[2011年文献] 短い睡眠時間(6時間未満)はメタボリックシンドローム構成因子の保有数と関連

睡眠時間をはじめとした生活習慣とメタボリックシンドローム(MetS)構成因子の保有数との関連について,日本人の事業所勤務者を対象としたコホート研究により検討を行った。その結果,睡眠時間6時間以上7時間未満にくらべ,短い睡眠時間(6時間未満)はMetS構成因子の保有数と有意に関連していた。 この結果は,BMIのカットオフ値として過体重(25 kg/m2),肥満(30 kg/m2)のいずれを用いても同様であった。睡眠時間7時間以上8時間未満は,過体重のリスクと負の関連を示していた。

Katano S, et al.; HIPOP-OHP Research Group. Relationship between sleep duration and clustering of metabolic syndrome diagnostic components. Diabetes Metab Syndr Obes. 2011; 4: 119-25.pubmed

コホート
国内の12の事業所のいずれかに勤務し,1999~2000年にベースライン健診を受けた19~69歳の男女4356人(男性3556人,女性800人)(断面解析)。
平均年齢は41.3歳。

自己記入式質問票を用いて平日の平均睡眠時間を調査し,対象者を6時間未満/6時間以上~7時間未満(対照)/7時間以上~8時間未満/8時間以上の4つのカテゴリーに分類した。
また,その他の生活習慣として,身体活動分類(国際標準化身体活動質問票[IPAQ]の結果を用い,座位/軽い身体活動/中程度の身体活動/重い身体活動の4カテゴリーに分類),飲酒量,喫煙についても調査した。

メタボリックシンドロームの構成因子は以下のとおり。
  (1)血圧高値: 130 / 85 mmHg以上または降圧薬服用
  (2)脂質異常症: トリグリセリド150 mg/dL以上,またはHDL-C 40 mg/dL未満
  (3)血糖高値: 空腹時血糖値110 mg/dL以上,非空腹時血糖値140 mg/dL以上,または糖尿病薬服用
  (4)体格: 過体重(BMI 25 kg/m2),または肥満(BMI 30 kg/m2以上)のいずれかの指標を用いた
結 果
◇ 対象背景
睡眠時間6時間未満と回答したのは680人(15.6%),6時間以上~7時間未満は1779人(40.8%),7時間以上~8時間未満は1488人(34.2%),8時間以上は409人(9.4%)であった。
過体重(BMI≧25 kg/m2)は22.4%,肥満(BMI≧30 kg/m2)は2.7%。
メタボリックシンドローム(MetS)構成因子の保有数は,0の人が2159人,1つが1222人,2つが674人,3つが255人,4つが46人であった。

睡眠時間が長いカテゴリーほど,血圧,アルコール摂取量,喫煙率が高く,BMIが低く,肥満の割合が低かった。

◇ MetS構成因子の保有数に関連する生活習慣
ポアソン回帰を用いた多変量調整モデル(性別,年齢,身体活動分類,喫煙,アルコール摂取量,および交互作用項[身体活動分類×男性,アルコール摂取量×男性,喫煙×男性]を含む)において,MetS構成因子(血圧高値,脂質異常症,血糖高値,過体重)の数との有意な関連を示したのは,性別(男性),年齢,睡眠時間(6時間未満),アルコール摂取量であった。アルコール摂取量×男性の交互作用項も,MetS構成因子数との有意な関連を示したが,喫煙の寄与は有意ではなかった。
MetS構成因子における体格の指標として過体重のかわりに肥満を用いた解析においても,睡眠時間(6時間未満)と年齢はMetS構成因子数との有意な関連を示していた。

◇ 各MetS構成因子に関連する生活習慣
ロジスティック回帰分析により,MetS構成因子のそれぞれに有意に関連する因子を検討した結果は以下のとおりで,4つの因子のうち3つに対して,睡眠時間が6時間未満であることが有意に関連していた。
  • 血圧高値: 性別(男性),年齢が有意な正の関連を示し,身体活動分類が有意な負の関連を示していた。睡眠時間は関連なし。
  • 脂質異常症: 性別(男性),年齢,睡眠時間(6時間未満)が有意な正の関連を示し,身体活動分類が有意な負の関連を示していた。
  • 血糖高値: 年齢,睡眠時間(6時間未満)が有意な正の関連を示していた。
  • 体格: 過体重については,性別(男性),年齢,睡眠時間(6時間未満)が有意な正の関連を示し,睡眠時間(7時間以上8時間未満)が有意な負の関連を示していた。肥満については,睡眠時間(6時間未満)が有意な正の関連を示し,年齢が有意な負の関連を示していた。

◇ 結論
睡眠時間をはじめとした生活習慣とメタボリックシンドローム(MetS)構成因子の保有数との関連について,日本人の事業所勤務者を対象としたコホート研究により検討を行った。その結果,睡眠時間6時間以上7時間未満にくらべ,短い睡眠時間(6時間未満)はMetS構成因子の保有数と有意に関連していた。 この結果は,BMIのカットオフ値として過体重(25 kg/m2),肥満(30 kg/m2)のいずれを用いても同様であった。睡眠時間7時間以上8時間未満は,過体重のリスクと負の関連を示していた。


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