[2016年文献] 朝食をとる頻度が高い人では,脳卒中(とくに脳出血)の発症リスクが低い

日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,朝食をとらないことが脳卒中や冠動脈疾患の発症リスク増加と関連するかどうかを検討した。1995年から2010年にかけての追跡の結果,心血管疾患,脳卒中および脳出血の発症リスクについて,朝食の摂取頻度との有意な負の関連がみとめられた。

Kubota Y, et al. Association of Breakfast Intake With Incident Stroke and Coronary Heart Disease: The Japan Public Health Center-Based Study. Stroke. 2016; pubmed

コホート
JPHCコホートI,II。
対象9保健所(発症データのない東京および大阪を除外)の管轄行政区内に居住し,コホートIでは1995年から,コホートIIでは1998年から行われた第2次健診(ベースライン),ならびに健診と同時に行われた自己記入式質問票による調査に回答した40~69歳の男女88981人(回答率78%)のうち,脳卒中・心筋梗塞・狭心症または癌の既往のある6209人を除いた82772人(男性38676人,女性44096人)を,2009年(コホートI)または2010年(コホートII)まで追跡(105万30人・年)。

朝食の摂取頻度について,自己記入式質問票への回答(ほぼ食べない/月1~3回/週1~2回/週3~4回/週5~6回/毎日)に基づき,以下の4つのカテゴリーに対象者を分類した。
  週2回以下(6759人)
  週3~4回(2687人)
  週5~6回(2788人)
  毎日(70538人)
結 果
◇ 対象背景
おもな対象背景は以下のとおりで,いずれも朝食摂取頻度のカテゴリー間で有意な差がみられた(それぞれ週2回以下,週3~4回,週5~6回,毎日の値)。
  年齢(歳): 53.4,53.1,53.4,57.1(P<0.001)
  男性の割合: 49.2%,44.3%,47.7%,46.5%(P=0.002)
  飲酒率: 47.5%,47.4%,47.7%,44.6%(P<0.001)
  総摂取エネルギー(kcal/日): 1863,1956,1982,2091(P<0.001)
  野菜の摂取量(g/日): 213,219,218,228(P<0.001)
  魚の摂取量(g/日): 86.7,86.5,87.2,94.0(P<0.001)
  喫煙率: 37.7%,30.9%,29.9%,23.4%(P<0.001)
  余暇の身体活動(週1回以上): 18.8%,23.3%,21.0%,20.7%(P=0.033)
  一人暮らしの割合: 10.2%,10.1%,8.8%,4.4%(P<0.001)
  肉体労働の割合: 16.2%,17.4%,19.8%,27.6%(P<0.001)
  BMI≧25 kg/m2: 31.2%,32.6%,28.6%,28.0%(P<0.001)
  降圧薬服用率: 16.9%,17.1%,16.2%,19.4%(P<0.001)
  総コレステロール≧220 mg/dL: 40.5%,33.5%,35.4%,33.8%(P<0.001)
  糖尿病: 3.2%,3.7%,3.8%,4.7%(P<0.001)

◇ 朝食の摂取頻度と心血管疾患発症リスク
朝食の摂取頻度のカテゴリー(週2回以下,週3~4回,週5~6回,毎日[対照])ごとの心血管疾患およびその内訳の発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,全心血管疾患,全脳卒中,および脳出血のリスクについて,摂取頻度との負の関連がみとめられた(年齢,性,アルコール・総エネルギー・野菜・果物・魚・大豆・乳製品・ナッツ・飽和脂肪酸・食物繊維・ナトリウム摂取量,喫煙,余暇の身体活動,睡眠時間,自覚的な精神ストレス,一人暮らし,肉体労働,調査保健所で調整)。

全心血管疾患: 1.14(1.02-1.27),1.17(0.98-1.39),0.99(0.83-1.19),1.00(P for trend=0.013)
  全脳卒中: 1.18(1.04-1.34),1.14(0.93-1.39),1.00(0.82-1.22),1.00(P for trend=0.007)
    脳梗塞: 1.10(0.92-1.30),1.13(0.86-1.47),1.03(0.79-1.33),1.00(P for trend=0.217)
    脳出血: 1.36(1.10-1.70),1.22(0.86-1.73),1.10(0.77-1.56),1.00(P for trend=0.004)
    くも膜下出血: 1.10(0.76-1.60),0.94(0.51-1.72),0.66(0.32-1.33),1.00(P for trend=0.801)
  冠動脈疾患: 0.96(0.73-1.25),1.27(0.87-1.85),0.95(0.62-1.44),1.00(P for trend=0.974)

降圧薬服用の有無による層別解析を行うと,非服用者では上記とほぼ同様の結果が得られたが,服用者では,全心血管疾患発症リスクについて朝食の摂取頻度との負の関連がみられたのみであった。

また,因果の逆転の可能性を考慮し,ベースラインから5年以内に発症した心血管疾患を除外した解析を行ったが,結果に大きな変わりはなかった。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,朝食をとらないことが脳卒中や冠動脈疾患の発症リスク増加と関連するかどうかを検討した。1995年から2010年にかけての追跡の結果,心血管疾患,脳卒中および脳出血の発症リスクについて,朝食の摂取頻度との有意な負の関連がみとめられた。


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