[2018年文献] 血漿中の緑茶カテキン濃度と,脳卒中発症リスクおよび冠動脈疾患発症リスクとの関連

これまでにJPHC研究では,日本人を対象とした前向きコホート研究において,1日に4杯以上緑茶を飲む人では脳卒中発症リスクが低下するとの知見が得られている。そこで,血漿中の緑茶カテキン濃度と,脳卒中発症リスクおよび冠動脈疾患(CHD)発症リスクとの関連を調べた。その結果,血漿中の緑茶カテキン濃度と,脳卒中発症リスクおよびCHD発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかったが,喫煙習慣のない男性では,血漿中のエピガロカテキンガレート(EGCG)濃度と脳卒中発症リスクとのあいだに有意な負の関連がみとめられた。喫煙習慣のない中年男性において,緑茶を多く飲むことが,脳卒中発症リスクの低下と関連する可能性が示唆された。

Ikeda A, et al.; JPHC Study Group. Plasma tea catechins and risk of cardiovascular disease in middle-aged Japanese subjects: The JPHC study. Atherosclerosis. 2018; 277: 90-97.pubmed

コホート
対象11保健所(心血管疾患の発症データがない地域,東京・大阪は除外)の管轄行政区内に居住し,初回調査(コホートI: 1990年,コホートII: 1993年)に参加した,40~59歳(コホートI)または40~69歳(コホートII)の116896人のうち,日本国籍を持たない51人,追跡開始前に転居した166人,出生日が不正確な3人を除外した。そのなかでベースライン時に自己記入式質問票に回答し,心筋梗塞,狭心症,脳卒中,あるいは癌の既往がなく,血液サンプル10 mLの提供に同意した男女29876人を,2007年12月31日まで追跡。

罹患密度サンプリング(incidence-density sampling)により,追跡期間中に脳卒中を発症した人(脳卒中発症群),冠動脈疾患(CHD)を発症した人(CHD発症群)に対して,性別・年齢(2年以内)・採血日(3ヵ月以内)・採血時の食後経過時間(4時間以内)・地域でマッチングした対照群(脳卒中の発症者1人につき1人,CHDの発症者1人につき2人)を抽出した。

血漿中の緑茶カテキン(エピガロカテキン[EGC]・エピカテキン[EC]・エピガロカテキンガレート[EGCG]・エピカテキンガレート[ECG])濃度は高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
結 果
脳卒中発症群は1132人,冠動脈疾患(CHD)発症群は209人であった(対照はそれぞれ,1132人,418人)。

◇ 対象背景
脳卒中発症群およびその対照群の背景は以下のとおり(脳卒中発症群 vs. 対照群)。

 年齢(歳): [男性]57.4 vs. 57.3,[女性]57.2 vs. 57.1
 喫煙率(%): 50.0% vs. 40.3%(P<0.001),5.85% vs. 2.37%(P=0.004)
 降圧薬服用率(%): 26.4% vs. 14.9%(P<0.001),31.3% vs. 17.3%(P<0.001)
 糖尿病既往の割合(%): 11.9% vs. 5.14%(P<0.001),8.77% vs. 4.48%(P=0.01)
 緑茶の摂取量(g/日): 440.1 vs. 457.5(P=0.39),402.8 vs. 399.7(P=0.87)
 中国茶の摂取量(g/日): 35.5 vs. 40.7(P=0.49),58.1 vs. 53.3(P=0.63)
 紅茶の摂取量(g/日): 11.6 vs. 9.7(P=0.53),11.3 vs. 11.3(P=1.00)

脳卒中発症群およびCHD発症群とそれぞれの対照群を,以下のように血漿中の緑茶カテキン濃度の3分位値,および中央値で分けて解析した。

 脳卒中発症群: 検出なし,T1(低い),T2,T3
 CHD発症群: 検出なし,M1(低い),M2

Spearmanの相関係数によると,緑茶の消費量(g/週)と血漿中のカテキン濃度とのあいだには有意な相関がみとめられた。

◇ 血漿中の緑茶カテキン濃度と脳卒中発症リスクおよびCHD発症リスクとの関連
脳卒中発症およびCHD発症の多変量調整オッズ比をみたところ,男女ともに,血漿中の緑茶カテキン(EGC・EC・EGCG・ECG・総カテキン)濃度と脳卒中発症リスクおよびCHD発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかった(収縮期血圧,降圧薬服用,糖尿病既往,BMI,飲酒の習慣,喫煙の習慣,高感度CRPで調整)。

・脳卒中発症リスク(検出なし,T1,T2,T3)
 EGC: [男性]1.00,1.32,0.99,0.97,P for trend=1.00,[女性]1.00,1.04,1.13,0.95,P for trend=0.91

 EC: 1.00,1.18,1.13,1.15,P for trend=0.44,1.00,0.98,0.99,1.02,P for trend=0.97

 EGCG: 1.00,1.56,0.97,0.83,P for trend=0.56,1.00,1.07,1.01,0.84,P for trend=0.57

 ECG: 1.00,1.21,1.19,0.70,P for trend=0.60,1.00,1.16,0.84,1.34,P for trend=0.47

 総カテキン: 1.00,0.98,1.11,1.09,P for trend=0.72,1.00,1.08,1.09,0.87,P for trend=0.42

・CHD発症リスク(検出なし,M1,M2)
 EGC: 1.00,0.97,0.78,P for trend=0.55,1.00,1.29,1.99,P for trend=0.20

