[2006年文献] 事業所で行われる低強度の禁煙プログラムは,禁煙率の改善に有効

日本の事業所勤務者を対象とした事業所単位の非ランダム化比較試験において,事業所で行われる総合的かつ低強度の禁煙プログラムによる介入により,禁煙率が改善するかどうかを検討した。3年間の介入の結果,全体的に喫煙者の禁煙志向が低かったにもかかわらず,総合的かつ低強度の禁煙プログラムを実施した事業所では,実施しなかった事業所よりも禁煙率が有意に高くなった。

Tanaka H, et al.; HIPOP-OHP research group. Effectiveness of a low-intensity intra-worksite intervention on smoking cessation in Japanese employees: a three-year intervention trial. J Occup Health. 2006; 48: 175-82.pubmed

コホート
国内の12の事業所(従業員500~1000人)のいずれかに勤務し,1999~2000年にベースライン健診を受けた喫煙者3118人。介入が終了した3年後も在職していたのは2307人(男性2212人,女性95人)。

6つの事業所を介入群(1017人)とし,6つの事業所を対照群(1290人)とした。このうちホワイトカラー職は介入群の1事業所(72人),および対照群の1事業所(55人)。
介入群では以下の4つの方法を組み合わせた低強度の禁煙プログラムを実施し,対照群では特に実施しなかった。(1) 勤務場所に禁煙に関するポスターを貼るとともに,各事業所のホームページおよび社内報で禁煙の段階別の情報提供を行った(産業保健師が実施)。(2) 3年間の介入期間中,6週間の禁煙キャンペーンを5回行った(産業保健師が実施)。具体的には,禁煙の段階別の情報を提供する小冊子の配布,4回の面談と28日間のニコチンパッチ処方の実施(希望者のみ),キャンペーン期間中に喫煙しなかった人の表彰。(3) 各事業所の安全・衛生課が,受動喫煙を防止する方法を提案するとともに,喫煙スペースの設置を行った。(4) 年1回,専門研究員が各事業所の喫煙スペースのチェックを行った。

禁煙志向により,対象者を以下の3段階に分類した。
   関心なし: 禁煙しようと思っていない人,または禁煙しようと思っているが6か月以内にやめようとは考えていない人
   禁煙するつもり: 6か月以内に禁煙しようと思っている人
   禁煙準備: 1か月以内に禁煙しようと思っている人

喫煙状況については,ベースライン健診時の自己記入式質問票を用いて調査した。煙草を1本も吸わずに6か月以上が経過した状態を「禁煙」と定義し,12か月後,24か月後,36か月後に禁煙状態の評価を行った。
結果
ベースライン時の喫煙率は,介入群で44.3 %,対照群で45.1 %だった。
介入群において,自主的に禁煙キャンペーンに参加したのは12.3 %(125人)だった。このうちニコチンパッチの処方をともなう4回の面談を受けたのは63 %(79人)。

介入群と対照群で有意に異なっていたのは,男性の割合,年齢構成,ホワイトカラーの割合,1日の喫煙本数。
「関心なし」の人は介入群で71.5 %,対照群で73.2 %と,いずれの群においても多数を占めた。「禁煙準備」の人は介入群で1.9 %,対照群で3.3 %。

12か月後,24か月後,36か月後の禁煙率は,介入群,対照群ともに順調に上昇した。ただし,いずれの時点でも介入群のほうが対照群より高い禁煙率を示した。
介入群の介入終了時の禁煙率は12.1 %で,対照群の9.4 %よりも有意に高かった(P=0.02)。また,以下のサブグループ別解析における介入群の禁煙率は,いずれも対照群より有意に高くなった: 男性(P=0.015),30~39歳(P=0.003),喫煙開始年齢20歳以上(P=0.048),過去に禁煙を試みた経験のない人(P=0.022),1日の喫煙本数20本以上(P=0.016),「禁煙するつもり」の人(P=0.019)。

多重ロジスティック回帰分析によると,年齢,性別,職種などで補正したのちも,介入群の禁煙のオッズ比は1.38と有意に高く(95 %信頼区間1.05-1.81,vs. 対照群,P=0.022),禁煙率改善に対する介入の有効性が示された。
また,高い禁煙率(36か月後)と有意に関連していたのは,50~59歳(vs. 29歳以下,P<0.001),ホワイトカラー職(vs. ブルーカラー職,P=0.024),過去に喫煙を試みた経験あり(vs. 経験なし,P<0.001),「禁煙するつもり」(vs. 「関心なし」,P<0.001),「禁煙準備」(vs. 「関心なし」,P=0.002)。

費用・効果分析によると,介入にかかった費用の総額は2,543,964円で,介入の効果により禁煙に成功したと考えられる人数を以下のように算出した結果,1人あたりの費用は70,080円となった。
   介入群の人数×[対照群の禁煙率×(介入群の禁煙オッズ比-1)]
    =1017×[0.094×(1.38-1)]=36.3(人)

◇ 結論
日本の事業所勤務者を対象とした事業所単位の非ランダム化比較試験において,事業所で行われる総合的かつ低強度の禁煙プログラムによる介入により,禁煙率が改善するかどうかを検討した。3年間の介入の結果,全体的に喫煙者の禁煙志向が低かったにもかかわらず,総合的かつ低強度の禁煙プログラムを実施した事業所では,実施しなかった事業所よりも禁煙率が有意に高くなった。


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