[2016年文献] 心電図上のJ点上昇は心臓突然死リスクと関連する

突然死との関連が指摘されている遺伝性不整脈疾患であるBrugada症候群の頻度と予後について,まだ十分なデータは得られていない。そこで,Brugada型心電図およびJ波増高と心臓突然死との関連を,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究により検討した。その結果,右前胸部誘導でのBrugada型心電図所見をもつ人での心臓突然死リスクの有意な増加はみられなかったが,J点上昇所見をもつ人では有意なリスク増加がみとめられた。

Tsuneoka H, et al.; CIRCS Investigators. Long-Term Prognosis of Brugada-Type ECG and ECG With Atypical ST-Segment Elevation in the Right Precordial Leads Over 20 Years: Results From the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Am Heart Assoc. 2016; 5: e002899.pubmed

コホート
1982~1986年に循環器健診を受診した3地域(秋田県井川町,茨城県筑西市共和地区,大阪府八尾市南高安地区)の10337人のうち,40歳未満または64歳超の3096人,心電図データに不備がある14人,および心筋梗塞や心房細動の既往をもつ49人を除外した7178人(男性2886人,女性4292人)を,2004年まで18.7年間(中央値)追跡した(133987.0人・年)。

米国不整脈学会と欧州不整脈学会のコンセンサスレポート(pubmed)に基づき,健診時の12誘導心電図の右前胸部誘導(V1~V3)の所見から,対象者を以下の4つのカテゴリーに分類した。
・Brugada型心電図タイプ1(BrS-1): 0.2 mV以上のcoved型ST上昇
・Brugada型心電図タイプ2または3(BrS-2/3): 0.2 mV以上のsaddle-back型ST上昇
・J点上昇: 上記のいずれにも該当しない0.2 mV以上のJ点上昇
・所見なし

心臓突然死の定義は,発症から1時間以内の死亡,または無症状で生存が確認された時点から24時間以内の死亡とし,死亡診断書からその頻度を調査した。
結 果
◇ 対象背景
Brugada型心電図タイプ1(BrS-1)は8人(0.1%),Brugada型心電図タイプ2または3(BrS-2/3)は84人(1.2%),J点上昇は228人(3.2%),所見なしは6858人(95.5%)であった。

所見なしにくらべ,右胸部誘導にBrugada型またはJ点上昇所見をもつ人では男性の割合が高かった。BrS-2/3の人では年齢が高く,BMIが低く,飲酒率や喫煙率が高かった。J点上昇の人では年齢や心拍数,拡張期血圧,総コレステロールが低く,飲酒率や喫煙率が高かった。

◇ Brugada型心電図またはJ点上昇と心臓突然死リスク
追跡期間中に1206人(16.8%)が死亡し,心臓突然死は58人(0.8%)であった。
BrS-1での心臓突然死は0人,BrS-2/3では1人(1.2%),J点上昇では7人(3.1%)。

所見なしに対する,心臓突然死の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおりで,J点上昇で有意なリスク増加がみとめられた(年齢,性,収縮期血圧,降圧薬服用,喫煙および糖尿病で調整)。
  所見なし: 1(対照)
  BrS-1: -(心臓突然死なし)
  BrS-2/3: 1.1(0.15-8.3)
  J点上昇: 3.9(1.7-9.0)

◇ J点の上昇幅と心臓突然死リスク
J点上昇があり,突然死した7人は全員が男性であり,心電図上のP波幅やPR間隔,QRS幅はすべて正常範囲内で,補正QT時間も1例を除いて正常範囲内であった。

対象者全員を,J点上昇なし(0.1 mV未満),J点の軽度上昇(0.1 mV以上0.2 mV未満),J点上昇の3つのカテゴリーに分けて心臓突然死リスクの多変量調整ハザード比を比較した結果は以下のとおりで,J点の軽度上昇を有する人でも有意なリスク増加がみられた。
  J点上昇なし(6243人「87.0%」): 1(対照)
  J点の軽度上昇(615人[8.6%]): 2.5(1.2-5.3)
  J点上昇(228人[3.2%]): 3.9(1.7-9.0)


◇ 結論
突然死との関連が指摘されている遺伝性不整脈疾患であるBrugada症候群の頻度と予後について,まだ十分なデータは得られていない。そこで,Brugada型心電図およびJ波増高と心臓突然死との関連を,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究により検討した。その結果,右前胸部誘導でのBrugada型心電図所見をもつ人での心臓突然死リスクの有意な増加はみられなかったが,J点上昇所見をもつ人では有意なリスク増加がみとめられた。


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