[2020年文献] 日本食を食べる頻度が高い人は全死亡・心血管疾患死亡リスクが低い

日本は平均余命が世界でもっとも長く,日本食が日本人の健康に寄与している可能性が指摘されている。しかし,日本食の摂取と死亡リスクとの関連を検討したエビデンスは乏しい。そこで,日本の11地域の一般住民約9万人の食事調査データから,JDI8スコアを用いて評価した日本食らしい食事パターンと死亡リスクの関連を検討した。18.9年間の追跡の結果,日本食らしい食事をしているほど全死亡,心血管(CVD)死亡,心疾患死亡のリスクが有意に低くなることが示された。一方,癌死亡と脳血管死亡は日本食とは関連しなかった。日本食は,日本人の全死亡ならびにCVD死亡リスクの低下に寄与していることが示唆された。

Matsuyama S, et al.; Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. Eur J Nutr. 2020; pubmed

コホート
JPHCコホートI+II。対象11保健所の管轄行政区内に居住し,第2回調査(5年目調査,1995~1998年)で有効回答が得られた45~74歳の10万2341人のうち,総エネルギー摂取量が極端に多いまたは少ない5116人と既往(癌,脳卒中,心筋梗塞,慢性肝疾患など)のある4256人を除外した92969人(男性42700人,女性50269人)を対象とした。第2回調査の回答日をベースラインとし,2016年12月31日まで追跡(追跡期間中央値18.9年)。

第2回調査で,食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて147品目の摂取頻度および摂取量を調査。このデータから,8項目の日本食インデックス(8-item Japanese diet index: JDI8)スコアを算出し,日本食の摂取パターンと死亡(全死亡,癌死亡,心血管疾患[CVD]死亡)リスクの関連を検討した。

米,味噌汁,海藻,漬物,緑黄色野菜,魚介類,緑茶の7項目の摂取量が性別中央値と同等以上で1点,牛肉・豚肉の摂取量が性別中央値より低いと1点とし,合計0~8点で判定した。高スコアほど日本食摂取パターンの度合いが高い。

ベースラインのJDI8スコアにより,対象者を以下の4つのカテゴリーに分類した。

[C1]スコア0~2(対照),[C2]スコア3,[C3]スコア4~5,[C4]スコア6~8
結 果
追跡期間中の死亡は20596人。内訳は癌死亡7148人,CVD死亡4990人(心疾患死亡2600人,脳血管死亡1950人)。

◇対象背景
ベースラインの対象者の背景は以下のとおり。

 人数(人): [C1]16838,[C2]15461,[C3]36196,[C4]24474
 年齢(歳): 54.6,56.0,57.0,57.4
 男性: 43.4%,45.2%,45.5%,48.8%
 BMI 18.5~25.0(kg/m2): 65.5%,66.5%,67.9%,69.3%
 BMI 25.0~30.0(kg/m2): 26.3%,26.1%,25.2%,24.4%
 喫煙習慣: 26.2%,24.9%,24.1%,24.5%
 飲酒習慣: 18.8%,18.9%,20.2%,22.6%
 身体活動量(METs-h/日): 31.0,31.3,32.0,32.9
 降圧薬服用: 16.6%,19.0%,19.8%,19.4%
 コレステロール低下薬服用: 4.2%,5.1%,5.9%,6.1%
 糖尿病薬服用: 2.6%,3.2%,3.1%,2.7%
 オフィスワーカー: 31.8%,29.0%,27.5%,27.1%
 主婦: 21.9%,22.0%,23.2%,23.5%
 自営業: 14.8%,13.9%,14.1%,14.3%
 総エネルギー摂取量(kcal/日): 1656,1782,2005,2337
 ナトリウム摂取量(mg/日): 3173,3920,4901,6466

◇ 日本食の摂取パターンと死因別死亡リスクとの関連
JDI8スコアのカテゴリーごとでみた,全死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。JDI8スコアが高いほど,全死亡,CVD死亡,心疾患死亡のリスクが低くなる傾向がみられた(年齢,性別,地域,BMI,喫煙,飲酒,身体活動量,服薬[降圧薬,コレステロール低下薬,糖尿病薬]状況,職業,総エネルギー摂取量で調整)。

全死亡:[C1]1.00,[C2]0.95(0.90–0.99),[C3]0.91(0.87–0.95),[C4]0.86(0.81–0.90),P for trend<0.001
 CVD死亡: 1.00,1.01(0.91–1.11),0.92(0.84–1.01),0.89(0.80–0.99),P for trend=0.007
 心疾患死亡: 1.00,1.06(0.93–1.22),0.95(0.84–1.07),0.89(0.77–1.03),P for trend=0.037

JDI8スコアと,癌死ならびに脳血管死リスクとのあいだに有意な関連はみられなかった。

◇ 結論
日本は平均余命が世界でもっとも長く,日本食が日本人の健康に寄与している可能性が指摘されている。しかし,日本食の摂取と死亡リスクとの関連を検討したエビデンスは乏しい。そこで,日本の11地域の一般住民約9万人の食事調査データから,JDI8スコアを用いて評価した日本食らしい食事パターンと死亡リスクの関連を検討した。18.9年間の追跡の結果,日本食らしい食事をしているほど全死亡,心血管(CVD)死亡,心疾患死亡のリスクが有意に低くなることが示された。一方,癌死亡と脳血管死亡は日本食とは関連しなかった。日本食は,日本人の全死亡ならびにCVD死亡リスクの低下に寄与していることが示唆された。


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