[2012年文献] 高感度CRP高値は心筋梗塞発症リスクと関連

これまでの研究から,高感度CRP(hsCRP)と虚血性心疾患発症リスクとの関連が示されているが,虚血性脳卒中リスクとの関連は明らかになっていない。そこで,欧米にくらべてhsCRP値が低いとされるアジア人において,hsCRP値が脳卒中および脳卒中の各病型の発症リスクに影響するかどうかを検討するため,40~69歳の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究における解析を行った。その結果,hsCRP高値は心筋梗塞の発症リスクと有意に関連しており,虚血性脳卒中とも関連する傾向が示された。

Iso H, et al. The impact of C-reactive protein on risk of stroke, stroke subtypes, and ischemic heart disease in middle-aged Japanese: the Japan public health center-based study. J Atheroscler Thromb. 2012; 19: 756-66.pubmed

コホート
JPHCコホートI,II(コホート内症例対照研究)。心血管疾患の発症データがない2地域(東京,大阪)は除外した。
ベースライン時(1990~1993年)の自己記入式質問票に回答し,心筋梗塞,狭心症,脳卒中,あるいは癌の既往がなく,血液サンプル10mLの提供に同意した40~69歳の男女29876人(男性10334人,女性19542人)を,2007年12月31日まで追跡。

上記対象者のなかから,追跡期間中に脳卒中を発症した1132人を脳卒中発症群,虚血性心疾患を発症した209人を虚血性心疾患発症群とした。
罹患密度サンプリング(incidence-density sampling)により,性別,年齢(3年以内),採血日(6か月以内),食後経過時間(5時間以内),地域でマッチングした対照(脳卒中発症者1人につき1人,虚血性心疾患発症者1人につき2人)を抽出した。
発症者および対照者を,以下のように高感度CRP(hsCRP)値の4分位(Q1:hsCRP<0.257mg/L[対照],Q2:0.257~0.499 mg/L,Q3:0.500~1.0500 mg/L,Q4:≧1.0600 mg/L)に分けて解析した。

全脳卒中:発症群1132人(Q1:281人,Q2:239人,Q3:298人,Q4:314人),対照群1132人(Q1:298人,Q2:285人,Q3:278人,Q4:271人)
   虚血性脳卒中:638人(Q1:140人,Q2:128人,Q3:170人,Q4:200人),638人(Q1:169人,Q2:156人,Q3:159人,Q4:154人)
   ラクナ梗塞:307人(Q1:68人,Q2:54人,Q3:89人,Q4:96人),307人(Q1:81人,Q2:70人,Q3:81人,Q4:75人)
   アテローム血栓性脳梗塞: 156人(Q1:31人,Q2:35人,Q3:39人,Q4:51人),156人(Q1:36人,Q2:43人,Q3:34人,Q4:43人)
   心原性脳塞栓:127人(Q1:28人,Q2:32人,Q3:27人,Q4:40人),127人(Q1:40人,Q2:32人,Q3:26人,Q4:29人)
   出血性脳卒中:494人(Q1:141人,Q2:111人,Q3:128人,Q4:114人),494人(Q1:129人,Q2:129人,Q3:119人,Q4:117人)
   脳内出血:344人(Q1:85人,Q2:81人,Q3:89人,Q4:89人),344人(Q1:88人,Q2:89人,Q3:83人,Q4:84人)
   くも膜下出血:150人(Q1:56人,Q2:30人,Q3:39人,Q4:25人),150人(Q1:41人,Q2:40人,Q3:36人,Q4:33人)
 虚血性心疾患:209人(Q1:34人,Q2:39人,Q3:51人,Q4:85人),418人(Q1:89人,Q2:103人,Q3:110人,Q4:116人)
   心筋梗塞:168人(Q1:24人,Q2:34人,Q3:37人,Q4:73人),336人(Q1:70人,Q2:83人,Q3:92人,Q4:91人)
   心臓突然死:41人(Q1:10人,Q2:5人,Q3:14人,Q4:12人),82人(Q1:19人,Q2:20人,Q3:18人,Q4:25人)
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は55~58歳。男性の割合は,脳卒中発症群52%,虚血性脳卒中発症群57%,出血性脳卒中発症群44%,虚血性心疾患発症群64%。
喫煙経験者,降圧薬服用者,および糖尿病の割合は,虚血性脳卒中発症群および虚血性心疾患発症群で,それぞれの対照群にくらべて高かった。
収縮期血圧および拡張期血圧は,脳卒中のいずれの病型の発症群でも,それぞれの対照群にくらべて高かった(くも膜下出血を除く)。
虚血性脳卒中および虚血性心疾患発症群では,それぞれの対照群にくらべ,総コレステロールおよびBMIが高かったが,飲酒者の割合は虚血性心疾患発症群で対照にくらべて低かった。
高感度CRP(hsCRP)中央値は,全脳卒中,虚血性脳卒中,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓,虚血性心疾患,および心筋梗塞発症群で,それぞれの対照群にくらべて高かった。

◇ hsCRP値と脳卒中,虚血性心疾患との関連
hsCRP値のカテゴリー間の比較では,hsCRP値が高くなるにつれて,虚血性脳卒中,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓,虚血性心疾患,および心筋梗塞の発症リスクが上昇していた。ただし,交絡因子(BMI,喫煙状況,アルコール摂取,総コレステロール,脂質低下薬服用,収縮期血圧,降圧薬服用,血糖)による調整を行うと,有意な関連は消失した。

一方,hsCRP値を連続変数として扱った解析では,自然対数変換したhsCRP値の1 SD増加ごとに,心筋梗塞発症の多変量調整オッズ比(OR)*が1.28(95%信頼区間1.03-1.59,P=0.03)と有意に増加しており,虚血性脳卒中(OR 1.13,0.99-1.29,P=0.07),心原性脳塞栓(OR 1.41,0.98-2.01,P=0.06)でもリスクが増加する傾向がみられた。
*年齢,性別,採血日,食後経過時間,試験実施地域,BMI,喫煙状況,アルコール摂取,総コレステロール,脂質低下薬服用,収縮期血圧,降圧薬服用,血糖で調整


◇ 結論
これまでの研究から,高感度CRP(hsCRP)と虚血性心疾患発症リスクとの関連が示されているが,虚血性脳卒中リスクとの関連は明らかになっていない。そこで,欧米にくらべてhsCRP値が低いとされるアジア人において,hsCRP値が脳卒中および脳卒中の各病型の発症リスクに影響するかどうかを検討するため,40~69歳の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究における解析を行った。その結果,hsCRP高値は心筋梗塞の発症リスクと有意に関連しており,虚血性脳卒中とも関連する傾向が示された。


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