[2013年文献] 10年間の脳卒中発症率を予測する新たなモデルを作成

Yatsuya H, et al. Development of a Point-based Prediction Model for the Incidence of Total Stroke: Japan Public Health Center Study. Stroke. 2013; 44: 1295-302.pubmed

コホート
JPHCコホートII。
対象11保健所の管轄行政区内に居住し,1993~1994年に研究に登録された40~69歳の男女61984人のうち,生活習慣データに不備のある11185人,生化学データに不備のある34489人,および心血管疾患既往のある638人を除いた15672人(男性5315人,女性10357人)を2007年まで追跡(20万1971人・年)。
結 果
◇ 対象背景
男性33.9%,ベースライン時喫煙率15.4%,BMI 25 kg/m2以上32.6%,降圧薬服用率18.3%,糖尿病4.6%。

◇ リスク予測モデルの作成
追跡期間中の脳卒中は790件で,粗発症率は1000人・年あたり3.9。

単変量解析で脳卒中発症との有意な関連(P<0.10)がみられた10の変数(年齢,性別,喫煙,アルコール摂取,身体活動,BMI,HDL-C,血圧,降圧薬服用,糖尿病)を用いた多変量モデルにおいて,変数減少法により脳卒中発症との有意な関連(P<0.10)がみられない変数(アルコール摂取,身体活動,HDL-C)を除外し,有意(P<0.05)な相互作用項(性別×喫煙,降圧薬服用×血圧)を加えた最終モデルを作成した。

Framingham Heart Studyと同様の手法(Stat Med. 2004; 23: 1631-60. PMID 15122742)を用いて,各変数に以下のとおり点数を設定したリスクスコアを作成。これらの合計点数(最低4点~最高58点)に応じて,予測される10年間の脳卒中発症率(%)が換算表から算出できるようになっている。あわせて,合計点数から血管年齢も男女別に推定できるようにした。

  [年齢]40~44歳: 0点,45~49歳: 5点,50~54歳: 6点,55~59歳: 12点,60~64歳: 16点,65~69歳: 19点
  [性別]男性: 6点,女性: 0点
  [性別×喫煙]男性の現在喫煙: 4点,女性の現在喫煙: 8点
  [BMI]25 kg/m2未満: 0点,25 kg/m2以上30 kg/m2未満: 2点,30 kg/m2以上: 3点
  [降圧薬服用×血圧]
   ・降圧薬非服用者において,120 / 80 mmHg未満: 0点,120~129 / 80~84 mmHg: 3点,130~139 / 85~89 mmHg: 6点,140~159 / 90~99 mmHg: 8点,160~179 / 100~109 mmHg: 11点,180 / 110 mmHg以上: 13点
   ・降圧薬服用者において,120 / 80 mmHg未満: 10点,120~129 / 80~84 mmHg: 10点,130~139 / 85~89 mmHg: 10点,140~159 / 90~99 mmHg: 11点,160~179 / 100~109 mmHg: 11点,180 / 110 mmHg以上: 15点
  [糖尿病]あり: 7点,なし: 0点

たとえば,66歳の喫煙者の男性でBMIが24 kg/m2,降圧薬は服用せず収縮期血圧が145 mmHg,糖尿病はない場合,合計点数は37点となり,予測される10年間の脳卒中発症率は12%以上15%未満,血管年齢は85歳相当となる。

血管年齢: ある対象者と同じ脳卒中発症リスクを有しているが,年齢以外のすべての因子が至適の状態である人の年齢。これまでの研究で,とくに若年者では心血管疾患の相対リスクが高いにもかかわらず絶対リスクは低く判定される場合が多いことから,血管年齢の活用が期待される。

◇ リスク予測モデルの検証
リスクスコアの受信者動作特性曲線下面積(area under the curve: AUC)は0.73と良好であった。
対象者をリスクスコアの合計点数の十分位によるカテゴリーに分類し,予測される10年間の脳卒中発症率を実際の発症率との比較による較正(calibration)を行った結果,どのカテゴリーでもおおむね同等となった(Grønnesby and Borgan検定によるP=0.27)。

コホートIの対象者3454人(40~59歳)のデータを用いたリスクスコアの検証を行った結果,AUCは0.69と低くなったが,実際の発症率との比較による較正を行うと,Grønnesby and Borgan検定によるP=0.17と,良好な結果が得られた。
さらに,コホートIIにおけるブートストラップ法を用いた検証(内部検証のため,楽観性[optimism]について調整)を行った結果,AUCは0.73と良好であった。

◇ 各変数の人口寄与度割合(PAF)
リスクスコアに含まれる変数の一部について,脳卒中発症のPAF(その因子がなければ予防できたはずの脳卒中の割合)の算出を行った。
たとえば,高血圧(140 / 90 mmHg以上)のPAFは35.4%と大きかった。現在喫煙のPAFは男性13.8%,女性1.3%で,BMI 25 kg/m2以上のPAFは6.1%,糖尿病のPAFは5.4%であった。


◇ 結論
脳卒中発症率の高い集団である日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究のデータを用いて,健診などでよく測定される変数をもとに10年間の脳卒中発症リスクを予測する,新たなリスクスコアを作成した。このリスクスコア,ならびにあわせて算出される血管年齢の脳卒中予防における有用性については,今後の検討をまつ必要がある。


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