[2020年文献] 笑う頻度が少ない中年男性は経時的に血圧が上昇する

「笑いは最良の薬」といわれるように,笑う機会を増やすことは健康増進に役立つと考えられている。笑う頻度と精神的なストレスとのあいだには負の関連があることが知られ,笑いによる精神的ストレスの軽減を示唆する,血管内皮機能の改善や,心拍数変動の低下も報告されている。そこで,日本人一般住民を対象に,笑う頻度と血圧値の推移との関連を検討した。その結果,ベースライン時の笑う頻度と血圧値とのあいだに有意な関連はみられなかったが,経時的(4年間)にみると,笑う頻度が少ない男性は,多い男性に比して,収縮期,拡張期ともに血圧が有意に上昇した。これは,追跡期間中に降圧薬非服用だった男性だけでみても同様であった。女性では,笑う頻度と血圧値のあいだに有意な関連はみられなかった。中年男性では,笑う頻度が多いことが血圧によい影響をもたらしている可能性が示唆された。

Ikeda S, et al. Longitudinal Trends in Blood Pressure Associated with the Frequency of Laughter: Longitudinal Study of Japanese General Population: the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Epidemiol. 2020; Feb 22. doi: 10.2188/jea.JE20190140.pubmed

コホート
茨城県筑西市協和地区に居住し,2010~2014年に循環器健診を受診した40~74歳の1710人のうち,心血管疾患既往のある人,笑いに関するデータ,ベースライン時の年齢・性別のデータのない269人を除外した1441人(男性554人,女性887人)を対象とした。追跡期間は2010~2014年の4年間)。

笑う頻度については,「日常生活のなかで,どれくらいの頻度で大声で笑っていますか?」という質問により調査し,回答により対象者を以下の3つのカテゴリーに分類した。

 [C1]ほぼ毎日,[C2]1~5日/週,[C3]1~3日/月,またはほとんどない

血圧値の測定には自動血圧計(TM-2655P; A&D Company Ltd)を用いた。
結 果
◇ 対象背景
笑う頻度によるカテゴリーごとの対象背景は以下のとおり。

 人数(人): 男性: [C1]318,[C2]164,[C3]72; 女性: [C1]653,[C2]190,[C3]44
 年齢(歳): 63.3,62.9,63.5; 61.8,61.0,60.4
 BMI(kg/m2): 23.6,24.1,23.2; 22.9,22.8,23.0
 収縮期血圧(SBP,mmHg): 133.3,133.8,130.4; 124.6,124.0,123.0
 拡張期血圧(DBP,mmHg): 78.0,78.9,76.3; 73.2,73.6,71.6
 降圧薬服用: 30.1%,27.1%,33.7%; 25.8%,24.4%,25.0%
 高血圧: 50.9%,49.4%,48.6%; 37.8%,37.4%,34.1%
 自覚的ストレス: 12.6%,12.2%,22.2%; 12.4%,22.6%,36.3%
 抑うつ状態: 3.4%,5.4%,14.0%; 3.2%,8.5%,22.7%
 物事への興味がない: 3.5%,5.5%,12.5%; 4.2%,5.3%,13.6%

◇笑う頻度と血圧値との関連
笑う頻度によるカテゴリーごとにみた,血圧値の多変量調整後の回帰係数β(95%信頼区間)は以下のとおり。ベースライン時では,笑う頻度と血圧値とのあいだに関連はみられなかったが,経時的変化(4年間)をみると,笑う頻度が少ないカテゴリーの男性では,多いカテゴリーの男性に比して,SBPならびにDBPが上昇した(年齢,ベースライン時の就業状況,2010~2014年のあいだの降圧薬服用,ベースライン時の自覚的ストレス,抑鬱状態の有無,物事への興味の有無で調整,*時間との相互作用のP<0.1)。

・SBP
 ベースライン時: [男性]0(対照),0.75(-1.9,3.9)-2.38(-6.5,1.7),[女性]0(対照),1.10(-1.4,3.6),0.64(-4.2,5.4)
 経時的変化: [男性]0,-0.34(-1.1,0.3),0.96(-0.2,1.8)*,[女性]0,-0.11(-0.7,0.5),0.23(-1.0,1.5)

・DBP
 ベースライン時: 男性: [C1]0,[C2]-0.16(-1.9,2.0),[C3]-2.09(-4.8,0.7);女性: [C1]0,[C2]0.86(-0.9,2.6),[C3]-0.06(-4.0,)
 経時的変化: 男性: 0,-0.07(-0.5,0.4),0.72(0.1,1.2)*; 女性: 0,-0.31(-0.7,0.1),-0.07(-0.8,)

◇降圧薬服用の有無別にみた笑う頻度と血圧値との関連
降圧薬服用の有無別にみた,笑う頻度によるカテゴリーごとの血圧値の多変量調整後の回帰係数β(95%信頼区間)は以下のとおり。降圧薬非服用者について経時的にみると,笑う頻度が少ないカテゴリーの男性では,多いカテゴリーの男性に比して,SBPならびにDBPが上昇した。一方,降圧薬服用者では,ベースライン時,経時的変化ともに,カテゴリーごとの差はみられなかった(*時間との相互作用のP<0.1)。

・SBP(降圧薬非服用者)
 ベースライン時: [男性]0(対照),0.79(-2.4,4.5),-2.58(-7.8,2.5),[女性]0(対照),1.20(-1.7,4.1),-2.01(-7.8,3.8)
 経時的変化: [男性]0,-0.39(-1.2,0.4),0.94(-0.2,2.0)*,[女性]0,0.13(-0.5,0.8),0.07(-1.3,1.4)

・DBP(降圧薬非服用者)
 ベースライン時: [男性]0,0.32(-2.1,2.7),-2.81(-6.4,0.6),[女性]0,0.72(-1.3,2.7),-0.96(-4.9,3.0)
 経時的変化: [男性]0,0.10(-0.4,0.6),0.82(0.1,1.5)*,[女性]0,-0.17(-0.6,0.3),-0.02(-0.9,0.8)

◇ 結論
「笑いは最良の薬」といわれるように,笑う機会を増やすことは健康増進に役立つと考えられている。笑う頻度と精神的なストレスとのあいだには負の関連があることが知られ,笑いによる精神的ストレスの軽減を示唆する,血管内皮機能の改善や,心拍数変動の低下も報告されている。そこで,日本人一般住民を対象に,笑う頻度と血圧値の推移との関連を検討した。その結果,ベースライン時の笑う頻度と血圧値とのあいだに有意な関連はみられなかったが,経時的(4年間)にみると,笑う頻度が少ない男性は,多い男性に比して,収縮期,拡張期ともに血圧が有意に上昇した。これは,追跡期間中に降圧薬非服用だった男性だけでみても同様であった。女性では,笑う頻度と血圧値のあいだに有意な関連はみられなかった。中年男性では,笑う頻度が多いことが血圧によい影響をもたらしている可能性が示唆された。


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