[2008年文献] 男性では,社会的サポートの度合いが低いほど脳卒中死亡リスクが高い

社会的サポートと心血管疾患発症リスクおよび予後との関連について,欧米とは文化や慣習の異なる日本人一般住民を対象に,大規模前向きコホート研究のデータによる検討を行った。平均10.7年間の追跡の結果,男性では,社会的サポートの度合いが低いほど,脳卒中死亡リスクが高くなる有意な関連がみとめられたが,女性では関連はなかった。脳卒中発症,および冠動脈疾患発症・死亡のリスクについては,男女とも社会的サポートとの関連はみられなかった。これらの結果から,社会的サポートが予防というより発症後の回復に有効である可能性も示唆される。

Ikeda A, et al.; JPHC Study Group. Social support and stroke and coronary heart disease: the JPHC study cohorts II. Stroke. 2008; 39: 768-75.pubmed

コホート
JPHCコホートII。
対象13保健所の管轄行政区内に居住し,1993~1994年に研究に登録された40~69歳の男女62398人のうち,日本国籍をもたない22人および追跡開始前に転出した80人を除いた62296人を対象に,生活習慣についての質問票調査を実施(回答率84%)。社会的サポートに関する質問項目を含めて回答に不備のなかった45972人のうち,心筋梗塞,狭心症,脳卒中または癌の既往のない44152人(男性20985人,女性23167人)を平均10.7年間追跡(47万0734人・年)。

社会的サポートの度合いについては,以下の各質問項目への回答に該当する点数を足しあわせたスコア(最小0点~最大5点)を用い,「低い(0または1点)」「中程度(2または3点」「高い(4点)」「非常に高い(5点)」の4つのカテゴリーに対象者を分類した。
(1)信頼関係(confidant support)
  ・私的な感情や秘密を打ち明けられる人がいる: いいえ(0点)/はい(1点)
  ・一緒にいて安心でき,心地よいと感じられる人がいる: いいえ(0点)/はい(1点)
(2)評価・尊重(esteem support)
  ・自分の意見や行動に対し,支えとなってくれる人がいる: いいえ(0点)/はい(1点)
(3)社会的に孤立していない(social isolation)
  ・1週間に1回以上会う友人がいる: いいえ(0点)/1~3人(1点)/4人以上(2点)
結 果
◇ 対象背景
社会的サポートの各カテゴリーの人数は,「非常に高い」男性5930人,女性6910人,「高い」8181人,10563人,「中程度」4393人,3926人,「低い」2481人,1768人。

社会的サポートが低いカテゴリーほど有意に高くなっていたのは,座りがちな生活習慣の割合,高い自覚的ストレスを有する割合,および非就業者の割合で,有意に低くなっていたのは年齢,BMI,エタノール摂取(女性のみ)および喫煙率(男性のみ)であった(P<0.05)。

追跡期間中の冠動脈疾患新規発症は301人(男性219人,女性82人),脳卒中発症は1057人(637人,420人),冠動脈疾患死亡は191人(131人,60人),脳卒中死亡は327人(200人,127人)。

◇ 社会的サポートと心血管疾患発症および死亡リスク
社会的サポートのカテゴリーごとの心血管疾患発症の多変量調整相対リスクは以下のとおりで,脳卒中死亡リスクについて,社会的サポートの度合いが低いほどリスクが高くなる有意な関連がみとめられた(P for trend=0.03)。
年齢,性,BMI,喫煙,アルコール摂取,自覚的ストレス,就業状況,身体活動,高血圧および糖尿病の既往により調整)

・脳卒中発症(P for trend=0.38): 非常に高い1.0(対照),高い0.90(95%信頼区間0.78-1.04),中程度0.95(0.80-1.14),低い1.11(0.89-1.37)
・冠動脈疾患発症(P for trend=0.59): 1.0,0.93(0.71-1.23),0.92(0.66-1.28),0.90(0.60-1.35)
・脳卒中死亡(P for trend=0.03): 1.0,1.07(0.81-1.41),1.26(0.92-1.74),1.45(1.00-2.10)
・冠動脈疾患死亡(P for rend=0.44): 1.0,0.70(0.49-1.01),1.13(0.77-1.66),1.00(0.61-1.63)

男女別にみると,男性の脳卒中死亡についてのみ,社会的サポートの度合いが低いほどリスクが高くなる有意な関連がみとめられた(多変量調整後,P for trend=0.03)。男性の脳卒中発症,冠動脈疾患発症および冠動脈疾患死亡については有意な関連はみとめられず,女性ではいずれの発症・死亡についても関連はみられなかった。

また,脳卒中死亡について病型別(脳内出血/虚血性脳卒中)での検討を行った結果,病型による関連の違いはみとめられなかった。

◇ 社会的サポートの構成要素と心血管疾患発症リスク
社会的サポートの評価に用いた4つの質問項目のそれぞれに対する回答による冠動脈疾患および脳卒中発症リスクを比較すると,「私的な感情や秘密を打ち明けられる人がいる」についてのみ,「いいえ」の人で有意に脳卒中の多変量調整相対リスクが高くなっていたが(1.18[95%信頼区間1.01-1.37] vs. 「はい」),冠動脈疾患については有意差はなかった。また,その他の質問項目については,回答による脳卒中および冠動脈疾患発症リスクの有意な差はみられなかった。

男女別にみると,「私的な感情や秘密を打ち明けられる人がいる」に対して「いいえ」と回答した男性では脳卒中発症の多変量調整相対リスクが有意に高くなっていたが(1.21[1.01-1.44]vs. 「はい」),冠動脈疾患発症については有意差はみられず。男性では,その他の質問項目について,回答による脳卒中発症および冠動脈疾患発症リスクの有意な差はみられなかった。女性では,いずれの質問項目についても,回答による脳卒中および冠動脈疾患発症リスクの有意な差はみられなかった。


◇ 結論
社会的サポートと心血管疾患発症リスクおよび予後との関連について,欧米とは文化や慣習の異なる日本人一般住民を対象に,大規模前向きコホート研究のデータによる検討を行った。平均10.7年間の追跡の結果,男性では,社会的サポートの度合いが低いほど,脳卒中死亡リスクが高くなる有意な関連がみとめられたが,女性では関連はなかった。脳卒中発症,および冠動脈疾患発症・死亡のリスクについては,男女とも社会的サポートとの関連はみられなかった。これらの結果から,社会的サポートが予防というより発症後の回復に有効である可能性も示唆される。


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