[2008年文献] 1980~2000年代にかけ,都市部の男性では冠動脈疾患が増加

アジア人一般住民を対象とした縦断研究において冠動脈疾患が増加していることを示した初めての報告である。生活習慣の欧米化がとくに進んでいると考えられる都市部の男性における長期的なCHD発症率の変化を,農村部の男性と比較した。その結果,都市部の男性では,1980代から2000年代にかけてCHD発症率が有意に増加していた。一方,都市部の女性および農村部の男女では,CHD発症率の増加はみとめられなかった。

Kitamura A, et al. Trends in the incidence of coronary heart disease and stroke and their risk factors in Japan, 1964 to 2003: the Akita-Osaka study. J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 71-9.pubmed

コホート
大阪府八尾市南高安地区(都市部)に住む40~69歳の9549人,および秋田県井川町(農村部)に住む40~69歳の2671人。

心血管疾患の発症および死亡の状況については,1964年から2003年にかけ,死亡証明書,国民健康保険の申請,地域の医師,保健師などからの報告,各世帯に郵送される質問票,および毎年実施される循環器健診により情報を収集した。
心血管疾患危険因子の状況については,循環器健診により調査した。調査期間ごとの参加率は,1964~1966年: 都市部93 %,農村部87 %(農村部では1963年から開始); 1976~1979年: 37 %,81 %; 1984~1987年: 31 %,84 %; 1992~1995年: 28 %,68 %; 2000~2003年: 24 %,61 %。

高血圧の定義は,140 / 90 mmHg以上または降圧薬服用とした。
結 果
◇ 冠動脈疾患(CHD)の長期的な傾向
・ 都市部男性
CHDの発症率は,1964~1971年から1972~1979年にかけて有意な増加を示したのち,1980~1987年にはいったん減少した。しかし,1988~1995年,1996~2003年にかけてふたたび有意な増加を示した(P for trend=0.045)。
各調査期間におけるCHDの年齢調整後発症率(10万人・年あたり)は以下のとおり。
   1964~1971年: 54 (95 %信頼区間: 11-97)
   1972~1979年: 90 (45-136)
   1980~1987年: 52 (24-80)
   1988~1995年: 83 (52-114)
   1996~2003年: 100 (68-132)
脳卒中発症率は有意な低下を示した(P for trend<0.001)。

・ 都市部女性
CHDの発症率は,一貫して低い水準を示した。
各調査期間におけるCHDの年齢調整後発症率(10万人・年あたり)は以下のとおり。
   1964~1971年: 33 (95 %信頼区間: 1-66)
   1972~1979年: 22 (1-44)
   1980~1987年: 36 (13-59)
   1988~1995年: 37 (17-57)
   1996~2003年: 18 (5-32)
脳卒中発症率は有意な低下を示した(P for trend<0.001)。

・ 農村部男性
CHD発症率は,1972~1979年から1980~1987年にかけて減少傾向を示しており,その後に大きな変化はみとめられなかった。
各調査期間におけるCHDの年齢調整後発症率(10万人・年あたり)は以下のとおり。
   1964~1971年: 90 (95 %信頼区間: 23-158)
   1972~1979年: 111 (40-181)
   1980~1987年: 33 (4-71)
   1988~1995年: 59 (12-106)
   1996~2003年: 65 (16-114)
脳卒中発症率は劇的な低下を示していた(P for trend<0.001)。

・ 農村部女性
CHDの発症はほとんどみとめられなかった(1964~1971年に0人,1972~1979年,1980~1987年,1988~1995年,1996~2003年にそれぞれ1人ずつ)。
脳卒中発症率は劇的な低下を示した(P for trend<0.001)。

◇ 都市部と農村部の比較
・ CHD: 男性では,1979年までは農村部のほうが発症率が高かったが,1980年以降は都市部のほうが有意に高い発症率を示した。女性では有意差なし。
・ 脳卒中: 1964~1971年には男女とも農村部のほうが都市部よりも有意に高い発症率(P<0.001)を示していたが,その後は差が小さくなった。

◇ 心血管危険因子の長期的傾向
5つの調査期間における高血圧の割合および総コレステロールの値は以下のとおり(それぞれ1964~1966年,1976~1979年,1984~1987年,1992~1995年,2000~2003年の値)。
・ 高血圧
   都市部男性: 38 %,39 %,33 %,38 %,41 % (P for trend=0.43)
   都市部女性: 37 %,33 %,29 %,27 %,27 % (P for trend<0.001)
   農村部男性: 64 %,59 %,46 %,43 %,49 % (P for trend<0.001)
   農村部女性: 51 %,45 %,37 %,33 %,34 % (P for trend<0.001)

・ 総コレステロール(mg/dL)
   都市部男性: 183.4,190.7,196.5,201.5,210.4 (P for trend<0.001)
   都市部女性: 190.7,203.0,207.7,213.1,222.0 (P for trend<0.001)
   農村部男性: 153.6,175.6,180.3,189.9,197.6 (P for trend<0.001)
   農村部女性: 159.8,187.2,193.4,202.7,210.4 (P for trend<0.001)


◇ 結論
アジア人一般住民を対象とした縦断研究において冠動脈疾患が増加していることを示した初めての報告である。生活習慣の欧米化がとくに進んでいると考えられる都市部の男性における長期的なCHD発症率の変化を,農村部の男性と比較した。その結果,都市部の男性では,1980代から2000年代にかけてCHD発症率が有意に増加していた。一方,都市部の女性および農村部の男女では,CHD発症率の増加はみとめられなかった。


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