[2011年文献] 糖尿病は脳梗塞のすべての病型の危険因子

糖尿病が脳梗塞の危険因子であることはよく知られているが,アジア人を対象とした脳梗塞病型別のデータは少ない。そこで,40~69歳の日本人男女を対象とした大規模前向きコホート研究において,血糖値と脳卒中および脳梗塞の各病型の発症リスクとの関連を検討した。その結果,糖尿病は脳梗塞のすべての病型の有意な危険因子であることが示唆された。

Cui R, et al. Diabetes mellitus and risk of stroke and its subtypes among Japanese: the Japan public health center study. Stroke. 2011; 42: 2611-4.pubmed

コホート
JPHCコホートI,II。
血糖値データが得られている40~69歳の男性13658人(コホートI/IIの調査開始時10560人,コホートI/IIの5年後調査時3098人),および女性23409人(コホートI/IIの調査開始時19241人,コホートI/IIの5年後調査時4168人)のうち,心血管疾患のある565人および癌のある845人を除外した男性13129人,女性22528人を2004年末まで追跡(追跡中央値12年)。

ベースライン時の血糖値により,性別ごとに対象者を以下の3つのカテゴリーに分けて解析した。
  • 糖尿病(男性1096人,女性939人):空腹時血糖値≧126 mg/dL,非空腹時血糖値≧198 mg/dL,または糖尿病治療薬使用
  • 正常血糖値(10456人,20063人):空腹時血糖値<110 mg/dL,または非空腹時血糖値<140 mg/dL
  • 境界域糖尿病(1577人,1526人):空腹時血糖値110~126 mg/dL,または非空腹時血糖値140~198 mg/dL
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は,男性で正常血糖値54歳,境界域糖尿病55歳,糖尿病56歳と血糖値が高いカテゴリーほど有意に高く(P for trend<0.001),女性でもそれぞれ54歳,56歳,57歳(P for trend<0.001)と同様であった。
血糖値が高いカテゴリーほど,男女ともにBMI,血圧,降圧薬服用率,総コレステロール値,トリグリセリド値,アルコール摂取量,および喫煙率が有意に高く,HDL-C値は有意に低かった。

追跡期間中の脳卒中の発症は904件。
内訳は,脳出血378件,脳梗塞526件(うちラクナ梗塞259件,大動脈梗塞91件,塞栓性脳梗塞140件)。

◇ 血糖値と脳卒中発症リスク
糖尿病の人では男女ともに正常血糖値の人に比べて脳梗塞のリスクが2~4倍高くなった。また,糖尿病の人は男女ともにラクナ梗塞,塞栓性脳梗塞のリスクが高く,女性では大動脈梗塞のリスクも高かった。

血糖値の各カテゴリーにおける全脳卒中発症および脳卒中の病型別発症の多変量調整ハザード比*(95%信頼区間)は以下のとおり。
*年齢,BMI,血清総コレステロール,HDL-C,トリグリセリド,喫煙,アルコール摂取量,収縮期血圧値,降圧薬服用,採血タイミング(空腹時/非空腹時),居住地区により調整

・男性
 全脳卒中:正常血糖値1.00(対照),境界域糖尿病1.01(0.76-1.34),糖尿病1.64(1.21-2.23)(P for trend=0.001)
   脳実質内出血:1.00,1.03(0.62-1.71),0.75(0.35-1.63)(P for trend=0.47)
   くも膜下出血:1.00,0.70(0.21-2.34),-
   脳梗塞:1.00,1.05(0.74-1.50),2.22(1.58-3.11)(P for trend<0.001)
    ラクナ梗塞:1.00,1.03(0.61-1.73),2.04(1.21-3.44)(P for trend=0.01)
    大動脈梗塞:1.00,1.24(0.58-2.69),1.94(0.88-4.28)(P for trend=0.10)
     塞栓性脳梗塞:1.00,1.19(0.63-2.23),2.85(1.59-5.08)(P for trend<0.001)

・女性
 全脳卒中:1.00,1.26(0.88-1.81),2.19(1.53-3.12)(P for trend<0.001)
   脳実質内出血:1.00,1.62(0.88-2.99),0.58(0.18-1.86)(P for trend=0.36)
   くも膜下出血:1.00,0.93(0.37-2.33),0.97(0.30-3.15)(P for trend=0.96)
   脳梗塞:1.00,1.22(0.73-2.03),3.63(2.41-5.48)(P for trend<0.001)
    ラクナ梗塞:1.00,1.79(1.01-3.20),3.85(2.22-6.70)(P for trend<0.001)
    大動脈梗塞:1.00,0.50(0.07-3.76),4.64(1.76-12.2)(P for trend=0.002)
    塞栓性脳梗塞:1.00,0.33(0.05-2.42),4.24(1.89-9.48)(P for trend<0.001)

以上の結果が男女で同様だったことから,男女をあわせた解析を行うと,正常血糖値の人に対する糖尿病の人の脳梗塞発症の多変量調整ハザード比は2.65(95%信頼区間2.04-3.44),ラクナ梗塞2.65(1.82-3.87),大動脈梗塞2.58(1.41-4.72),塞栓性脳梗塞:3.32(2.02-5.14)であった。

空腹時血糖値が1 SD増加した場合の脳卒中および各病型の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
 全脳卒中:1.19(1.09-1.30)
  脳出血:0.93(0.75-1.16)
  脳梗塞:1.30(1.19-1.42)
   ラクナ梗塞:1.38(1.24-1.54)
   大動脈梗塞:1.20(0.92-1.57)
   塞栓性脳梗塞:1.32(1.12-1.56)


◇ 結論
糖尿病が脳梗塞の危険因子であることはよく知られているが,アジア人を対象とした脳梗塞病型別のデータは少ない。そこで,40~69歳の日本人男女を対象とした大規模前向きコホート研究において,血糖値と脳卒中および脳梗塞の各病型の発症リスクとの関連を検討した。その結果,糖尿病は脳梗塞のすべての病型の有意な危険因子であることが示唆された。


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