[2019年文献] 沖縄の一般住人において,野菜・果物ならびに沖縄野菜の摂取量と心血管疾患発症リスクとのあいだに有意な関連はない

沖縄野菜には,葉酸と食物繊維が豊富に含まれている。とくに葉酸は,多く摂取することで,脳卒中・冠動脈疾患・心筋梗塞による死亡リスクの低下と関連することが報告されている。しかし,これまでに沖縄野菜の摂取量と,心血管疾患(CVD)との関連を調べた大規模な前向き研究は少ない。そこで,沖縄在住の一般住民を対象とした,前向きのコホート研究において,一般的な野菜・果物の摂取量,ならびに沖縄野菜の摂取量と,CVDの発症リスクとの関連を検討した。その結果,いずれの摂取量も,CVDの発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかった。今回は,7種類の沖縄野菜の摂取量を用いた検討を行ったが,そのほかの沖縄野菜も含めた検討の必要性も考えられる。

Yoshizaki T, et al. Association of vegetable, fruit, and Okinawan vegetable consumption with incident stroke and coronary heart disease. J Epidemiol. 2019. doi: 10.2188/jea.JE20180130. pubmed

コホート
沖縄県に居住し(コホートIでは沖縄の中部地区,コホートIIでは宮古地区),食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査を含む初回調査(コホートI: 1990年,コホートII: 1993年)に参加した,40~59歳(コホートI)または40~69歳(コホートII)の28315人(男性: 14390人,女性: 13925人)のうち,ベースライン時に日本国籍を持たない人,追跡開始前に転居した人,出生日が不正確な人を除外し,5年後に実施された第2回調査に参加した18778人(男性: 8941人,女性9837人)。さらに心血管疾患と診断された71人,または癌・脳卒中・心筋梗塞・狭心症の既往がある868人,質問票の食事に関する記載に不備のある352人,カロリー摂取量が極端に多い,または少ない506人,沖縄野菜についての回答がなかった483人を除外した,16498人(男性: 7726人,女性: 8772人)を対象とした。コホートIとコホートIIは,それぞれ1995年,1998年から開始し,2009年,2012年の12月31日まで追跡した(21万7467人・年)。
結 果
追跡期間中に脳卒中を発症した人は839人,心筋梗塞を発症した人は197人。

食物摂取頻度調査票では,7種類の沖縄野菜(チンゲンサイ,カラシナ,ゴーヤ,フダンソウ,ヘチマ,ヨモギ,パパイヤ),15種類の果物,および24種類の野菜について,1日の摂取量を調査し,それぞれの摂取量ごとの3分位値で対象者を3つのカテゴリーにわけて解析した。

 [T1]少ない,[T2]普通,[T3]多い

◇ 対象背景
沖縄野菜の摂取量でわけた対象背景は以下のとおり。

 年齢(歳): [T1]56,[T2]57,[T3]58(P<0.001)
 男性の割合: 52.6%,45.4%,42.6%(P<0.001)
 中部地区に住む人の割合: 59.8%,55.3%,51.1%(P<0.001)
 喫煙しない人の割合: 70.3%,74.4%,78.1%(P<0.001)
 飲酒しない人の割合: 55.7%,61.5%,67.4%(P<0.001)
 野菜・果物の総摂取量(g/日): 254,351,508(P<0.001)
 野菜の総摂取量(g/日): 144.2,211.0,334.9(P<0.001)
 果物の総摂取量(g/日): 110.4,140.5,173.6(P<0.001)
 沖縄野菜の総摂取量(g/日): 17.3,45.0,114.9(P<0.001)

◇ 野菜・果物の摂取量と心血管疾患発症リスクとの関連
心血管疾患(CVD)発症のカテゴリーごとの多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。野菜・果物の総摂取量,野菜の総摂取量,果物の総摂取量と,CVD発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかった(年齢,性別,地域,飲酒量,喫煙本数,職種,自覚的ストレスの強度,BMI,身体活動量,エネルギー摂取量,魚・肉・塩の摂取量で調整したエネルギー摂取量,糖尿病既往,高血圧既往,高脂血症既往で調整)。