 EC: 1.00,1.08,0.96,P for trend=0.97,1.00,1.26,1.20,P for trend=0.66

 EGCG: 1.00,0.96,0.95,P for trend=0.89,1.00,0.55,1.51,P for trend=0.68

 ECG: 1.00,0.89,0.87,P for trend=0.73,1.00,0.68,1.52,P for trend=0.40

 総カテキン: 1.00,1.18,1.02,P for trend=0.79,1.00,1.69,1.55,P for trend=0.76

◇ 喫煙習慣の有無ごとにみた,血漿中の緑茶カテキン濃度と脳卒中発症リスクとの関連
喫煙習慣の有無別に,脳卒中発症の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をみたところ,喫煙習慣のない男性では,血漿中のEGCG濃度と脳卒中発症リスクとのあいだに有意な関連がみとめられたが,EC・ECG・EGC濃度については有意な関連はみとめられなかった(*P<0.05 vs. 検出なし)。

・喫煙習慣のない男性(検出なし,T1,T2,T3)
 EGC: 1.00,1.15(0.73-1.82),1.19(0.72-1.97),0.68(0.37-1.25),P for trend=0.63

 EC: 1.00,1.62(1.02-2.57),1.41(0.82-2.43),0.74(0.40-1.36),P for trend=1.00

 EGCG: 1.00,1.36(0.87-2.13),0.96(0.57-1.63),0.53(0.29-0.98)*,P for trend=0.14

 ECG: 1.00,1.03(0.61-1.76),1.15(0.67-1.98),0.53(0.27-1.02),P for trend=0.26

 総カテキン: 1.00,0.92(0.59-1.44),1.32(0.85-2.05),0.80(0.48-1.33),P for trend=0.34

・喫煙習慣のある男性(検出なし,T1,T2,T3)
 EGC: 1.00,1.43(0.81-2.51),0.86(0.51-1.46),1.23(0.74-2.04),P for trend=0.65

 EC: 1.00,0.72(0.39-1.31),0.88(0.52-1.49),1.26(0.74-2.15),P for trend=0.58

 EGCG: 1.00,1.77(0.98-3.20),0.97(0.56-1.67),1.28(0.75-2.16),P for trend=0.47

 ECG: 1.00,1.26(0.70-2.25),1.22(0.71-2.09),1.00(0.55-1.79),P for trend=0.70

 総カテキン: 1.00,1.43(0.83-2.49),0.91(0.55-1.52),1.35(0.85-2.15),P for trend=0.27

◇ 結論
これまでにJPHC研究では,日本人を対象とした前向きコホート研究において,1日に4杯以上緑茶を飲む人では脳卒中発症リスクが低下するとの知見が得られている。そこで,血漿中の緑茶カテキン濃度と,脳卒中発症リスクおよび冠動脈疾患(CHD)発症リスクとの関連を調べた。その結果,血漿中の緑茶カテキン濃度と,脳卒中発症リスクおよびCHD発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかったが,喫煙習慣のない男性では,血漿中のエピガロカテキンガレート(EGCG)濃度と脳卒中発症リスクとのあいだに有意な負の関連がみとめられた。喫煙習慣のない中年男性において,緑茶を多く飲むことが,脳卒中発症リスクの低下と関連する可能性が示唆された。


▲このページの一番上へ

--- epi-c.jp 収載疫学 ---
Topics
【epi-c研究一覧】 CIRCS | EPOCH-JAPAN | Funagata Diabetes Study(舟形スタディ) | HIPOP-OHP | Hisayama Study(久山町研究)| Iwate KENCO Study(岩手県北地域コホート研究) | JACC | JALS | JMSコホート研究 | JPHC | NIPPON DATA | Ohasama Study(大迫研究) | Ohsaki Study(大崎研究) | Osaka Health Survey(大阪ヘルスサーベイ) | 大阪職域コホート研究 | SESSA | Shibata Study(新発田研究) | 滋賀国保コホート研究 | Suita Study(吹田研究) | Takahata Study(高畠研究) | Tanno Sobetsu Study(端野・壮瞥町研究) | Toyama Study(富山スタディ) | HAAS(ホノルルアジア老化研究) | Honolulu Heart Program(ホノルル心臓調査) | Japanese-Brazilian Diabetes Study(日系ブラジル人糖尿病研究) | NI-HON-SAN Study
【登録研究】 OACIS | OKIDS | 高島循環器疾患発症登録研究
【国際共同研究】 APCSC | ERA JUMP | INTERSALT | INTERMAP | INTERLIPID | REACH Registry | Seven Countries Study
【循環器臨床疫学のパイオニア】 Framingham Heart Study(フラミンガム心臓研究),動画編
【最新の疫学】 Worldwide文献ニュース | 学会報告
………………………………………………………………………………………
copyright Life Science Publishing Co., Ltd. All Rights Reserved.