[2007年文献] メタボリックシンドローム因子を多くもつ人は尿中cGMP値が低い

血管内皮機能障害とメタボリックシンドロームとの関連について,日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析による検討を行った。その結果,メタボリックシンドローム因子を多くもつ人ほど,尿中のcGMP(血管拡張作用をもつ一酸化窒素のセカンドメッセンジャー物質)が低値を示しており,一酸化窒素の生理活性の低下がメタボリックシンドローム因子の集積と関連する可能性が示唆された。

Cui R, et al. Metabolic syndrome and urinary cGMP excretion in general population. Atherosclerosis. 2007; 190: 423-8.pubmed

コホート
CIRCS 井川コホートおよび協和コホート。
1997~2002年にかけて循環器健診を受診し,24時間蓄尿を完了した40~79歳の1,541人(男性788人,女性753人)。

尿中のcGMP* (cyclic guanosine 3’, 5’-monophosphate,環状グアノシン一リン酸)は放射線免疫染色により測定し,尿中クレアチニン1 mmolあたりの値(単位: nmol/mmol)で示した。

* cGMPとは,血管拡張作用をもつ一酸化窒素(NO)がグアニル酸シクラーゼを活性化することで合成されるセカンドメッセンジャー。NOの生理活性の低下は動脈硬化性疾患に関連し,閉塞性末梢動脈疾患や高脂血症,臓器障害をともなう重症高血圧の患者では尿中の窒素酸化物(NOx)およびcGMPが低下しているとの報告もある。

メタボリックシンドロームの各因子の定義は,NCEP-ATP III基準に基づき,以下のとおりとした(腹囲の測定を行っていなかったため,BMIで代用)。
   肥満: BMI 25 kg/m2以上
   高トリグリセリド血症: 150 mg/dL以上
   低HDL-C血症: 男性40 mg/dL未満,女性50 mg/dL未満
   血圧高値: 130 / 85 mmHg以上
   血糖高値: 空腹時血糖値110 mg/dL以上または非空腹時血糖値200 mg/dL以上
結 果
◇ 対象背景
対象のおもな背景は以下のとおり。
   年齢: 男性60.0歳,女性56.5歳 (P<0.001)
   cGMP: 47.6 nmol/mmol,53.2 nmol/mmol (P=0.004)
   BMI: 23.2 kg/m2,23.5 kg/m2
   肥満: 30.0 %,33.6 %
   血圧高値: 22.7 %,32.2 % (P<0.001)
   低HDL-C血症: 17.0 %,12.4 % (P=0.02)
   高トリグリセリド血症: 35.8 %,19.9 % (P<0.001)
   血糖高値: 13.5 %,7.3 % (P<0.001)
   総コレステロール: 197.6 mg/dL,212.3 mg/dL (P<0.001)
   飲酒量(1日のエタノール換算アルコール摂取量): 26.4 g,1.1 g (P<0.001)
   喫煙率: 42.2 %,1.6 % (P<0.001)
   脳卒中または冠動脈疾患既往: 3.2 %,1.9 %

◇ メタボリックシンドローム因子と尿中cGMP
メタボリックシンドロームの各構成因子の有無ごとに尿中cGMP値(多変量調整)を比較した結果,高トリグリセリド血症の男性および女性,および低HDL-C血症の男性では,それぞれ正常の人にくらべてcGMP値が有意に低かった。

メタボリックシンドローム因子の数(0,1,2,3,4~5個)ごとに尿中cGMP値を比較した結果,保有するメタボリックシンドローム因子の数が多いほどcGMP値が低い傾向がみとめられた(多変量調整後のP for trend=0.002)。
この結果は男性でも同様だった(多変量調整後のP for trend=0.02)が,女性では多変量調整を行うと有意な関連が消失した(多変量調整後のP for trend=0.10)。


◇ 結論
血管内皮機能障害とメタボリックシンドロームとの関連について,日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析による検討を行った。その結果,メタボリックシンドローム因子を多くもつ人ほど,尿中のcGMP(血管拡張作用をもつ一酸化窒素のセカンドメッセンジャー物質)が低値を示しており,一酸化窒素の生理活性の低下がメタボリックシンドローム因子の集積と関連する可能性が示唆された。


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