~0.35%,Q3: 0.36~0.51%,Q4: 0.52~2.34%
 [女性]Q1: 0.02~0.25%,Q2: 0.26~0.38%,Q3: 0.39~0.55%,Q4: 0.56~2.43%
結 果
◇ 対象背景
長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(long chain n-3 polyunsaturated fatty acid: LCn3FA)の摂取量が多いカテゴリーほど高い値を示していたのは,年齢,BMI,収縮期血圧,降圧薬服用率,総コレステロール,n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量,食物繊維の摂取量,ナトリウムの摂取量,および魚介類の摂取量。
一方,LCn3FAの摂取量が多いカテゴリーほど低い値を示していたのは,都市部居住者の割合,総摂取エネルギー,脂肪の摂取量,飽和脂肪酸の摂取量,n-6系多価不飽和脂肪酸の摂取量であった。

追跡期間中の心血管疾患(CVD)死亡は879人(うち冠動脈疾患死亡が171人,脳卒中死亡が417人,心不全死亡が170人),非CVD死亡は1672人であった。

◇ LCn3FAの摂取量と死因別死亡リスク
LCn3FAの摂取量ごとの死因別死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,全死亡について,摂取量が多いカテゴリーほどリスクが低い有意な傾向がみとめられた。冠動脈疾患死亡についても同様の傾向がみられたが有意ではなかった。
性,年齢,喫煙,飲酒,収縮期血圧,血糖,総コレステロール,BMI,降圧薬服用,居住地域,飽和脂肪酸摂取量,n-6系多価不飽和脂肪酸摂取量,植物由来蛋白質摂取量,食物繊維摂取量,ナトリウム摂取量により調整)

・全CVD死亡(P for trend=0.038)
  Q1: 1.00(対照),Q2: 0.85(0.70-1.03),Q3: 0.85(0.70-1.03),Q4: 0.80(0.66-0.96)
・冠動脈疾患死亡(P for trend=0.363)
  Q1: 1.00,Q2: 0.95(0.61-1.47),Q3: 0.88(0.57-1.36),Q4: 0.82(0.53-1.29)
・脳卒中死亡(P for trend=0.115)
  Q1: 1.00,Q2: 0.81(0.61-1.07),Q3: 0.94(0.72-1.24),Q4: 0.75(0.57-1.00)
・非CVD死亡(P for trend=0.562)
  Q1: 1.00,Q2: 1.00(0.87-1.15),Q3: 0.97(0.85-1.12),Q4: 0.97(0.84-1.12)

これらの結果は,LCn3FAの内訳(エイコサペンタエン酸[EPA]とドコサヘキサエン酸[DHA])ごとにみてもほぼ同様であり,DHAのほうが死亡リスク低下との関連がやや強かった。
また,LCn3FAではなくn-3系多価不飽和脂肪酸を用いた解析でも,摂取量が多いほど死亡リスクが低いという同様の傾向がみとめられたが,LCn3FAにくらべると弱い関連であった。

◇ 層別化解析
年齢層(30~59歳/60歳以上)ごとの解析を行った結果,全死亡,ならびに脳卒中死亡の多変量調整ハザード比は,30~59歳でのみ,LCn3FAの摂取量と有意な負の関連を示した(それぞれP for trend=0.031,P for trend=0.043)。冠動脈疾患死亡については,年齢層を問わず,LCn3FAの摂取量との有意な関連はみられなかった。
これらの結果は,男女別の解析を行っても同様であった。


◇ 結論
日本人における長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LCn3FA)と心血管疾患との関連について,摂取頻度ではなく摂取量を用いて検討した,はじめての報告である。平均21.0年間の追跡の結果,LCn3FAの摂取量と心血管疾患死亡リスクは有意な負の関連を示していた(既知の心血管危険因子や,ナトリウムを含む種々の栄養素で調整)。この結果を年齢層ごとにみると,30~59歳では有意な負の関連がみられたが,60歳以上では有意な関連はみられなかった。


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