[1994年文献] 拡張末期径が正常~低値の男性では,左室心筋重量係数(LVMI)は血圧上昇と有意に関連する

心エコーによる左室心筋重量の高血圧発症予測能を検討するため,都市部および農村部の日本人男性(正常血圧)を対象とした6~8年間の追跡研究を行った。その結果,拡張末期径が正常~低値を示す人では,農村部・都市部を問わず,左室心筋重量係数(LVMI)の増加が血圧上昇と有意に関連することが示された。

Iso H, et al. Left ventricular mass and subsequent blood pressure changes among middle-aged men in rural and urban Japanese populations. Circulation. 1994; 89: 1717-24.pubmed

コホート
1979~1983年にベースライン健診を受けた30~59歳の農村部(秋田の2コホート)の男性193人,および都市部(大阪)の企業に勤める161人のうち,高血圧(≧140 / 90 mmHgまたは降圧薬服用),安静時心電図異常,冠動脈疾患既往,先天性心疾患既往,心筋症既往のいずれにも該当せず,6~8年後の追跡調査にも参加した148人および127人。
追跡率は農村部77 %,都市部79 %。
平均年齢は42.4歳,42.7歳。

Mモード心エコーにより,後壁厚,中隔壁厚,拡張末期径,収縮期径,相対壁厚を測定し,左室心筋重量および左室心筋重量係数を算出。
結 果
◇ ベースライン背景
農村部の男性において,都市部の男性よりも有意に高い値を示したのは,飲酒量,後壁厚,中隔壁厚,拡張末期径,収縮期径,左室心筋重量,左室心筋重量係数(left ventricular mass index: LVMI),有意に低い値を示したのは,身長,体表面積,心拍数,拡張期血圧。
重度肉体労働者,農業従事者の割合は,農村部男性では約2 / 3,都市部では約1 / 2だった。

LVMIは,農村部,都市部のいずれにおいても正規分布を示していたが,農村部男性のほうが全体に高値の傾向を示した。
LVMI≧130 g/m2の割合は,農村部で26 %,都市部で2 %だった(P<0.001)。

◇ 心エコー所見と血圧の変化
農村部と都市部をあわせた解析では,6~8年後までに,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)のいずれも有意に上昇していた。DBPの変化は都市部と農村部で有意に異なっていた(P<0.01)。
それぞれの血圧の変化は以下のとおり。
  農村部: SBP +5.6 mmHg,DBP +6.6 mmHg
  都市部: SBP +4.3 mmHg,DBP +4.3 mmHg

多変量線形回帰分析によると,LVMIが20 g/m2増加したときの血圧の増加は以下のとおりで,都市部の男性において,LVMI増加と血圧上昇との関連が強いことが示された。
SBP: 農村部 +1.80 mmHg(P=0.09),都市部 +5.05 mmHg(P<0.01)
DBP: 農村部 +1.45 mmHg(P=0.06),都市部 +4.10 mmHg(P<0.01)
なお,農村部,都市部においてそれぞれ拡張末期径の中央値を境として2群に分けた解析を行った結果,拡張末期径が小さいグループでは,都市部だけでなく農村部の男性についても,LVMI増加とSBPおよびDBP上昇との有意な関連がみとめられた。
一方,拡張末期径が大きいグループでは有意な関連はみとめられなかった。

左室壁厚が1 mm増加したときの血圧の増加は以下のとおりで,LVMIと同様に,都市部の男性において血圧上昇との関連が強いことが示された。
SBP: 農村部 +1.43 mmHg(P=0.11),都市部 +4.06 mmHg (P<0.001)
DBP: 農村部 +0.97 mmHg(P=0.12),都市部 +3.24 mmHg (P<0.001)


◇ 結論
心エコーによる左室心筋重量の高血圧発症予測能を検討するため,都市部および農村部の日本人男性(正常血圧)を対象とした6~8年間の追跡研究を行った。その結果,拡張末期径が正常~低値を示す人では,農村部・都市部を問わず,左室心筋重量係数(LVMI)の増加が血圧上昇と有意に関連することが示された。


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