・野菜・果物の総摂取量別のCVD発症リスク
 CVD: [T1]1.0,[T2]0.90(0.77-1.06),[T3]1.05(0.89-1.24),P for trend=0.584
  脳卒中: 1.0,0.91,1.06,P for trend=0.571
   脳内出血: 1.0,0.99,1.30,P for trend=0.097
   虚血性脳卒中: 1.0,0.90,0.90,P for trend=0.388
  冠動脈疾患(CHD): 1.0,0.86,1.04,P for trend=0.875

・野菜の総摂取量別のCVD発症リスク
 CVD: 1.0,0.97(0.82-1.14),1.15(0.97-1.37),P for trend=0.097
  脳卒中: 1.0,0.93,1.18,P for trend=0.080
   脳内出血: 1.0,1.11,1.54,P for trend=0.009
   虚血性脳卒中: 1.0,0.84,1.01,P for trend=0.907
  CHD: 1.0,1.12,1.07,P for trend=0.739

・果物の総摂取量別のCVD発症リスク
 CVD: 1.0,0.94(0.81-1.10),0.93(0.79-1.09),P for trend=0.377
  脳卒中: 1.0,0.95,0.89,P for trend=0.191
   脳内出血: 1.0,0.82,0.83,P for trend=0.205
   虚血性脳卒中: 1.0,1.01,0.85,P for trend=0.184
  CHD: 1.0,0.93,1.15,P for trend=0.462

◇ 沖縄野菜の摂取量とCVD発症リスクとの関連
CVD発症のカテゴリーごとの多変量調整ハザード比(沖縄野菜を除く野菜・果物からのエネルギー摂取量でも調整)は以下のとおり。沖縄野菜の総摂取量,ならびに各種沖縄野菜の摂取量と,CVD発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかった。

・沖縄野菜の総摂取量別のCVD発症リスク
 CVD: 1.0,0.96,1.07,P for trend=0.403
  脳卒中: 1.0,0.99,1.13,P for trend=0.203
   脳内出血: 1.0,0.93,1.14,P for trend=0.411
   虚血性脳卒中: 1.0,1.01,1.11,P for trend=0.426
  CHD: 1.0,0.88,0.90,P for trend=0.570

・各種沖縄野菜の摂取量別のCVD発症リスク
 チンゲンサイ: 1.0,1.15,1.02,P for trend=0.738
 カラシナ: 1.0,1.15,1.05,P for trend=0.526
 ゴーヤ: 1.0,0.88,0.97,P for trend=0.724,
 フダンソウ: 1.0,1.06,1.06,P for trend=0.374
 ヘチマ: 1.0,1.01,1.12,P for trend=0.174
 ヨモギ: 1.0,1.02,1.04,P for trend=0.589
 パパイヤ: 1.0,0.94,1.07,P for trend=0.420

◇ 結論
沖縄野菜には,葉酸と食物繊維が豊富に含まれている。とくに葉酸は,多く摂取することで,脳卒中・冠動脈疾患・心筋梗塞による死亡リスクの低下と関連することが報告されている。しかし,これまでに沖縄野菜の摂取量と,心血管疾患(CVD)との関連を調べた大規模な前向き研究は少ない。そこで,沖縄在住の一般住民を対象とした,前向きのコホート研究において,一般的な野菜・果物の摂取量,ならびに沖縄野菜の摂取量と,CVDの発症リスクとの関連を検討した。その結果,いずれの摂取量も,CVDの発症リスクとのあいだに有意な関連はみとめられなかった。今回は,7種類の沖縄野菜の摂取量を用いた検討を行ったが,そのほかの沖縄野菜も含めた検討の必要性も考えられる。


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