[2005年文献] 男性ホルモンDHEAS値の減少は男性の2型糖尿病発症リスク

血清デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)値とインスリン抵抗性およびインスリン分泌障害との関連が報告されている。そこで,日本人一般住民を対象とした断面解析により血清DHEAS値と2型糖尿病(DM)との関連を検討し,さらに追跡研究によりDM発症リスクとの関連を検討した。その結果,血清DHEAS値の減少は,年齢,身長および食後2時間血糖値とは独立して,日本人男性のDM発症リスクと関連していた。

Kameda W, et al. Association of decrease in serum dehydroepiandrosterone sulfate levels with the progression to type 2 diabetes in men of a Japanese population: the Funagata Study. Metabolism. 2005; 54: 669-76.pubmed

コホート
1995~1997年に登録された35歳以上の舟形町住民のうち,脳血管疾患またはその他の身体障害により試験に参加できない人,および外来受診歴または保健師の問診により糖尿病であることが確認された人を除いた1709人(女性998人,男性711人)(断面解析)。
また,5年後(2000~2002年)の追跡健診に参加した970人を追跡研究の対象者とした。
断面解析の参加率は40.9%,5年後の追跡率は56.8%。

経口ブドウ糖負荷試験の結果およびWHO基準(1985年)により耐糖能を診断し,性別ごとに,正常耐糖能(NGT),耐糖能異常(IGT),2型糖尿病(DM)に分けて解析した。
 ・男性:DM(41人),IGT(99人),NGT(571人)
 ・女性:DM(45人),IGT(137人),NGT(815人)

血清デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)*値は酵素免疫測定法(ELISA)により測定した。
*DHEAS: 副腎性の男性ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロンの硫酸抱合体。血中濃度は年齢とともに減少することが知られており,同様に年齢とともに進展するインスリン抵抗性との関連が指摘されている。
結 果
◇ 対象背景
男性の血清デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)値は,正常耐糖能(NGT)群(3.062 log ng/mL)にくらべ,耐糖能異常(IGT)群(2.967 log ng/mL)で有意に低く(P=0.005),2型糖尿病(DM)群(2.966 log ng/mL)で低い傾向がみられた(P=0.091)。女性では,NGT群(2.827 log ng/mL)にくらべ,DM群(2.714 log ng/mL,P=0.048)で有意に低かった。
また,DM群およびIGT群ではNGT群にくらべて肥満,インスリン抵抗性,脂質異常症が多かった。

◇ 血清DHEAS値の関連因子(断面解析)
ステップワイズ多変量回帰分析により,血清DHEAS値との関連が強いと想定される臨床的特徴(年齢,身長,体重,空腹時血糖値,食後2時間血糖値,HbA1c値)との関連を評価したところ,血清DHEAS値と独立して関連していたのは年齢(相関係数:男性-0.544,女性-0.448;ともにP<0.05)のみであった。

◇血清DHEAS値とDMとの関連(追跡研究)
ベースライン時にNGTであった人の5年後の耐糖能診断は,以下のとおり。
・NGTを維持した(NGT→NGT群):男性275人,女性428人
・IGTを発症した(NGT→IGT群):54人,57人
・DMを発症した(NGT→DM群):13人,3人

IGTまたはDMの発症の有無ごとにベースライン時の血清DHEAS値を比較すると,男女ともに有意な群間差は認められなかった。
5年後までの血清DHEAS値の変化をみると,女性では血清DHEAS値の減少幅に有意な群間差は認められなかったが,男性ではNGT→DM群でその他の群にくらべて有意に減少幅が大きかった(NGT→DM群: -0.169 log ng/mL[P=0.008],NGT→IGT群: +0.0004 log ng/mL,NGT→NGT群: -0.015 log ng/mL)。

DMの発症に独立して関連する因子を検討するため,男性を対象に,年齢,身長,および食後2時間血糖値を共変量として解析した結果,DM発症と有意かつ独立に関連していたのは,食後2時間血糖値の増加(+10 mg/dL)(オッズ比[OR]1.707,95%信頼区間[CI]1.177-2.477,P=0.0048)と血清DHEAS値の減少(-0.1 log ng/mL)(OR 1.410,95%CI 1.020-1.948,P=0.0375)であった。


◇ 結論
血清デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)値とインスリン抵抗性およびインスリン分泌障害との関連が報告されている。そこで,日本人一般住民を対象とした断面解析により血清DHEAS値と2型糖尿病(DM)との関連を検討し,さらに追跡研究によりDM発症リスクとの関連を検討した。その結果,血清DHEAS値の減少は,年齢,身長および食後2時間血糖値とは独立して,日本人男性のDM発症リスクと関連していた。


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