[2010年文献] γ-GTP高値は,女性の全脳卒中および脳梗塞発症リスク

γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)は,アルコール摂取量や肝機能のマーカーであるだけでなく,酸化ストレスのマーカーとしても有用である可能性が指摘されている。そこで,日本の都市部および農村部住民を対象とした18.1年間(中央値)の前向きコホート研究において,γ-GTP値と脳卒中リスクとの関連を飲酒状況ごとに検討した。その結果,女性ではγ-GTP値と全脳卒中および脳梗塞発症リスクとの有意な関連がみられ,この関連がとくに飲酒未経験者において顕著であることが示された。

Shimizu Y, et al. gamma-Glutamyltranspeptidase and incident stroke among Japanese men and women: the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). Stroke. 2010; 41: 385-8.pubmed

コホート
1986~1993年にかけて循環器健診を受診した4地域(秋田県井川町[農村部],高知県旧野市町[農村部],茨城県旧協和町[農村部],大阪府八尾市南高安地区[都市部])の40~69歳の男性4764人,女性7352人のうち,血液検査データがない人,心血管疾患の既往のある人,血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)値>50 IU/Lかつ/または血清アラニンアミノ基転移酵素(ALT)値>50 IU/Lの人を除いた9752人(女性6281人,男性3471人)を18.1年(中央値)追跡した。

γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)値により,全体を以下のように性別ごとに四分位(中央値[範囲])に分けて解析した。
・ 男性
 Q1(1~15 IU/L): 990人,Q2(16~24 IU/L): 923人,Q3(25~45 IU/L): 890人,Q4(>45 IU/L): 655人
・ 女性
 Q1(1~8 IU/L): 1817人,Q2(9~11 IU/L): 1590人,Q3(12~16 IU/L): 1479人,Q4(>16 IU/L): 1395人

また,飲酒未経験者のみを以下のように性別ごとに四分位に分けた解析も行った。
・ 男性
 Q1(1~15 IU/L): 374人,Q2(16~24 IU/L): 210人,Q3(25~45 IU/L): 114人,Q4(>45 IU/L): 28人
・ 女性
 Q1(1~8 IU/L): 1651人,Q2(9~11 IU/L): 1411人,Q3(12~16 IU/L): 1274人,Q4(>16 IU/L): 1178人
結 果
◇ 対象背景
全脳卒中の発症は男性230人,女性202人,脳梗塞はそれぞれ144人,106人,脳出血は63人,78人,分類不能は23人,18人であった。
飲酒者は男性73.2%,女性10.9%で,飲酒未経験者はそれぞれ20.9%,89.8%であった。

◇ γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)と脳卒中リスク
γ-GTP値の各カテゴリーの脳卒中発症の多変量調整*ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,女性についてのみ有意な関連がみとめられた(*年齢,地域,BMI,喫煙,アルコール摂取,総コレステロール,トリグリセリド,アルブミン,AST,ALT,収縮期血圧,降圧薬の使用,糖尿病により調整)。
・ 男性(P for trend=0.190)
 Q1: 1(対照),Q2: 1.06(0.73-1.54),Q3: 1.21(0.82-1.77),Q4: 1.37(0.89-2.11)
・ 女性(P for trend=0.026)
 Q1: 1,Q2: 1.05(0.69-1.60),Q3: 1.35(0.90-2.02),Q4: 1.56(1.01-2.39)

◇ 飲酒未経験者におけるγ-GTPと脳卒中リスク
飲酒未経験者のみを対象としたγ-GTP値の各カテゴリーの脳卒中発症の多変量調整*ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,女性についてのみ有意な関連がみとめられた(*年齢,地域,BMI,喫煙,アルコール摂取,総コレステロール,トリグリセリド,アルブミン,AST,ALT,収縮期血圧,降圧薬の使用,糖尿病により調整)。
・ 男性(P for trend=0.313)
 Q1: 1(対照),Q2: 1.00(0.47-2.16),Q3: 1.96(0.83-4.60),Q4: 0.87(0.11-7.11)
・ 女性(P for trend=0.012)
 Q1: 1,Q2: 1.02(0.65-1.58),Q3: 1.39(0.91-2.11),Q4: 1.68(1.07-2.62)

さらに,飲酒未経験者において,γ-GTP値と脳卒中各病型の発症リスクとの関連を検討したところ,女性ではγ-GTP値と脳梗塞発症リスクとの有意な関連がみとめられたが(Q1: 1,Q4: 2.81[95%信頼区間1.47-5.38],P for trend=0.003),脳出血との関連はみとめられなかった(Q1: 1,Q4: 0.89[0.44-1.82],P for trend=0.995)。一方,男性では脳卒中のいずれの病型についても,γ-GTP値との関連はみとめられなかった。


◇ 結論
γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)は,アルコール摂取量や肝機能のマーカーであるだけでなく,酸化ストレスのマーカーとしても有用である可能性が指摘されている。そこで,日本の都市部および農村部住民を対象とした18.1年間(中央値)の前向きコホート研究において,γ-GTP値と脳卒中リスクとの関連を飲酒状況ごとに検討した。その結果,女性ではγ-GTP値と全脳卒中および脳梗塞発症リスクとの有意な関連がみられ,この関連がとくに飲酒未経験者において顕著であることが示された。


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