[2003年文献] 糖尿病と有意に関連する6つの遺伝子が見出された

糖尿病に関連する遺伝子多型を特定するため,日本人一般住民を対象とした研究のデータを用いて,コホート内症例対照研究を行った。120の候補遺伝子における398の一塩基多型と糖尿病との関連を検討した結果,6つの遺伝子における多型が糖尿病と関連することが明らかになった。このうち2つ(SURおよびFABP2)は,これまでにも糖尿病との関連が報告されていた遺伝子である。これら6つの遺伝子は,少なくともこの研究の対象集団において2型糖尿病の危険因子である可能性が示唆されたものの,他の集団でも検討を行うことがのぞまれる。

Daimon M, et al. Large-scale search of SNPs for type 2 DM susceptibility genes in a Japanese population. Biochem Biophys Res Commun. 2003; 302: 751-8.pubmed

コホート
2001年にベースライン健診を受け,調査に同意した375人(男性167人,女性208人)。
糖尿病群(耐糖能異常74人を含む)は148人(男性68人,女性80人),正常群は227人(男性99例,女性128例)。

糖尿病群および対照群を対象に,JSNP(Japanese Single Nucleotide Polymorphisms)データベース収載の120の候補遺伝子から398の一塩基多型(SNP)を選び,2型糖尿病関連遺伝子の同定を試みた。

ベースライン時の対象背景は以下のとおり(*P<0.05,それぞれ糖尿病群,正常群の値)。
[年齢] 65.3歳,65.1歳 [男性/女性人数] 80 / 68人,128 / 99人 [ヘモグロビンA1c] 5.88 %,4.98 %* [ウエスト] 78.8 cm,75.1 cm* [ヒップ] 92.1 cm,89.9 cm* [ウエスト/ヒップ比] 0.855,0.834* [BMI] 24.7 kg/m2,23.3 kg/m2* [トリグリセリド] 144.0 mg/dL,115.2 mg/dL*
結 果
関連解析の結果,糖尿病に関連していることが明らかとなった一塩基多型(single nucleotide polymorphism,SNP)は10個で,それぞれ以下の9の遺伝子に含まれていた。
   MET: 原癌遺伝子の1つ
   FABP2: 脂肪酸結合蛋白遺伝子
   TNF-α: 腫瘍壊死因子α遺伝子
   VLDLR: 超低比重リポ蛋白受容体遺伝子
   COG2: Oligomeric Golgi Complex(COG)サブユニット2の遺伝子
   ABCA1: ABCトランスポーターA1遺伝子
   aldolase B遺伝子: アルドラーゼB酵素の遺伝子
   leptin: レプチン蛋白の遺伝子
   SUR: スルホニル尿素受容体遺伝子

正常群よりも糖尿病群でBMIやトリグリセリド値が有意に高かったことから,これらの遺伝子が糖尿病というより肥満自体に関連している可能性を考え,多変量ロジスティック回帰分析を行った。
その結果,BMIおよびトリグリセリドで補正を行ったのちも,MET,ABCA1,FABP2,LDLC,aldolase B,およびSURの6つの遺伝子で,糖尿病との有意な関連が見られた。
各遺伝子における疾患感受性SNPの糖尿病発症オッズ比は,以下のようにいずれも2倍前後となった。MET遺伝子には疾患感受性SNPが2つ含まれていた。
   MET-SNP1: 2.42(95%信頼区間 1.42-4.14,P=0.0012)
   MET-SNP2: 2.26(1.25-4.07,P=0.0068)
   ABCA1: 2.46(1.36-4.42,P=0.0028)
   FABP2: 2.26(1.30-3.95,P=0.0039)
   LDLC: 1.94(1.23-3.06,P=0.0047)
   aldolase B: 2.35(1.26-4.37,P=0.0071)
   SUR: 2.23(1.22-4.08,P=0.0089)

さらに,この研究でみとめられた疾患と遺伝子型との関連に,集団における複数の遺伝的階層(ポピュレーションが規定する遺伝情報の偏り)によるバイアスが存在しうるかを検証したが,この研究の対象集団におけるバイアスはみとめられなかった。

◇ 結論
糖尿病に関連する遺伝子多型を特定するため,日本人一般住民を対象とした研究のデータを用いて,コホート内症例対照研究を行った。120の候補遺伝子における398の一塩基多型と糖尿病との関連を検討した結果,6つの遺伝子における多型が糖尿病と関連することが明らかになった。このうち2つ(SURおよびFABP2)は,これまでにも糖尿病との関連が報告されていた遺伝子である。これら6つの遺伝子は,少なくともこの研究の対象集団において2型糖尿病の危険因子である可能性が示唆されたものの,他の集団でも検討を行うことがのぞまれる。


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