[2015年文献] 糖尿病をもつ人の全死亡・循環器疾患死亡リスクは高い

日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,自己申告に基づくベースライン時の糖尿病と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討した。17.8年間(中央値)の追跡の結果,糖尿病有病者の全死亡リスクは非有病者よりも有意に高いことが示された。死因別にみると,糖尿病有病者では循環器疾患死亡リスクおよびその他の死亡(癌・循環器疾患以外)のリスクが有意に高くなっていた。近年の糖尿病の増加をうけ,日本人の寿命に影響が及ぶ可能性も示唆される。

Kato M, et al.; JPHC Study Group. Diagnosed diabetes and premature death among middle-aged Japanese: results from a large-scale population-based cohort study in Japan (JPHC study). BMJ Open. 2015; 5: e007736.pubmed

コホート
JPHCコホートI,II。
対象11保健所の管轄行政区内に居住する40~69歳の男女で,1990年からのコホートIまたは1993年からのコホートIIのベースライン健診を受け,かつ健診と同時に行われた自己記入式質問票による調査に回答した11万3402人(回答率80.9%)のうち,追跡不能となった90人,心血管疾患・慢性の肝または腎疾患・癌をもつ8049人,データに不備のある5049人,BMIが14 kg/m2未満または40 kg/m2超の1363人を除いた99584人(男性46017人,女性53567人)を2010年12月31日まで追跡。
追跡期間の中央値は17.8年間。

ベースライン健診において,自己記入式質問票の既往歴欄に「糖尿病がある」と答えた人,ならびに服用薬の欄に「糖尿病薬を服用している」と答えた人を糖尿病有病者とした。
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時の糖尿病の割合は,男性6%(2761人),女性2.8%(1525人)。

男性では,糖尿病有病者のほうが非有病者よりも年齢,余暇の活発な身体活動の割合,高血圧既往の割合が高かった。脂質低下薬の服用率は,有病者3.5%,非有病者1.2%。
女性では,糖尿病有病者のほうが非有病者よりも年齢,BMI,余暇の活発な身体活動の割合,および高血圧既往の割合が高かった。脂質低下薬の服用率は,有病者5.5%,非有病者1.9%。

◇ 糖尿病と全死亡リスク
追跡期間中に死亡したのは男性8223人,女性4640人で,内訳は以下のとおり(それぞれ糖尿病非有病者 vs. 有病者の人数)。
循環器疾患死亡: 男性1744人 vs. 女性230人,1084人 vs. 123人
癌死亡: 男性3093人 vs. 283人,女性1841人 vs.71人
その他の死亡(癌・循環器疾患以外): 男性2530人 vs. 343人,女性1370人 vs. 151人

糖尿病有病者の全死亡の多変量調整ハザード比は,男性1.60(95%信頼区間1.49-1.71),女性1.98(1.77-2.21)と,いずれも有意に高かった。
年齢,BMI,飲酒,喫煙,高血圧既往,余暇の身体活動,地域で調整)

◇ 糖尿病と死因別死亡リスク
糖尿病有病者の死因別死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,男性では虚血性心疾患死亡および脳卒中死亡,女性では虚血性心疾患死亡および脳梗塞死亡のリスクがとくに高くなっていた。
糖尿病有病者の癌死亡のリスクは循環器疾患死亡ほど高くなかったが,その他の死亡(癌・循環器疾患以外)のリスクは男女とも高かった。その他の死亡の内訳として多かったのは,詳細不明の糖尿病による死亡,起因菌不明の肺炎による死亡,および原因不明の死亡であった。

  循環器疾患死亡: 男性1.76(1.53-2.02),女性2.49(2.06-3.01)
   虚血性心疾患死亡: 2.30(1.80-2.95),4.52(3.21-6.37)
   脳卒中死亡: 1.68(1.34-2.10),1.72(1.23-2.40)
    脳梗塞死亡: 1.87(1.24-2.82),3.43(2.05-5.74)
    脳内出血死亡: 1.73(1.16-2.59),1.64(0.83-3.24)
  癌死亡: 1.25(1.11-1.42),1.04(0.82-1.32)
  その他の死亡(癌・循環器疾患以外): 1.91(1.71-2.14),2.67(2.25-3.17)

以上の結果は,ベースラインから5年間までの死亡を除外した解析においても同様であった。
調整に用いた因子間の有意な相互作用はみとめられず,出生コホートによる影響を考慮した解析や,さらに脂質低下薬服用で調整した解析でも結果は同様であった。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,自己申告に基づくベースライン時の糖尿病と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討した。17.8年間(中央値)の追跡の結果,糖尿病有病者の全死亡リスクは非有病者よりも有意に高いことが示された。死因別にみると,糖尿病有病者では循環器疾患死亡リスクおよびその他の死亡(癌・循環器疾患以外)のリスクが有意に高くなっていた。近年の糖尿病の増加をうけ,日本人の寿命に影響が及ぶ可能性も示唆される。


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