[1994年文献] 総コレステロール低値は,全死因死亡および癌死亡の危険因子

血清コレステロール値が欧米人よりも低いことで知られる日本人集団において,総コレステロールと全死因死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討することを目的として,8.9年間の追跡研究を行った。その結果,男性では,総コレステロールと全死亡リスク,および癌死亡リスクとの有意な逆相関がみとめられた。女性では有意な逆相関はみられなかったものの,160 mg/dL未満のカテゴリーで全死亡リスクおよび癌死亡リスクが有意に上昇した。この結果より,総コレステロール値が非常に低い人は,癌検診を毎年受けたほうがのぞましいと考えられる。

Iso H, et al. Serum total cholesterol and mortality in a Japanese population. J Clin Epidemiol. 1994; 47: 961-9.pubmed

コホート
1975年3月から1984年3月にかけて健診を受診した大阪府八尾市の40~69歳の男女12252人のうち,脳卒中既往のある31人,冠動脈疾患既往のある34人を除外した12187人(男性4087人,女性8100人)。
追跡は1988年まで行われ,平均追跡期間は8.9年となった。

死因の分類には,International Classification of Diseases,9th revision(ICD-9)を用いた。
高血圧の定義は,160 / 95 mmHg以上または降圧薬服用とした。正常血圧は140 / 90 mmHg未満かつ降圧薬非服用とし,高血圧,正常血圧のいずれにもあてはまらない場合は境界性高血圧とした。
結 果
死亡したのは343人(男性185人,女性158人)。
うち約半分が癌による死亡で,約1/4が心血管疾患死亡,約1/4が非癌・非心血管疾患死亡だった。

死因の内訳は以下のとおり。
  癌: 男性101人,女性69人
  心血管疾患死亡: 41人,47人
     冠動脈疾患死亡: 10人,11人
     脳卒中死亡: 17人,17人
     その他の心血管疾患死亡: 14人,19人
  非癌・非心血管疾患死亡: 43人,42人

総コレステロール値ごとの全死因死亡率,および死因別死亡率を比較すると,男性では全死因死亡率および癌死亡率と総コレステロール値との有意な逆相関がみられたが,冠動脈疾患死亡率,その他の心血管疾患死亡率,および非癌・非心血管疾患死亡と総コレステロールとの関連はみとめられなかった。
女性では,いずれについても総コレステロールとの関連はみとめられなかった。

◇ 総コレステロール値と死亡リスク
・ 男性
総コレステロールは,全死因死亡リスクおよび癌死亡リスクとの有意な逆相関を示した(ともにP=0.01)。この結果は,年齢,職業,血圧,飲酒,喫煙などにより調整を行っても変わらなかった。

総コレステロールが1 SD(34 mg/dL)低下した場合の相対リスクは,全死因死亡: 1.21(95 %信頼区間: 1.04-1.42),癌死亡: 1.26(1.02-1.56)。

なお,喫煙の有無を考慮に入れた解析を行った結果,喫煙者と非喫煙者では大きな違いはみられなかった。
一方,飲酒の有無を考慮に入れた解析を行った結果,多量飲酒者(1日のエタノール換算摂取量56 g以上)では,総コレステロールと全死因死亡および癌死亡リスクとの逆相関が強まる傾向がみとめられた。

・ 女性
総コレステロールは,全死因死亡リスク,癌死亡リスクのいずれとも有意を相関を示さなかった(全死因死亡: P=0.90,癌死亡: P=0.66)。
ただし,総コレステロールがもっとも低いカテゴリー(<160 mg/dL)では,180~199 mg/dLのカテゴリーに比べて,全死因死亡および癌死亡の有意なリスク上昇がみとめられた(それぞれ相対リスク1.69[95 %信頼区間: 1.01-2.82],2.31[1.05-5.10])


◇ 結論
血清コレステロール値が欧米人よりも低いことで知られる日本人集団において,総コレステロールと全死因死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討することを目的として,8.9年間の追跡研究を行った。その結果,男性では,総コレステロールと全死亡リスク,および癌死亡リスクとの有意な逆相関がみとめられた。女性では有意な逆相関はみられなかったものの,160 mg/dL未満のカテゴリーで全死亡リスクおよび癌死亡リスクが有意に上昇した。この結果より,総コレステロール値が非常に低い人は,癌検診を毎年受けたほうがのぞましいと考えられる。


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