[2009年文献] 生活を楽しんでいる意識が高い男性は心血管疾患リスクが低い

これまで多くの研究により,消極的な精神状態と心血管疾患発症・死亡リスクとの関連が示されているが,積極的な精神状態と心血管疾患との関連を前向きに検討した研究は少ない。本研究では,中年の男女を対象とした大規模コホート研究において,「生活を楽しんでいる意識」が心血管疾患リスクに与える影響を検討した。その結果,男性においてのみ, 生活を楽しんでいる意識の低さと心血管疾患発症リスクとの関連が認められ,積極的な精神状態が心血管疾患発症を抑制する可能性が示唆された。

Shirai K, et al.; for the Japan Public Health Center–Based Study Group. Perceived Level of Life Enjoyment and Risks of Cardiovascular Disease Incidence and Mortality. The Japan Public Health Center-Based Study. Circulation. 2009; 120: 956-63.pubmed

コホート
1990年時点で対象14行政区内に居住していた40~59歳の54498人(JPHCコホートI),および1993~1994年時点で対象13行政区内に居住していた40~69歳の62398人(JPHCコホートII)のうち,心筋梗塞,狭心症,脳卒中または癌の既往がある人,および日本に国籍がない人,追跡前に移住報告があった人,年齢基準を満たさない人を除き,ベースラインの質問票に不備なく回答した88175人を12年間追跡(男性42089人,女性46086人)。
質問票の回答率は81.6%。

「生活を楽しんでいる意識」を自己記入式質問票によって調査し,回答により,性別ごとに以下の3つのカテゴリーに分けて解析した。
・男性
 生活を楽しんでいる意識が高い: 17399人,中程度: 21057人,低い: 3633人
・女性
 生活を楽しんでいる意識が高い: 18425人,中程度: 23384人,低い: 4277人

また,「時間に追われる」,「怒りっぽい」,「敵対的な態度を示す」,「競争心が強い」の4つの項目を用いて,ポイントが5~8となった人を,「タイプAの性格」とした。
結 果
◇ 対象背景
生活を楽しんでいる意識が高い男女では,平均年齢,高血圧既往率,平均BMI,身体活動を行う割合,および健診受診率が高く,多量飲酒者,および肉体労働者が少なく,ストレス度が低く,タイプAの性格の人が少なかった。
また,生活を楽しんでいる意識が高い男性では,喫煙者および失業者が少なかった。

◇ 生活を楽しんでいる意識と心血管疾患(CVD)発症・死亡
生活を楽しんでいる意識によるカテゴリー(高い,中程度,低い)ごとにみたCVD発症者数,CVD死亡者数はそれぞれ以下のとおり。
・男性
  CVD発症
     脳卒中: 670人,865人,153人
     冠動脈疾患(CHD): 198人,273人,51人
     全CVD: 875人,1156人,206人
  CVD死亡
     脳卒中死亡: 184人,257人,61人
     CHD死亡: 111人,146人,40人
     全CVD死亡: 473人,606人,141人

・女性
  CVD発症
     脳卒中: 481人,518人,99人
     CHD: 75人,81人,8人
     全CVD: 63人,614人,109人
  CVD死亡
     脳卒中死亡: 139人,141人,30人
     CHD死亡: 50人,58人,7人
     全CVD死亡: 283人,298人,59人

◇ 生活を楽しんでいる意識とCVDリスク
生活を楽しんでいる意識が高い男性にくらべ,低い男性では脳卒中発症リスク,CHD発症リスク,および全CVD発症リスクが高かった。
女性においては,生活を楽しんでいる意識とCVD発症リスクおよびCVD死亡リスクとの関連は認められなかった。

生活を楽しんでいる意識による各カテゴリー(高い,中程度,低い)ごとにみたCVD発症リスクおよびCVD死亡リスク(多変量調整*ハザード比[95%信頼区間])は以下のとおり。
*年齢,職種・就業状況,BMI,喫煙状況,身体活動,飲酒量,糖尿病既往,高血圧既往,健診受診状況,精神的ストレスの状況,タイプAの性格により調整

・男性
  CVD発症
     脳卒中: 1(対照),1.18(1.06~1.32)***,1.22(1.01~1.47)**
     CHD: 1,1.26(1.04~1.53)**,1.28(0.93~1.77)
    全CVD: 1,1.20(1.09~1.32)***,1.23(1.05~1.44)****
  CVD死亡
     脳卒中死亡: 1,1.25(1.02~1.53)**,1.75(1.28~2.38)****
     CHD死亡: 1,1.20(0.92~1.56),1.91(1.30~2.81)****
     全CVD死亡: 1,1.15(1.01~1.31)**,1.61(1.32~1.96)****
**P<0.05,***P<0.01,****P<0.001

・女性
  CVD
     脳卒中: 1(対照),0.97(0.85~1.10),1.09(0.86~1.37)
     CHD: 1,1.16(0.83~1.62),0.66(0.31~1.42)
     全CVD: 1,1(0.89~1.13),1.04(0.84~1.30)
  CVD死亡
     脳卒中死亡: 1,0.86(0.67~1.10),1.06(0.69~1.61)
     CHD死亡: 1,1.20(0.80~1.81),0.76(0.33~1.73)
     全CVD死亡: 1,0.98(0.82~1.16),1.12(0.83~1.51)


◇ 結論
これまで多くの研究により,消極的な精神状態と心血管疾患発症・死亡リスクとの関連が示されているが,積極的な精神状態と心血管疾患との関連を前向きに検討した研究は少ない。本研究では,中年の男女を対象とした大規模コホート研究において,「生活を楽しんでいる意識」が心血管疾患リスクに与える影響を検討した。その結果,男性においてのみ, 生活を楽しんでいる意識の低さと心血管疾患発症リスクとの関連が認められ,積極的な精神状態が心血管疾患発症を抑制する可能性が示唆された。


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