[1997年文献] 都市部住民における無症候性頸動脈硬化の頻度は,欧米と同程度

都市部に住む日本人一般住民において,非侵襲的な頸動脈超音波を用いて評価した無症候性頸動脈硬化の頻度およびIMTと種々の心血管危険因子との関連について,断面解析により検討した。その結果,都市部住民における頸動脈硬化病変の頻度は欧米における報告と同程度であること,また頸動脈硬化病変が心血管危険因子(年齢,血圧,喫煙,総コレステロールなど)と有意に関連していることが示された。

Mannami T, et al. Prevalence of asymptomatic carotid atherosclerotic lesions detected by high-resolution ultrasonography and its relation to cardiovascular risk factors in the general population of a Japanese city: the Suita study. Stroke. 1997; 28: 518-25.pubmed

コホート
吹田市民のなかから無作為に抽出され,1994年4月~1996年7月の健診を受診した30~79歳の男性814人,女性880人のうち,冠動脈疾患または脳血管疾患既往のある63人,29人,および採血が空腹時ではなかった69人,88人を除いた男性682人および女性763人。
75 g経口ブドウ糖負荷試験を受けたのは男性472人,女性492人。

Bモード超音波により,頸動脈内膜-中膜肥厚度(IMT: intima-media thickness),最大IMT(スキャンした範囲内の最大値),プラーク数,プラークスコア(スキャンした範囲内のすべてのプラークにおける最大肥厚度の合計)を評価。

高血圧の定義は,収縮期血圧≧160 mmHg,拡張期血圧≧95 mmHg,または降圧薬服用とした。
境界性高血圧の定義は,収縮期血圧が140 mmHg以上160 mmHg未満,または拡張期血圧が90 mmHg以上95 mmHg未満とした。
糖尿病の定義は,空腹時血糖>140 mg/dL,負荷後2時間血糖>200 mg/dL,または血糖降下薬服用とした。
耐糖能異常の定義は,空腹時血糖<140 mg/dL,負荷後2時間血糖が140 mg/dL以上200 mg/dL未満とした。
結 果
◇ 患者背景
おもな患者背景は以下のとおり。
   年齢: 男性63.4歳,女性62.4歳
   BMI: 22.9 kg/m2,22.5 kg/m2
   血圧: 128.2 / 78.1 mmHg,127.8 / 76.9 mmHg
   総コレステロール: 201 mg/dL,221 mg/dL
   HDL-C: 55 mg/dL,62 mg/dL
   トリグリセリド: 127 mg/dL,110 mg/dL
   空腹時血糖: 103 mg/dL,98 mg/dL
   喫煙: 42.3 %,5.5 %(P<0.05 vs. 男性)
   高血圧: 21.4 %,21.9 %
   糖尿病: 10.3 %,4.7 %

◇ 無症候性動脈硬化の頻度および進行度
・ 頸動脈内膜-中膜肥厚度(IMT: intima-media thickness)
年齢・性別ごとのIMTは以下のとおりで,男女とも年齢が高いほど有意に高値を示した(年齢グループ間の比較でP<0.05)。この傾向は,最大IMT,プラーク数,プラークスコアでも同様だった。
   50~59歳: 男性0.85 mm,女性0.84 mm
   60~69歳: 0.93 mm,0.90 mm
   70~79歳: 1.02 mm,0.99 mm

・ 頸動脈狭窄の頻度
50 %以上の狭窄がみとめられた人の割合は,男性7.9 %,女性1.3 %で,有意な男女差がみとめられた。
年齢・性別ごとの割合は以下のとおりで,年齢とともに増加する傾向がみられた。
   50~59歳: 男性2.1 %,女性0.0 %
   60~69歳: 7.6 %,2.3 %
   70~79歳: 18.1 %,1.6 %

◇ 頸動脈IMTと心血管危険因子との関連
・ 血圧
男女とも,高血圧の人は正常血圧よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。
男性では,境界性高血圧の人も,正常血圧より有意に高いIMTを示した(P<0.05)。

・ 総コレステロール
男女とも,総コレステロール240 mg/dL以上の人は,200 mg/dL未満の人よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。

・ 喫煙
男性において,30箱・年以上の喫煙者は非喫煙者よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。

・ 空腹時血糖値
男女とも,空腹時血糖が140 mg/dL以上の人,および110 mg/dL以上140 mg/dL未満の人は,いずれも110 mg/dL未満の人よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。

・ 75 g経口ブドウ糖負荷試験
男性では,糖尿病または血糖降下薬服用中の人は,正常耐糖能の人よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。
女性では,耐糖能異常の人は正常耐糖能の人よりも有意に高いIMTを示した(P<0.05)。

多重回帰分析によると,男性においてIMTと有意な関連を示したのは,年齢(P<0.0001),収縮期血圧(P<0.0001),空腹時血糖(P=0.002),喫煙箱・年(P<0.0001),総コレステロール(P=0.0001),HDL-C(P=0.0037),トリグリセリド(P=0.0226)。年齢と血圧は,最大IMT,プラーク数,およびプラークスコアともそれぞれ有意な関連を示していた。
女性においてIMTと有意な関連を示したのは,年齢(P<0.0001),収縮期血圧(P<0.0001),喫煙箱・年(P=0.0038),総コレステロール(P=0.0004)。年齢と血圧は,最大IMT,プラーク数,およびプラークスコアともそれぞれ有意な関連を示していた。


◇ 結論
都市部に住む日本人一般住民において,非侵襲的な頸動脈超音波を用いて評価した無症候性頸動脈硬化の頻度およびIMTと種々の心血管危険因子との関連について,断面解析により検討した。その結果,都市部住民における頸動脈硬化病変の頻度は欧米における報告と同程度であること,また頸動脈硬化病変が心血管危険因子(年齢,血圧,喫煙,総コレステロールなど)と有意に関連していることが示された。


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