[2011年文献] non-HDL-C高値は冠動脈疾患リスクと関連し,カットオフ値は140 mg/dL前後と考えられる

non-HDL-C値は,総コレステロール値とHDL-C値の差として簡便に算出できる指標で,近年,冠動脈疾患(CHD)リスク予測能がLDL-Cと同等である,またはより優れていることを示した報告もある。そこで,日本人地域住民を対象とした21.9年間(中央値)の追跡研究により,non-HDL-C値とCHD発症リスクとの関連,ならびにカットオフ値について検討した。その結果,non-HDL-C高値はCHD発症リスクの増加と有意に関連しており,日本人一般住民においてCHD発症リスクを予測するための最適なカットオフ値は140 mg/dL前後と考えられた。

Kitamura A, et al. Association between Non-High-Density Lipoprotein Cholesterol Levels and the Incidence of Coronary Heart Disease among Japanese: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Atheroscler Thromb. 2011; 18: 454-63.pubmed

コホート
1975~1987年に循環器健診を受診した4地域(秋田県井川町,高知県[旧]野市町[1975~1980年],茨城県筑西市協和地区[1981~1987年],大阪府八尾市南高安地区[1975~1984年])の40~69歳の一般住民8158人(男性3201人,女性4957人)のうち,冠動脈疾患または脳卒中の既往のある26人を除いた8132人(男性3178人,女性4954人)を21.9年間追跡(中央値)。

non-HDL-C値(総コレステロール値とHDL-C値の差)により,全体を以下の6つのカテゴリーに分けて検討した。
   <100 mg/dL(1442人),100~119 mg/dL(1665人),120~139 mg/dL(1771人),
   140~159 mg/dL(1475人),160~179 mg/dL(964人),≧180 mg/dL(815人)
結 果
◇ 対象背景
non-HDL-C値の平均は,男性128.0 mg/dL,女性136.0 mg/dL。
non-HDL-C値≧140 mg/dLの人の割合は,男性35%,女性43%で,≧180 mg/dLの人の割合は男性8%,女性11%であった。

non-HDL-C値がもっとも低いカテゴリー(<100 mg/dL)にくらべ,もっとも高いカテゴリー(≧180 mg/dL)で有意に高い値を示していたのは,女性の割合,年齢,総コレステロール値,トリグリセリド値,BMI,収縮期および拡張期血圧,高血圧の割合,糖尿病の割合,降圧薬服用率,脂質低下薬服用率であり,有意に低い値を示していたのは飲酒率およびHDL-C値であった。

◇ non-HDL-C値と冠動脈疾患(CHD)発症リスク
追跡期間中にCHDを発症したのは155人であった。
このうち心筋梗塞は91人,狭心症は36人,心臓突然死は28人であった。

non-HDL-C値のカテゴリーごとのCHDおよび心筋梗塞発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,140 mg/dL前後に閾値がある可能性が示唆された。
CHD,心筋梗塞のいずれについても,性別による有意な相互作用はみとめられなかった。

・ CHD
   <100 mg/dL: 1.0 (対照)
   100~119 mg/dL: 1.25 (0.66-2.36)
   120~139 mg/dL: 1.06 (0.54-2.06)
   140~159 mg/dL: 2.49 (1.35-4.61)
   160~179 mg/dL: 1.81 (0.90-3.63)
   ≧180 mg/dL: 3.13 (1.58-6.21)

・ 心筋梗塞
   <100 mg/dL: 1.0 (対照)
   100~119 mg/dL: 1.44 (0.61-3.38)
   120~139 mg/dL: 1.23 (0.50-3.03)
   140~159 mg/dL: 3.17 (1.40-7.22)
   160~179 mg/dL: 2.01 (0.77-5.23)
   ≧180 mg/dL: 4.09 (1.64-10.21)

◇ 層別化解析
non-HDL-C値とCHD発症リスクとの関連について,性別,高血圧の有無,喫煙の有無,飲酒の有無,BMI(23.0 kg/m2以上/未満),トリグリセリド値(114 mg/dL以上/未満),採血時の食後経過時間(8時間以上/未満)に関する層別化解析を行った結果,non-HDL-C値との相互作用はいずれも有意ではなかった。
一方,耐糖能(正常/境界型糖尿病または糖尿病),およびHDL-C値(56 mg/dL以上/未満)については,non-HDL-C値との有意な相互作用がみとめられた(それぞれP for interaction=0.04,P for interaction=0.002)。
耐糖能が正常な人では,non-HDL-C値がもっとも高いカテゴリー(≧180 mg/dL)におけるCHD発症のハザード比(vs. もっとも低いカテゴリー[<100 mg/dL])は5.83(95%信頼区間2.48-13.71)であったが,境界型糖尿病または糖尿病を有する人では,0.53(0.07-3.91)であった。
HDL-C値≧56 mg/dLの人では,non-HDL-C値がもっとも高いカテゴリーにおけるCHD発症のハザード比(vs. もっとも低いカテゴリー)は1.12(95%信頼区間0.29-4.26)であったが,HDL-C値<56 mg/dLの人では5.73(1.88-17.46)であった。

◇ CHDリスク予測のためのカットオフ値
non-HDL-C値が80 mg/dL以上200 mg/dL以下の範囲において,integrated discrimination improvement(IDI,値が大きいほど予測能が高い),赤池情報量基準(AIC,値が小さいほど予測能が高い),多変量調整ハザード比の3つの指標により,CHD発症リスクを予測するためのnon-HDL-C値の最適なカットオフ値を検討した。
その結果,IDIがもっとも高くなるカットオフ値は140 mg/dL,AICがもっとも低くなるカットオフ値は141 mg/dL,多変量調整ハザード比がもっとも高くなるカットオフ値は≧141 mg/dL(CHD発症のハザード比2.19(vs. <141 mg/dL,95%信頼区間1.53-3.14,P<0.0001)であった。


◇ 結論
non-HDL-C値は,総コレステロール値とHDL-C値の差として簡便に算出できる指標で,近年,冠動脈疾患(CHD)リスク予測能がLDL-Cと同等である,またはより優れていることを示した報告もある。そこで,日本人地域住民を対象とした21.9年間(中央値)の追跡研究により,non-HDL-C値とCHD発症リスクとの関連,ならびにカットオフ値について検討した。その結果,non-HDL-C高値はCHD発症リスクの増加と有意に関連しており,日本人一般住民においてCHD発症リスクを予測するための最適なカットオフ値は140 mg/dL前後と考えられた。


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